転落
空模様は暗く夜が訪れていた。
憔悴した総駕は土足のままベッドの上に居た。
部屋で呆然と天井を眺める…
チクタクと時計の秒針がひたすらに時を刻む。
開いた目は希望の光を失い、眼球が乾いても瞼を閉じる気力すら無かった。
ーーカチ ーーカチ ーーカチ ーカチ
無情な時の流れ、時間だけが浪費される。
だが、全て今はーー どうでもいい。
過ぎた時は巻いて戻す事は出来無い…。
眼球を潤すためか、心が痛むのか涙が溢れる。
部屋に辿り着くまでに散々泣き叫び、声は枯れていた。
ーー結衣__。
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エリアDの大会は終盤に差し掛かろうとしていた。
桜紫咲紫宴はトーナメント進出後一回戦に勝利した。
しかし、疲弊したような表情をしながら会場に背を向け、広場の階段を降る。
ーー手元のスマホで棄権を押していた。
階段を半分降った所で背後から名を呼ばれる
「紫宴君ッ!」
七瀬奈菜だ。
紫宴は振り向く事無く答える
「1人になりたいんだ…」。
暗い背中を見送る事しか出来なかった、
--足音が静かに遠ざかって行く。
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x月6日 22時…。 もうすぐセカンドステージ最終日を迎えようとしていた。
そして其々のプレイヤーの心境が変わって行く。
天流時総駕は虚な目で、真っ暗な部屋でただひたすらに天井だけを見ていた。
何もしていないのに、腹は減る…
空腹感を感じるが動く気力は湧かない。
このままもう、消えてしまいたい。
自分は何か特別だとか、何か他の人には出来ない事が出来るとか勘違いしていたんだ…。
けど、そんな事は無くて大層な事を言っても何も出来もしない俺はガキなんだ…。
やり場のない気持ちが渦巻き、悲しみから怒りに変わって行く感覚が広がる。
--結衣が消えた事を紫宴のせいだけにしていたが、違うと、、頭では分かってた。
だけど、無力な俺は彼奴のせいにして戦うしか無かった。
とにかく戦いたい…戦って、戦って、
俺も消えれば良いんだ。
総駕は拳をブルブルと握りしめる…。
、、暫くしてふと何かを思い出すように身体を起こした。
結衣はあの大会で2度負けた…
…ならもう1回の敗北は誰に…。
セカンドステージは3敗した場合に敗退する。
結衣は消える前に言っていた…
"""「ほんとはね、総駕と会う前に負けてたの…
だから…」。"""
一体誰に…⁉︎。
総駕は思考を巡らせた。
思考の延長線上に1人の人物が浮かび上がる。
"大野崎緑徒"
アイツは結衣を追いかけていた、そして憶測でしか無いが…追いかける前に1度対戦をして結衣は負けたんだ。
そして、結衣は完全決着を付けようとする大野崎から逃げてそこで俺と出会った…。
これは可能性の話だ、だけど、俺は今自分が何をどうすれば良いのかなんて分からない…!。
このやり場の無い感情を大野崎にぶつけたいだけかも知れない、少なくとも、彼奴なら俺の良心が痛まない。
もし結衣を1度倒していたなら、彼奴に復讐する事で気が晴れるかも知れない。
総駕は立ち上がるーーどういう訳か立ちくらみがする。
軽い目眩もだ。
朝食から何も食べてないからか、精神的ものかは分からない。
ーーでも、空腹感はパッと感じなくなっていた、
急速に総駕の心臓が脈を打つ。
部屋を出た総駕はエリアBの街へ駆け出した。
アドレナリンだけで今俺は動いている…。
ーー夜の街をがむしゃらに走った。
ビル群を抜け、雑居ビルが立ち並ぶ路地に出る。
息を整えてキョロキョロと辺りを見渡す…。
いるかどうかも分からない…それでも、今の俺は戦いでもしなければ気が紛れない。
総駕は叫ぶ
「大野崎ィーー」
静かな街の中で総駕の声が響き渡る。
「大野崎ィィ!!」
喉は枯れていたが無理をするように声を張った。
「いるんなら出て来いッ」…。
今いる現在地は大野崎と結衣と顔を合わせた近辺だ。
総駕は息を整えて、移動しながら名前を呼び続けた。
「大野崎緑徒…大野崎緑徒…、、
どこにいやがる…」…。
ーー暫くしても、奴が現れる様子は無かった。
総駕は自室がある方角に向かい歩き出す、、。
やり場の無い気持ちだけが渦巻く。
静かな街で総駕の足音が響く、、。
だらだらと歩いていると足音が重複するように鳴り出す。
後ろを振り向いた瞬間--そいつは口を開く。
「オイ、、遊ぼうぜ…」。
低い声だった、背筋が凍る。
緑色の頭髪…血走った眼。
大野崎緑徒が背後にいたのだ。
総駕は狼狽えるように後ろ向きで2歩4歩とぎこちなく下がった…。
「オイオイ、、散々俺を呼んだくせにビビるなよ」。
総駕は動揺する気持ちを抑えて、鋭い目つきで見据える。
「一つ聞きたい…」
「ア"ァ⁇」
威圧気味で大野崎は首を傾げる。
総駕は弾けそうな心臓を必死で黙らせるように言った
「、、セカンドステージで小学生の女の子を1回負かしたか?」
大野崎はニタリと笑う…
「そんな事もあったな」。
その確信的な挑発した様子を見た総駕はホルダーを構えようとした。
その瞬間、大野崎が背を向け走り出す…
「ついて来いよォ!!、、ハハハハハ」
「待てよッ!!」
大野崎が高笑いをしながら夜道を駆け抜ける、
追従する総駕は怒りで頭に血が昇る。
ーー大野崎は雑居ビルの階段を駆け上がる…
2階の踊り場で総駕をチラリと見る。
「ッ、何考えてやがる」
総駕も同様に階段を駆け上がる。
大野崎は企んだように不敵に笑い、8階の屋上に到達する。
「ハッ…ハァッ…」
総駕も間も無くして屋上に到達、息を整える。
暗い夜空の下、大野崎の姿が視認出来ない。
「どこだ!大野崎」
総駕が辺りを見渡す。
次の瞬間だった--
キラリと一瞬の光が総駕の瞳に映り込む。
ーー 声も出す間も無く総駕の身体は吹き飛ばされる…「…」
連なるクリスタルが腹部に直撃したのだ。
「カハッカハッ」
痛みを堪え総駕はフラフラと立ち上がる。
「死ねぇッ!!」
"タイムクリスタルセットアップ"
大野崎が屋上の屋根から飛び降り、
再びホルダーからクリスタルを展開した。
そして連なり弾けるクリスタルが屋上端部に追いやられた総駕を再び襲う。
1度目のクリスタルの直撃が崖っぷちに立たせていたのだった。
焦る総駕が手摺を掴もうと真後ろに手を伸ばすも体制を崩しかける…「、、ぁ!?」
屋上の柵が無い…そして質量を持つクリスタルが連続して総駕に打つかりーー
ーその身が宙に投げ出されてしまう。
ーーピュゴォォオオー---
屋上で大野崎は満面の笑みを浮かべる
「ハァアアーーーくたばったぜ」。
「俺はナァ…結構根に持つんだよクソガキが」。
----大野崎が端部を見下ろす……。




