復讐
インターバル3日目の夜-
天流寺総駕はやっとの思いで街に辿り着く。
シフトとの戦いの後、道中は家も人も見かけなかった唯々帰路を歩いた。
足が棒のようになった総駕はベンチに腰を掛け、ボトルに入ったミネラルウォーターを飲んだ。
ボーッとしながらもあっという間にボトルは空になった。
これから部屋に戻ろうとしたがナビを見るとこの街から15kmは離れていて今のこの状態では辿り着く気がしなかった。
総駕は気がつくとベンチに横になって体力は限界を超えていた為目蓋は直ぐに閉じて眠りに着いた。
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インターバル4日目の朝-
x月1日
総駕は目を覚ます。
'これからどうするか… '
レルとドゥクスとの戦いの後、俺はワームホールに吸い込まれた。
紫宴はどうしているだろうか?心配が過る。
そして遠く離れた自室に戻るかも考える所だ、
三時間前後掛かる距離だ。
「とりあえず朝飯を食べよう」
昨日ベンチに座り込む前に水とお握りを手に入れたのでそれを食べる。
何と無くデッキホルダーからデッキを取り出すと、奴がある…ライガードラゴンだ。
妙に安心する…。
朝食を食べ終えた総駕の考えが纏まる。
'…色々考えたが自室に戻るのは夕方からでも良い
紫宴を探してみよう'
元いた町から3時間以上離れた場所にあるここは偶然にもデッキホルダーを作っていた工場の近くだ。
紫宴が工場まで三時間は歩いたと言うのを思い出して見渡したけど'ある'。
総駕は工場の付近まで歩いた。
'こうして歩いていると、昨日までの砂漠とか家が無い自然だけの景色が嘘のようだ'
'それに3日前バスでここへ来る途中も家や街が立ち並んで居たのに、数km逸れると自然が広がってる何てやっぱり変な世界だ'
工場の門が見える辺りで物陰に身を隠し辺りを見回す。
「何も考えないで来ちゃったけど紫宴が無事でもここには戻ってこないか…」
このデッキホルダーを持った黒服はプレイヤー化してるんだから…。
「そうだ、メール!」
総駕がポケットからタブレットを取り出すが、
バッテリーの残量は尽きていた。
これじゃあ連絡しようもない。
「昨日の夜不安過ぎてずっとナビ見てたせいか…」
タブレットを充電するのにもなんだかんだ15km歩いて帰るしか無さそうだ…。
総駕は帰路を歩きながら人を探したが中々人に出会わない。
'充電器でも借りれればよかったんだが…'
「まぁ、この期間に出歩く意味なんかないか」
小一時間して長い道のりと誰にも合わない事に肩を落とした。
しばらく歩いた総駕は休憩がてらにコーヒーショップらしき店に入る事にした。
まだ昼前だが、少し歩き疲れた
それに人が店内にいるからだ。
恐る恐る総駕は店に入ると、男と目が合う。
総駕は注文をしてから男と間隔を開けて座った。
'やっべ、どうやって話しかけようか…
いきなり充電器貸して下さいってヤバいかな?
それと持ってるかな?'
総駕はあまりコミュニケーションが得意とは言えなかった。
自ら誰かに喋りに行くタイプとかじゃなく学校でも喋ってる奴が居れば輪に入れたり話しかけられれば会話するタイプだった。
「すいません?コレの充電器もってないですか?」
総駕はタブレットを指差して男の後方で言った。
男は振り向く、総駕の腰元を見ると眉間にシワを寄せて素っ気なく返事をする「持ってない…」。
「そうですか、すいません」。
総駕が席に着くと男はそそくさと店を出た。
男の手には電子デッキホルダーが握られていた。
「あれって…」
総駕は腰元のホルダーを手に取る
俺のホルダーを見て塩対応だったよな。
'なにかあったのだろうか'
総駕はライガードラゴンが入ったデッキを見てカードを組み替えた。
準備も整い再び帰路に着く。
だが、30分も歩かないうちに総駕は足を止めた。
"ウオオオオォォ"
男の荒げた声が聞こえるからだ、
走っている、叫び声が移動している。
総駕はその方角へ向かう、
しだいに足音が2人のものだと分かる。
そして…路地に人影が一つ、二つ通過した
黒い皮の服を着た男が誰かを追いかけていた…
「アレは…」
総駕には見覚えがあった、
ビリビリした黒い服、俺のカードを燃やした男の1人…極道だ。
総駕の眼つきが変わる
"アイツ"
追いかけるように走る。
"あの時、俺は久本と極道にカードを奪われ
ライガードラゴンを燃やされた…その後
久本と極道が戦った
極道…アイツが勝ったのか!
倒したい…アイツを…倒す!!"
総駕の鼓動が速まる。