交わる運命
×月30日 。
セカンドステージに移行するに当たって、5日間の休息期間が与えられた2日目。
ピタッ、ピタッ
水滴が落ちる音、そしてその水滴が頬を伝う。
薄っすらと目を開けると地下道のような場所だった
「ここは…」
桜紫咲紫宴は目覚める、同時に一瞬で物凄い情報が頭を駆け抜ける。
「気がつきましたか?」
紫宴を真上から覗く女性の姿が視界に入り完全に目を見開き勢い良く起き上がる
「桃花‼︎…」
起き上がると同時にガバっと両肩を掴む紫宴に女性はビクンッとして固まると紫宴は気がつく
「違っ…すまない、知ってる人に似てたから…」
そっと両肩から手を離す。
目の前にいた女性は妹のような雰囲気で面影があり重なったのだが冷静じゃなかった。
光郷院の呪縛下にいる桃花がここに居るはずが無い、それにこうして目の前にいる彼女は明る過ぎない金髪で髪色も違う。
沈黙した紫宴に彼女が言った
「意識が戻って良かったです」
2つの事からホッとした表情をした彼女。
紫宴は自分の状況を把握する。
ワームホールに吸い込まれこの場所に来て意識を失っていた所を彼女に介抱されていたという事だろう
「此方こそありがとう御座いました」
紫宴は深く頭を下げて礼を言う。
「総駕!此処でもう1人見なかったか?」
紫宴はワームホールで飛ばされた総駕を思い出し咄嗟に聞こうとする
「女性は見ませんでしたけど」
桃花の名前を聞いたからか彼女はそう答える
「いや、男の子で歳は高校生ぐらいで、、」
心当たりが無く彼女は首を横に振る
「そうか…。色々と助かりました」
紫宴は立ち上がるとフラッとおぼつかない足取りをした。
「待って、その状態じゃ危ないですよ」
「平気です」
実際の所体力的に怪しい状態だったが迷惑を掛けたくない思いがあった、が強引に肩を組まされる
「っ!?」
動揺する紫宴に彼女は明るく言った
「私は七瀬奈菜!下から読んでもななせなな宜しく」。
七瀬奈菜、彼女の性格を理解し始める紫宴。
妹に不思議と重ねていたが性格は間逆ぐらいに違う、けれどお人好しな行動を取るのも納得する
「僕は桜紫咲紫宴、その…ご迷惑お掛けします」
申し訳無さそうにする紫宴を気にせず七瀬奈菜はニカッと笑い歩き出す。
「総駕みたいな奴がいるもんだな」。
「君歳は?」
紫宴に寄り添いながら七瀬奈菜は聞いた
「20です」
あまり深く関わるつもりがないからか簡単に答えるが彼女はフレンドリーに話しかけてくる
「じゃあ私いくつに見える?」
出たっ!この手のやっかいな質問と紫宴は内心思いつつ思考を巡らす。
女子高生でも通用しそうな顔立ちだなと思いつつ16歳の妹よりは少し上に見える。
答えは決まった…ゴクリ
「18歳とかかな」
「違うんだなー、やっぱそう見えるか」
予想どうりの回答と言った所なのか、でもその反応も女子あるあるだなと紫宴は面倒くさそうに見ていた。
「ところでさっき女の子の名前言ってたけど、彼女とか?」
おい、結局幾つなんだよ?と思いつつ紫宴は答える
「違う、妹だ」。
「妹っ。私の事本気で年下だと思ってたのかー」
「私21歳だよ!」
…えっ?。よくよく考えてみれば年下に介抱されてたのも情けない気もするが妹と間違えた彼女が実は自分より年上なのは驚いた
「なんか、すいません」。
そんなこんなで2人は地下道を抜け歩いて行くのだった。
● ● ● ● ● ●
深い霧が漂う中、天流寺総駕は辺りを見渡す
「此処は一体なんなんだ?」
ワームホールに吸い込まれた後気がつくと荒野に横たわっていたのだった。
このパラレルワールドに来たばかりの自分なら今頃焦っていただろうが何故だか今は冷静で闇雲ではあるが前に進んでいる
「紫宴は無事なんだろうか?…とにかく今は進むしか無い」
霧で先がよく見えず不安しか無い。
歩みを止めずしばらく進んだ頃強い風が吹き抜ける、目を細めると視界の先に人影が写る
「…人?」
総駕は歩を速めた、目先の人物と接触する事でマイナスがあったとしても物事が停滞しているこの様では何も進展しないからだ、ならば、
一歩踏み出すしか無い。
視界の先にいた人物は立ち止まっていたようで此方の足音に気が付くと振り向く
「おやおや、来ましたね」
その容姿はおしゃれなワイシャツを着こなし顔面にピエロのメイクをした男だった、一瞬パラパラを彷彿とさせる見た目に目を見開きぶるっと体が震えたが典型的なメタボ体型を見て …こいつ絶対違うわ…と思う。
「ちょっと!ちょっと!反応薄いなあ〜こっちは濃いメイクまでしてわざわざ来たんですよ?」
なんだか口ぶりはパラパラと違うようで陽気な感じが伝わってくる。
「…えっと、、」
リアクションの取り方が分からない…
しかし、この妙な男が言っていた言葉がひっかかる、
自分を待っていたようなセリフにわざわざとやって来た、俺に用が有るのは間違い無さそうだ、だが何を思ったか次のセリフから入ってしまう。
「あーメイク!いけてる気がします」
掴みはバッチリ
「おいー今更遅いから!、、ちょっとココは「俺に何の用だ」的なセリフ言わなきゃでしょ!先進まないよ?」
あれっ?ダメだったか。
「俺に何の用だ‼︎」
「ふふふよくぞ聞いてくれた!」
「私は君のとあるカードを復活させる為
パラパラの意思の元やって来た」
「ッ‼︎」
ふざけた気持ちが一瞬で吹き飛んだ…、
そんな気はしてたが案の定パラパラの仲間だった。
「その表情だよ!俺の顔見たときにして欲しかった!」
「俺の失われたカードなんてライガードラゴン以外に存在しない、それをパラパラの意思で復活ってどういう事だ」
「まぁそうなるのも無理無いか、実はパラパラは君を気に入ったみたいでね」
どうやらパラパラが遠くから監視しているのは確からしい、俺の戦いが目に留まったのだろう。
「でも俺のライガードラゴンは焼け焦げてる、そんな事出来るのかよ?」
ポケットに入っていた焼け焦げたライガードラゴンのカードを見せつける、すると男は自信がありそうな表情で断言する
「出来ますとも、それと私はシフトと申します、本日はよろしくお願いします」
深々と頭を下げたシフトがニタァと不気味に笑うがこの時総駕は知る由も無かった。