運命の歯車
D,imension
the
D,estruction
T,ime
会場が震える--。
全プレイヤーの掛け声と共にタイムクリスタルが一斉に展開。
鎬を削り合う激しい戦いが繰り広げられる。
紫宴は順当にモンスターを繰り出して行く、
「サモン パープルアーチャ」
「パープルブレイカー」
そして極め付けのカード…揺らめく紫の眼光と共にその力を解き放った
「HELHEIMδράκωv」
外骨格を覆う骨が剥き出しの不死の竜、紫色の揺らめく淡い炎が竜の周りを漂い口からは鋭い牙と陽炎を見せる。
アタックによりリードを広げる紫宴だが次のターン対戦相手の男はディメンションモンスターを繰り出した。
「ディメンションサモン-アンタッチャブルモスキート」
巨大なストローの口端を持つ大型の蚊のモンスター。
そのアタックは羽音と共に姿を眩ませヘルドラゴンを一撃で仕留める。
「やるね…けど…」
紫宴のターンに切り替わるとヘルドラゴンが蘇る。
紫炎のサークルが広がりその輪の中にそれは姿を見せる。
そして口から放つブレスがアンタッチャブルモスキートの心臓部に紫色の炎を灯す--
「このパープルカウンターはディメンションモンスターすら破壊できる…」。
紫宴はゲートカードを公開
「ディメンションサモン…アブ・ラハム」
神殿の柱の間からアブラハムが出現、翼を生やす、ブロンドヘアーの若き男はエクソミス服を纏う。
アブラハムのアタックは波動を放つーー
ーーアンタッチャブルモスキートには通用しない…。
「モスキートはディメンションソウルを使う事でバトルを回避しパワーを500奪う…」。
アブラハムの身体にモスキートの毒針が突き刺さる。
能力を把握した紫宴は目を細める
「ふーん、なるほど」。
先の展開を思考、イメージが収束する。
紫宴の腕を組む人差し指が二の腕をトントンと叩くと、目をカっと見開き宣言する。
「ヘルドラゴンでモスキートにアタック」。
プレッシャーを感じた相手はたじろぐ。
だが、プレッシャーとは裏腹に破壊されるのは、ヘルドラゴン。
紫宴はダメージを負うも、ニタりと笑う。
その訳は、ターンが巡り紫色の炎-パープルカウンターがモスキートの身体を蝕むからだ。
「不可侵のモンスターと自負しているようだけど僕には通用しない…」
再び紫宴にターンが巡り、ヘルドラゴンが蘇る。
デジャヴを感じた対戦相手の男は戦意を失う。
紫宴はバトル判定でわざと負けるが、エフェクトによる方法でモスキートを攻略。
決着が付いた
「僕の勝ちだ」。
一方…彩限結衣は、窮地に立たされていた。
「どうしよ…」
手を使い切り、結衣の場にはソウルがないライガードラゴン。
対戦相手は将棋をモチーフにしたディメンションモンスター、玉将を操る。
そのパワーは3000。
結衣のライガードラゴンのパワー2700を素で超えている。
「まさか⁈こんな人までいるなんて…」
結衣の対面のプレイヤーは、著名なプロの棋士だった。
将棋の名人、 九藤三二一82歳。
ふくよかな見た目に、特徴的な笑みを浮かべる
三二一。
だが、その見た目とは想像もつかぬ、手堅く、確実な一手を魅せる。
それはこのダブルディティーと言うカードゲームでも変わら無い。
結衣は、彼の堅実なプレイによりボードアドバンテージを取られ差をつけられて行った、まるで、
将棋の駒が敵を討ち取るように。
現役を引退したが、その腕は鈍ってなんかいない。
「もう、だめだ」
結衣はギュッと固く目を瞑る。
そして、三二一の操る玉将のアタックが迫る。
陣羽織を纏う武将の大太刀がライガードラゴンを両断…。
結衣のタイムクリスタルが砕け散る。
「人生も将棋も
勝負はつねに負けた地点からはじまります」。
試合が終わると三二一は労いの言葉を掛けるが、呆然と立ち尽くす結衣には届かない。
自分の心音だけが煩く聞こえる。
肩を下ろしトボトボと待機スペースへ歩いていく。
⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎
「ストレートに決めるぜ!!道化師でアタック」
"切り札の一閃"
ジョーカーの唸る大鎌がタイムクリスタルを削り切る。
……ハァッ、…ハァ…ハァッ……
総駕は荒い息を整える。
後が無い事でプレッシャーは半端じゃ無い。
総駕 セカンドステージ 1勝2敗。
'なんとか、勝てた…'
総駕は戦いの中で焦りを感じた、
辺りを見渡しても分かる、全体的に戦いのレベルが上がっている。
当然だ。
ファーストステージで命の駆け引きをして勝ち抜いた者達。
そして、敵を倒した事で得た力ーー,
デッキの完成度が高まって、戦いの経験を経てカードの使い方が格段に上手くなっている。
待機スペースに移動しつつ、紫宴に勝ち抜けのメールを打つ。
程なくして、結衣と再び落ち合う。
「勝てたんだね総駕」
「ああ何とか」
結衣は喜んでくれてるが、何処か苦しげな表情。
顔色も青く見える…。
「結衣の方は?」
「負けちゃった…どうしよう…」
不安に押しつぶされそうに言う。
だが、総駕には深刻さが伝わらない…。
「まだ、一敗だから心配すんなって、もし次負けたらどうにかしてみせる」
総駕は明るく、元気付けるように話すが、温度差が生じていた。
'言えない…'
総駕は既に2回負けているから。
'実は私がもう2回負けてる事を'
きっと総駕は自分を今すぐにでも犠牲にする。
「、、ん?」
総駕が顔色を伺うように見る。
「そうだね」。
「……」
「……」
「そうだ!結衣、凄えんだぞ
あの七瀬奈菜と会ったんだ!」
「へぇ…そうなんだ」
「…反応薄いな、好きじゃなかったっけ?」
「ううん、好きだよ」
「よっしゃ、じゃあ後で一緒にサイン貰おうぜ」
「……うん」。
そして、一回戦が終結し、
2回戦のマッチングが組まれる…。
歯車が狂い始める。
だが、この時2人は知る由も無い。
マッチングリストを確認した2人は別々の方角に歩み始める。
「じゃあまた後でな」
総駕は大きく手を上げた。
「うん…後でね」
ぎこちなく結衣は笑った。
対戦前に緊張感が高まると、吐き気を催す。
トイレに駆け込み咳を繰り返すが、何も出そうにない。
出るとすればため息だけだった。
そしてもう一度マッチング画面を見る。
「どんな人なのかな…」
対戦表
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彩限 結衣vs 桜紫咲 紫宴--
二回戦が始まる…。




