プロセス
「サモン!松風」
慶次の呼び出した松風は大柄な馬でディメンションモンスター前田利益に付き添うように現れる
「バトルだ」
ジークフリートのタイムクリスタルは残り6…
「前田利益で魔竜ウルムにアタック」
慶次のアタック宣言、前田利益の巨大な太刀が魔竜ウルムを切り裂く!
バキンッッ!
ウルムとクリスタルが破壊されジークフリートのタイムクリスタルは残り5となる…
いける!!
確信した、次のアタックが通ればジークフリートのタイムクリスタルは3つ…そうなれば前田利益のコスト4を超えるモンスターは現れず当然ジークフリートはコストが下回るモンスターしか出せない!
安心しきっていた…
「いけっ松風!プレイヤーにアタック」
ーーヒヒィィインーー
両前足を上げてクリスタルを砕く!
バキンッッ バキンッッ
ジークフリート
タイムクリスタル残り3
「まだ何かあるのだろう…」
ジークフリートは静かに言った。
声色が全く変わってない…焦るハズだ
彼奴が言った様に松風にはエフェクトがあるっ
なのになぜだ、彼奴じゃなくて--今ッ僕が…
震えているのは⁉︎…。
確かに追い詰めている、だけど底知れない何かが彼奴にはあるーー
ーー黒い影のような”何かが”彼奴の背後に見える、
それが僕へじんわりと伸びるような感覚が急に伝わって来る。
凄まじく重いプレッシャーが慶次の目には見えていた…
ドグンッ…ドグンッ!…
「松風のエフェクト、このカードをトラッシュに置くことで前田利益はもう一度続けて攻撃が出来る!」
「いけッッ!前田利益!プレイヤーにアタックだ」
僕の手札にあるタイムスペル、これは特殊ダメージを一点入れることが出来るカード…
そしてこのアタックが成立すればジークフリートのタイムクリスタルは残り1つ、勝てるんだ!
額から汗がにじみ出る…
松風に股がった前田利益がジークフリートのクリスタルに突き進む!
しかし、それに反応するジークフリート
手札のカードを素早く取り出す
「タイムスペル、ディメンションガード!
相手の場だけにディメンションモンスターがいるならそのアタックを無効に出来る!」
このタイムスペルの発動が慶次の不安要素を取り除く
ニタッ
「良かったよ、君の余裕の訳がアタック無効でね」
「何」
ジークフリートに一瞬の焦りが感じられた、精神的優位がようやく実感出来る
「前田利益のアタックが無効になった際トラッシュに送った松風は手札、ディメンションソウル、タイムクリスタルを1ずつ破壊すればそのアタックを成立させる事が出来る」
ふおおおおおお‼︎ーー
熱すら感じさせる前田利益の一撃がジークフリートのクリスタルを二つ破壊する!
バキンッッバキンッッ
「ここまで砕くとはッ」
「この勝負僕の勝ちだ」
「⁉︎」
慶次は人差し指と中指でカードを掴み公開する
「タイムスペル…ハート…ブレイクッ‼︎」
ハートブレイク
タイムスペル:コスト4
5ターン目以降に使用可能、タイムカウンターを3つ以上全て取り除き相手に1ダメージ与える。
慶次の唱えたタイムスペルハートブレイクの直後フィールドの前田利益の拳が赤いオーラを纏う!
「終わりだ…ッ‼︎」
前田利益がジークフリート目掛け殴りかかる、
鎧を纏ったジークフリートの胸元を目掛け前田利益が踏み込む!
「タイムスペル!」
ジークフリートが手札から新たにカードを放つ。
発動されたタイムスペルの直後フィールドが強い光に包まれる
「何だ⁉︎」
思わず目を伏せる慶次…
光が消えると目を疑った…
ジークフリート
タイムクリスタル1➡️残り2へ
「どうなってる?」
フィールドには前田利益がいる
変わったのはジークフリートのクリスタル、
しかし増えている⁉︎、ひとつ減少するハズが
なぜだ…
「俺が発動したカードはエルフの加護、
特殊ダメージが発動した際に発動出来る
ダメージを無効にクリスタルを1つ修復
その後カードを1枚ドローする」。
ジークフリートが新たにカードを引く、
このターン仕留める事は出来なかったしかし
タイムクリスタルは10残っている上に相手は高コストのディメンションモンスターは呼び出せない
「ターンエンド」
「俺のターンだ‼︎」
ジークフリートが力強く言ったが、慶次はこの変化に気づいてはいない。さっきのターンのジークフリートの余裕は、特殊ダメージに対応する札があった為だと解釈しているからだ。
そんな慶次の考えをジークフリートはまるで読んでいるように話し始める
「今貴様は次のターンに俺を倒せる、倒せばいいと思っている」
「っ⁉︎」
「今まで俺は攻撃を受け続け、先のターン貴様は俺が受け身に回る事しか出来ないと確信した!違うか?」
ジークフリートの鉄の仮面越しから鋭い視線がこちらを見つめる
「そのとうりだよ」
自信ある顔付きで慶次はハッキリと話す
「さっきの僕のターン君からは何か得体の知れない力を感じていたけどそれは思い違いだった君は普通のプレイで対応し普通の思考のプレイヤーだと実感出来た」
「あえて言おう君は普通だ…だから僕は次のターン勝てる!」。
「ならば俺からもあえて言おう…」
静かにジークフリートが告げる
「貴様は二流プレイヤーだ」
このセリフに慶次は苦笑いする
「僕が二流?」
「そうだ、貴様は俺の実力を見誤った…
それが貴様の敗因だ…」」
「わからないな」
慶次は眉間に皺を寄せた。
「ならば問おう勝利する者とは何だ」
「目先の結果を追わず諦めず自分の成長を重視する人かな?けど、君がそうだからと言ってそうなるとは限らない何時だって勝つのは僕だから」
「勝利者の精神も結果も確かにそうだ。
だが、貴様は決定的な事を言っていない‼︎」
「…」
「俺はこのターンタイムクリスタルゾーンにカードをセットする!」
ジークフリート解放値6
タイムクリスタル残り2
「なぜ失われた領域を⁉︎」
「分からないか…‼︎。
それは貴様が真の勝利者ではないからだ!」
「そんなバカな」
「貴様は疑問に思わないのかタイムクリスタルの違いに、なぜ12〜7番にセットされたカードはクリスタルと同時に破壊され1〜6番にセットされたカードはクリスタルが破壊されても残るのかを」
「まさか…⁉︎」
「それが貴様と俺との決定的な違いだ!勝利者とは絶えず進み続ける者、だが貴様は歩みを止めた!」
「僕が、歩みを止めた⁉︎…」
慶次の首元を汗が伝う、動揺が隠せない。
「トラッシュの魔竜ウルムはこのカードをディメンションゾーンに送ることでこのターンカードがセットされているクリスタルゾーンはクリスタルがある状態として扱う‼︎」
ジークフリートの失われた領域のクリスタルが道を指し示すように一気に光り輝くーー
慶次は思い出す…
「魔竜ウルムが現れた時に時空の歪みが生じたのはこのエフェクトを秘めていたからか⁉︎」。
「このターン出せるディメンションモンスターは限定されるがな」
「コスト6のディメンションモンスターが来る…⁉︎」。
ジークフリートが力強く拳を握る…
「勝利するその瞬間まで絶えず進んだものだけが栄光を掴む。サモン!魔剣バルムンク」
白のフィールドに突き刺さる黒の魔剣、その瞬間空がひび割れ雷鳴が響き渡る。
魔剣バルムンクと3ターン目にセットされたゲートニンベルンゲンが共鳴するーー
ーー「スペシャルディメンションサモン‼︎
絶対装甲の王ジークフリート‼︎」
フィールドに雷が落ちる‼︎
ジュュウウウーー
現実の雷では無いが耳が煩く鳴り続ける、
ーそして
…フィールドに絶対装甲の王ジークフリートが君臨する、、…
2mある前田利益の3倍はある
黒の鎧に装甲から翼が生えており
突き刺さるバルムンクを引き抜く
剥き出しの皮膚は竜の鱗に包まれている
目は鋭く兜から金色の長髪が流れる…
「これは⁉︎僕が感じた黒いプレッシャーの正体…」
ジークフリートの言った通り僕は実力見誤り
勝ったつもりでいた、でもそれはただアタックすれば勝てるという安易なものだ、次のターンまでの勝利のプロセスは考えず既に結果を見ていた…だが奴は違った。
勝利に至るまでを恐らくこの後数ターン先まで歩み続けている…!
立ち向かう術は考えれば出てくる…
だが、既にこの時…慶次は精神的敗北を味わっていた。
慶次は敗北を悟った…
この先自分のプレイは通用しない、ジークフリートは遥か先を歩いている
そこには確かな距離があるのだと。
「我が分身ジークフリートよ前田利益にアタック!」
絶対装甲の王-ジークフリート
パワー2800
VSパワー2000 前田利益
ジークフリートの魔剣が振り翳される、
それを向かい打つ前田利益
「タイムスペル発動!薙ぎ払い
前田利益のパワーを1000上昇させる」
ハァアアーー!
パワー2000>>3000
慶次の発動したタイムスペルが前田利益の闘志を増幅させ大太刀で斬りかかる
「タイムスペル王の威光…」
「っそんな」
ジークフリートの放ったタイムスペルの直後、、
場の絶対装甲の王が掌を前に突き出す、そこからは何者も近づけぬ波動が放出され前田利益は身動きを封じられる。
前田利益
パワー3000>2000
VS 2800 絶対装甲の王-ジークフリート
形成逆転からの逆転、絶対装甲の王の一撃が前田利益を襲う!
バキンッ‼︎
「ディメンションソウルを取り除き…破壊を免れる」
前田利益の甲冑がひび割れる…
ターンが回り慶次はカードを引く
「ドロー!」
「この瞬間!ジークフリートのエフェクトが発動する‼︎」
「!…」
慶次に次のジークフリートの台詞が、絶対装甲の王の力が敗北を突きつける…
「絶対装甲の王-ジークフリートは
相手のターン中パワーが1000ポイント上昇…
そして全ての効果を受け付けない!」
絶対装甲の王-ジークフリート
パワー2800>>3800。
「な、そんな……」
巨大な壁のように立つ絶対装甲の王は実際の大きさ以上の重圧があり、慶次を圧し潰す…
「単体のカードパワーが高すぎる…
効果に欠点がない⁉︎」
そして、この絶対装甲の王の力がさらなる現実を突き付けた、既に自分は敗北を覚悟したがそれ以上の絶望を感じる…
それは、仲間であるディザスターのエースを上回る事実‼︎
「僕は負けちゃ行けなかったんだ…
それなのに…僕は、、こいつを止められない」
悔しさが込み上げて唇を噛みしめる、
仲間の為に自分は今ここに立っている
だが、無力にも敵わない、、
(ディザスターさんの操るエースディザスターシュバルツエビルドラゴンはパワーは3750、だがそれを絶対装甲の王は上回る!。
たかが50の差だ、けどカードゲームじゃたったのパワー1の差だって勝負を左右する、それを埋める為にカードを一枚多く使わなきゃ行けない、ディザスターさんがもし戦えば、、真っ向からぶつかり合い……)
慶次の頭を最悪のシナリオが過る、それは…
エビルドラゴンとジークフリートがディメンションソウルを削り合いエビルドラゴンが傷付き墜ちる姿…
ディザスターがタイムスペルを使いジークフリートのパワーを超えるがジークフリートの威光がディザスターを上回るイメージが拭えない。
「ック、クソッ…」
今まで僕はディザスターさんの心配はした事が無かった…だけど今回は相手が悪い。
ジークフリートを攻略するにはパワーしかないだが自分ターンに仕掛ければ3800の高パワーは超えられない、彼奴のターンにカウンターを仕掛けても当然奴は対処する札がある
そう言ったコンセプトで当然デッキは組まれてる、効果を受けない能力に高パワー…攻略するにはジークフリート自身のターンに何らかのタイムスペルで対処する必要がある、それもディメンションソウルは2つあるのでそれ以上のカードが必要なんだ、当たり前だがジークフリート自身のターンになれば当然通常ドローでカードは増えるわけでパワーが負けているこっちはカードを使わなきゃ行けない、普通に戦って勝てる相手じゃない!。
その後ジークフリートのアタックが慶次を何度も襲い成す術もなく全てのクリスタルが砕け散った…
「終わりだ…」
ジークフリートが告げる。
慶次
タイムクリスタル残り0
両膝を着き己の無力さを痛感する…
「僕が…負けた………」
消失する恐怖は過ったが
最後の瞬間慶次が想うのは自分の事では無かった…
ディザスターや伊達の顔が頭に浮かび一言漏らす
「ごめん」
慶次は目蓋を硬く閉じた。