表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カードバトル/ダブルディティー  作者: KIRIー
絶対装甲の王 編
32/91

花之慶次


甲冑を纏い2mを超える長身の男、ジークフリート。-堂々と一糸乱れぬ様で前進する。

そして今、覇気すら感じさせるジークフリートの前には相応の覇気を纏う男が居る…、パラパラだった。


「何の用だパラパラ…」

重低音と圧し潰す様な覇気のジークフリート。


「おやおや…、やはり目に余るものがありますね」

相手のプレッシャー跳ね除け一瞬で自分の領域(テリトリー)に持ち込むようなパラパラ。


この空間だけが異様に重く、静止した世界が構築されていた。


「私と同じく(いざな)われた貴方と雖も、勝手な行動は謹んで頂きたい」

「貴様は驕りが過ぎるぞ」

「ほぅ…?」

「貴様の持つ力に創世竜は驚異的かも知れん、

だが、俺に通用するとは限らない」

「フフ凄い自信ですねぇ…この場で私の力をお見せしたい所ですよ」。

ジークフリートはホルダーを構える。

パラパラは手を前に突き出す。

「いや今は止めておきます…先客がいますからねぇ」マスケラの下で不敵に笑う。


「今は貴方と敵対したくはないのですよ…

私に協力すれば貴方の願いでもある強者と戦うという事は出来るはずです…」

「俺は奴と戦う為ならば手段は選ばないつもりだ、貴様が立ちはだかろうとも…!」

ジークフリートはパラパラに背を向け歩き出す。


「なぜそこまでディザスターに拘るのです?」

背を向けたままパラパラが問う、

振り向かずジークフリートは答える

「俺の道を進む為奴は超えるべき存在だからだ」。

ジークフリートが重たい足音と共に去って行く。


「実に小さく下らない理由だ…」

吐き捨てるようにパラパラは言った。



・ ・ ・ ・ ・ ・


インターバル3日目の朝。

ベッドに腰掛けた花之慶次(はなのけいじ)は目カッとを見開いた。

覚悟を決めた表情で丸テーブルの上にあるデッキを手に取り玄関に向かう…。


ドアノブに手を掛け廊下に出た瞬間だった

「よぉ慶次何処行くんだ…?」

伊達は眉間に皺を寄せて壁に寄り掛かり言った。

「だ伊達くん」

一瞬表情が緩む慶次。


そして遅れてディザスターが2人の元に歩み寄る。

「ディザスターさんまで2人こそどうしたの?僕は何でもないよ」

慶次は普段の明るさは見せずに声のトーンが低くなっていた、それを余計に伊達は不審に思う。

「何でもねぇ訳無ぇだろ!」

ワシャと後頭部を右手に、左手はポケットに一歩詰め寄る。

「昨日の僕が言った事まだ怒ってるの?」

[そのままの意味さ、君は僕より弱いから!]

伊達の脳内で昨夜のやり取りが蘇る。

「ああ、けど俺達が怒ってんのはそんな事じゃない!」

伊達は後頭部から右手を振り上げ慶次の顔の真横に振るう…‼︎

「うわっ」

咄嗟に慶次は両手を前に身構えると、一瞬遅れて鈍い音が聞こえた。

伊達が真後ろの壁を殴ったからだ…


「慶次…何があった」

ディザスターは言った。

事を聞いたディザスターは静かに、表情はサングラスでハッキリとは分からないが真剣な眼差しであろう事は慶次にも伝わる。

「…。疲れたんだよ、ただ」。

慶次の頭は伊達の腕より上にあったが、壁に持たれてズルズルと座り込む。


様子を見たディザスターは笑う

「フッ相変わらずだなまったく」

「えっ?」

慶次はディザスターの意外な反応に驚く。

「ひょうひょうとしてるが負けず嫌いでプライドも人一倍強いお前だ、何か隠してるのは分かる」

「やっぱりね、でもあんたなら分かるだろ?

僕が頑なに言わないって事も」

慶次とディザスターの視線が交る。


「ああ」

「だったら事が済むまで黙っててよ」

俯いて慶次は言った。

「それは信じて良いんだな必ず片がつくと」

…信じる、か。やっぱこの人言葉数少ないのに何でも僕を分かったみたいに言ってくれる。

「当然…!」

顔を上げ慶次は確信した表情で言い切る。


その後、慶次は1人でパフェを食べると言ったので俺達は別行動をした。

「なぁディザスターさんあれで本当に良かったのかよ?あんたなら口を割らせられっかと思うが」

伊達は言った。


ディザスターと伊達はホテルの一階で遅めの朝食を取っていた。

「…そう上手く行くなら昨日やったさ」

ディザスターはコーヒーカップに手にとる。

「ふぅん、そんだけ強情なのかよ…慶次の奴?

けど1人にしちまって良いのか」


「言っただろ彼奴は強い」

「けど!あの様子見ただろ?」

「あぁ、慶次は何者かと戦ったんだ。

…もしくは戦っている」

「⁉︎…この世界で考えられるケースならそれが一番の可能性だが」

「俺はさっき”片がつくかを聞いた、あの状況と意味合い的に何者かとの勝負の決着の可能性しかない」


[慶次が精神面での疲れを言ったがディザスターさんは彼奴の負けず嫌いの性格を言うと慶次は事が落ち着くまでという事情を言った。それとなくあんたは聞き出してるじゃねぇか、その後の追求しなかったのも最後彼奴の表情が変わったの混みってトコか…]


「でも誰と戦って?それもどんな目的で…何で慶次なんだ?」

「そこまでは分からないが慶次を警戒させる程の実力者なのは確かだ。それと1人なのか複数人なのか定かでは無いのは気掛かりだ」

「複数人ならやべぇぜこのゲームは1試合(ワンゲーム)の重みが違う。…いくら慶次でも」

「プレッシャーはあるはずだ」。


「プレッシャーを感じる相手つったら格上になるが慶次より強いのが複数人ってのはどうも想像しにくいぜ」

伊達は首を傾け眉間に皺を寄せる、

ディザスターはそれに頷く。

「…それに、このサバイバルのような世界で輩が集まるには条件が悪過ぎるからな…」。


「…そうなれば敵が1人の場合だ」。

ディザスターは言った

伊達は目を合わせた。

「だけど敗北したプレイヤーは消失するよな」

「そうだ、しかし例外を俺達は観たはずだ」。

ディザスターの言葉で伊達は思い出す

「あの水色の髪の女の事か」。

ディザスターは頷く。


奴等(パラパラ)の仲間であればゲームを熟知している可能性は高い、現にあの(レル)の腕は確かだった」

「そうなりゃまた挑んで来る事は十分あり得るのか…、だから慶次の奴は俺から遠ざけようとあんな事」。


伊達は立ち上がる

「だったら今直ぐ探しに行かないとヤバいんじゃないのか…?」

「白昼堂々接触の可能性は低いが…

確かに時間は無さそうだ」。


上階に戻る中ディザスターは言った

「おそらく今夜か今日慶次は奴等の仲間と接触するはずだ」。


「どうする気だ?」

「今俺達ができるのはデッキを練り直す事だ。

「まさか慶次が負けるとでも?」

「いいや。しかし、あの様子じゃ余裕が無いのは確かだ」

「つまり俺達が組んだデッキを彼奴に持たせるワケか」

「ああ。相手が相手ならば念を込める必要がある、恐らく相手は速攻か中速タイプのデッキだったハズだ」

「そこまで分かるのか?」

「慶次は速攻タイプのデッキ、同格の相手ならば同型(ミラー)か中盤行こう伸びるデッキに押し切られる事がある2パターンになるはずだ」

「…確かに慶次の表情にも説明がつくな」。


伊達はディザスターの部屋に入り、2人は互いのカードを広げる。

枚数は約6人分の300枚弱。

ディザスターが倒した中島は別プレイヤーを倒していた為余分にカードを持ち、伊達が倒したプレイヤーも同じく1人倒した経験者だった…。


「やっぱこのカードはDSED(ディザスターシュバルツエビルドラゴン)と噛み合うよな」

伊達は一枚の光り輝く黒翼のカードを指さす。

幻影翼(ファントムウィング)か、

再度聞くがお前は使わないのか?」

ディザスターは問う。伊達が幻影翼を獲得した際も真っ先にディザスターに差し出したからだ。

「要らねーよ俺のエースのパワーが4000出るのは知ってんだろ」

「やはり伊達のエースを主軸に組んだデッキが良さそうだな」

ディザスターはカードを指差す

「俺のか?まぁ確かに中盤以降に慶次が押される起因はパワーだ。」

伊達は指さされたカードを机で回す。

「はぁ、ならこいつ借りてきゃ良かったのによ」

嘆息しつつ言った。


「…出来なかったんだろうな」

静かにディザスターは言った。

「そうか…」

伊達は慶次が自分を遠ざけたセリフとプライドの高さを再認識する。


途中、伊達は自室に戻ったが19時を回り一階ロビーに降りる。10分後ディザスターの姿が見える。

「慶次はまだ戻って来てない」

伊達は首を横に振る。

「そうか」

30分になって帰ってこなければ街を手分けすると決め2人は慶次を待つ。


20分後も慶次は戻らない為2人はホテルを後にする。

「俺は大会が開かれた会場に向かう」

ディザスターは一度レルを目撃した地へ向かう。

「なら俺は人通りが無さそうな広場の方面に向かう」

伊達はビル通りの中へ向かって行く。


「慶次の奴どこほっつき歩いてんだよ!」

伊達は落ちていた石を蹴飛ばす。


「…伊達くん?」

慶次だった。伊達は深く息を吐きディザスターに電話する。

「ディザスターさん慶次の奴見つかった。」

ちらっと伊達は慶次を見るとキョトンとしていた。

「…そうか」

電話越しのディザスターは息が抜けた感じだった。


「いやぁごめんごめん!」

3人は料理を囲み団欒としていた。

「たくっ人騒がせなんだよ」。


「面白そうな場所でも見つけたか?」

ディザスターは言った。

「まぁね」

「なら今度俺も連れて行ってくれ」

「うん… 」。


夕食を取り終え各次部屋に戻る、が伊達だけは部屋に戻らなかった。

伊達は慶次の部屋の前に立ちドアをノックする

「慶次勝負付き合えよ」。

ドアが開き伊達は慶次の部屋に入る。


「如何したの急に」

不思議そうに慶次は尋ねる

「あぁ今日ディザスターさんと調整したから

お前に確かめて貰おうと思ってな」

「ふーん」。


勝負の1戦目は慶次のスピード勝ちだった。

しかし続く2戦目は伊達のDM(ディメンションモンスター)に苦戦する慶次。縺れた末、慶次の勝利となる。

3戦目は2戦目とパターンが似ており伊達の善戦勝ち。

最後の4戦目勝負中盤、盤面とTC(タイムクリスタル)が拮抗し伊達の長考。

それまでの試合、勝った試合が腑に落ちない勝利だったからか慶次は催促する。

「早めで頼むよ伊達くん」。

「あぁ…」

[やっぱりだ…]伊達は慶次の言動に不審感を強める。

普段気長な慶次だが追い詰められてセッカチになるのは変だ…。


長考の甲斐あって伊達はこの試合に勝利する。

2勝2敗…、慶次の表情は良いものではなかった。

そして-決着を付けるための5戦目、互いにデッキをシャッフルし準備にさしかかっていた時だ。

[今俺と慶次の実力は互角、次でハッキリする。]

伊達にとってはこれは自分の成長を確かめる機会であり、慶次の連日の不可解な行動を突き止める重大な試合…。


「ごめん伊達君このラストゲームは預けるよ」

不意に慶次が言い出した。

「どういう訳だ?」

険しい表情で伊達は慶次を問い詰める。

慶次はポケットの上に当てた手をそっと引いた。

「僕はやらなきゃ行けない事があるんだ」

真っ直ぐと顔を見て慶次は言った。


「お前どんな事情を抱えてるのか言わないつもりか?」

「うん」

硬く慶次は答えた。


「なら決着はどうするつもりだ!」

伊達が立ち上がる

「それはいつか…」


「テメーは昔からそうだった、自分はいつも分かったように俺より先にいる気になってやがる。驕りが過ぎるぜ慶次!」

伊達が慶次に詰め寄る

「確かに僕はそうかもしれない…

だからあの時も…それでも」

慶次はデッキを乱雑に手に取り立ち上がり、勢いよく玄関に直進する。

「慶次!!」

伊達は慶次に手を伸ばすが届かず追いかける。


エレベーターに慶次は乗り込み伊達が来るより早くに閉ボタンを押す。

ドアを目前にした伊達が締め出される。

「クソッ」

ドンッ・っと壁を叩き冷静になった伊達はディザスターに電話する。


「ディザスターさん慶次の奴が行きなり飛び出して行きやがった!」

息を荒くし伊達は言った。

「何があった」

落ち着いてディザスターはあらましを聞く。

・・・「…そうかデッキはどうした」


「デッキ?ああ!慶次の奴はデッキを持って飛び出した」


「俺も慶次を探しに向かう…」。

「分かったぜ、降りたら二手に分かれよう」。

伊達はタブレットをポケットにしまうとハッとする。


「俺のデッキ慶次の部屋だ」

勢いに任せて飛び出したからか伊達はデッキを取りに走る。


「チッこんな時に」

伊達はドアノブを回し入室後テーブルまで土足で踏み込む。その時、伊達は不意に足元のゴミ箱を蹴飛ばす。


カードを手に取りケースに素早くしまうと床に落ちた丸まった紙が目にとまる…

「コレは…」。

伊達は立ち止まりクシャクシャになったディザスターへの果たし状を読んだ。


エレベーターで降りながら思考を纏める…

「そうかだから慶次の奴あんなに必死になって…俺もお前の考えが分かったぜ。けどな」

ドアが開くと真剣な面持ちで進み出す。



-その頃慶次は約束の場所へ急ぎで向かっていた。

慶次の手にもつタブレットにはジークフリートからのメーセージが表示されていた。

伊達とのゲーム5試合目に差し掛かった際、受信していたのだ。


「あの場所で待つ、か…」

僕は夕方に彼奴と戦う為に接触ポイントのDDTステージにアドレスを記載した紙を置いてきた。

「急に飛び出して伊達君には悪い事しちゃったな…」

「確かに伊達君の行ったように僕は高慢だ、

ジークフリートとの試合で僕は勝利を確信した。だからあの時も..負けたんだ。

それでも…やっぱり僕は戦うよ勝つ為に」。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ