交差~turn3
第3ターン
「コスト3 マーズスピリットをサモン」
極道が繰り出したモンスターは探査機の無人ロボットだった。
「アタック‼︎」
バキンッ バキンッ
総駕のクリスタルが音を立てる。
「アタックがヒットした事によりマーズスピリットの能力、マーズカードをデッキより手札に加える」
探査機はタイムクリスタルの破片をカプセルに入れる、そしてカプセルを放射し極道の手札に新たなカードが加わる。
-マーズ・エクスプロレーション-
総駕にターンが回る。
「俺はタイムスペル、クロックブーストを使用し開放値を4へ」
シックスペードラゴンが表でTCゾーンに送られる。
険しい表情で総駕はカードを振りかざす
「力を借りる シフト…サモン-フォックスペード!」
四つのスペード形の尾をした狐が現れる。
「バトル」
フォックスペード
パワー1400vsパワー400
マーズスピリット
"フォン"
フォックスペードのテールアタックがヒットしマーズスピリットが宙で爆散。
「お前にだけは負けない!!」
総駕はターンを終了する。
総駕 TC stay 10
極道 TC 12➡️11
第4ターン
「お前ここに来るまでに何人倒してきた?」
極道の問いに総駕は言葉を詰まらす。
「…何」
「俺は5人だ正当化するつもりは無い
だがお前はどうだ?誰を生かして誰を倒す?命に優劣をつける為か自分を正当化する為に戦ってるんじゃ無いのか?」
「お前とは違う!自分の為に誰かを陥れたりカードの為に戦って居ない」
総駕は眉間に皺を寄せ極道は鼻で笑う。
「なら今手にしているカード全て最初から自分の物だったか?」
「なっ、」
「違うな、少なくともあの時は無かったカードは確実にある。ディメンションモンスターも持っているはずだ!そうでなければお前は戦いを挑まねえ」
「だったらなんだっ」
「お前がいくら綺麗事を並べようが行動には結果が付く
お前は誰かの命を踏み躙りここに居る!ーー
ーー気に入らない奴を倒す!俺を悪と呼ぶがやっている事は同じなのさ!」
「違うッ‼︎」
「もっとこの世界で自分のやってきた事を見つめてみろ、
そうすればお前の足元の尸の声が聞こえるだろう?」
極道の言葉は総駕の現実となり、足元にはデッキを託した男やシフト、そして藤堂が倒れているように見せた。
"うぁああああ"
「オレは、、オレハああするしか無かったんだ‼︎」
「偽善者が!」
『自分を正当化し塗り固めたそれが虚構だと知った時何も出来なくなる奴はもう終わりだ…』
総駕は項垂れ脱力し、俯いていた。
『だが戦いに善も悪も無い正当化し正しいと思う必要は無い、そこに正しさや理由を欲しがり自分を救いたがるから弱い!!
皆同じ、自分がただ生き残りたい』
「コスト4マーズエクスプレーションーーアタック時マーズカードを捨て同じコストのモンスターを破壊!」
首が長い自走式探査機はレーザー砲によりフォックスペードを撃破。
「アタック」
総駕 TC 10 ➡️ 9 ➡️7。
総駕はなす術無くまたもクリスタルを二つ失う。
深層意識を呼び覚ました総駕を思考もままならない程のストレスが襲う…。
この世界に来て他人を蹴落とし勝ち上がっていた罪悪感の重圧で心拍数が恐ろしく速くなるのだ。
首筋は寒気がする…脂汗を掻いて、
普段閉じ込めていた深層意識に記憶をストックしていたがそれを自覚している。
人は通常深層意識は認識できず普段は閉じ込められているが心全体の90%の割合を占める程の重たい物だ。
それを認識した時、思考や感情、行動に大きな影響を与える。
極道の狙いはコレだった…
術中にハマった総駕はまともにカードゲームの戦略を立てられはしない。
ホルダーからは新たなカードが放射され総駕の目の前を過ぎる。
「…ッハ」
総駕は咄嗟にカードに手を伸ばすが指先に当たりカードは地面に落ちる、情けない仕草でカードを拾う。
拾い上げたその時、カードを掴む青年の姿がフラッシュバックする。
『俺にデッキを託した男だ!』
「…何なんだ……
俺は一体今まで…どうしてくれば良かったんだよ」
「ゥァァアァァア‼︎」
総駕の叫びが反響、
クリスタルの力を更に一つ開放していた…
ファイブクラブゲート、これがオープンアップした。
このターン総駕が新たに引いたカードもゲートカードだった。
2枚目のファイブクラブゲート…
鮮やかな深緑の背景のクラブの模様が描かれた門。
それはジンワリジンワリと色を変えてゆく…
鮮やかな深緑は次第にくすみ、ドス黒く色を変えてゆく。
第5ターン
「何もしないならターンは頂く」
極道がホルダーに手を添えた。
総駕に動きがないままターンは強制終了した。
「俺はマーズゲート・キュリオシティをオープンアップ!そして2枚目のキュリオシティをサモン」
新型の火星探査車がフィールドに着陸する…
「俺が久本を倒し、レルから貰ったこのマーズシリーズデッキは最強だ!」。
極道がニタリと笑う、
キュリオシティの元に水脈が流れ、不吉な空気が流れ出す。
「そして、これが報酬の切札カード
マーズウォーター・デッドキング‼︎…」
冷気を纏う、無色透明の氷の髑髏のモンスター。
近づけば生物が死に絶える様は恐怖心を煽る。
マーズウォーターデッドキング
パワー2500。
「やばい、、いつの間にディメンションモンスターが…けどパワーは大した事ない」
「いけっマーズエクスプレーション!」
タイムクリスタルにレーザー砲が迫る…
総駕は咄嗟にカードを振りかざす
「TSトランフォースシールド」。
「生存本能か!だが無駄だ!
いけ、マーズウォーター・デッドキング!
アタック時場のモンスターを破壊し相手の手札をトラッシュする。」
極道 TC11➡️10。
「なっ」
総駕のワンポーカーが失われる。
「更に!マーズウォーターデッドキングは
マーズカードを破壊した事でバトル時に2つのエフェクトを獲得し、内一つを選択する」
ジェル状に肉体が変化するデッドキング。
「TSディメンションガード
相手だけにディメンションモンスターがいる場合に使える、攻撃を無効に一枚カードを引く」。
攻撃が無効になったデッドキング、そこで極道が動く。
「バトル後エフェクトによりディメンションソウルを取り除き相手の場か手札を一枚破壊する、
更にそれがモンスターなら相手のクリスタルが破壊される」
「俺の場にカードは無い…手札が破壊される!」
ゴクリと息を飲み込む…
次の瞬間 総駕の手札からハートフルエースが捨てられる…
「モンスターが!」
総駕が動揺を見せる
「タイムクリスタルを破壊!」
マーズウォーターデッドキングの死の冷気が総駕のクリスタルを包む。 しかし…
クリスタルが暖かい色に輝き場に留まる
「…ハートフルエースのエフェクトで受けるダメージが1減少したのか」
総駕は安堵のため息を吐く。 総駕 TC stay7。
「ターン終了」
『自分のカードの能力すら忘れるとはな』
ニヤリと極道が笑う。
二つのエフェクトを獲得したデッドキング、
もう一つの力は不明。
総駕の5ターン目。
総駕の手札のゲートが黒く染まって行く。
「…確かにお前の言う通りかも知れない」
「何?」
「オレが偽善者で…倒したい奴、生かしたい奴を
選んでるって話さ」。
総駕は言葉を詰まらす…そしてブツブツと
自問自答のように呟く。
「…いや、、それ以前にオレは悪かも知れない。
彼奴が気に食わないから戦っている…
罪悪感を感じては居たがこの気持ちだけは変わらない。」
総駕の狂気に満ちた表情、
極道はゲーム内のアドバンテージを得ては居ても危機感を覚える。
「既に戦えないと思ったら…吹っ切れやがった
それもタチが悪そうだ」
「俺はただお前が倒せればそれで良い…例え悪になっても…サモン…ダークローバーゲート。」
「…気に喰わないから俺達は戦い合うんだ」
暗黒の門が出現、極道が門の中に視線を向けると
その中のモンスターの目が此方を見ていた…
「…なっ、なんだアレは!?
ライガードラゴンなのか?、しかしあの時…
カードは確かに燃やされた」
「オープンアップされたブラックローバーゲートとダークローバーゲートにより…姿を表せ…」
「ーー"スペシャルディメンションサモン"ーー」
漆黒の空に光が走る…
黒い炎が二つの闇の門の間から噴き出る。
「黒い…"ライガードラゴン"だと!?」
極道は硬直する…
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ーー超高層マンションの上階。
空模様は黒く染まり、雷の音がゴロゴロと鳴り響く。
ディザスターは窓際に立ち外を見る…
『この感じ、奴が戦って居るのか…⁈』
ジークフリートを想像し、ディザスターはテーブルの上のデッキホルダーを装着し険しい表情で早足で動く。
エレベーターに乗り込み降って行く中で思考を落ち着かせていた、覚悟を持った表情で降りると光源の方角へと向かう。