責任
総駕と紫宴はcブロック最上階まで目指す中、下の全階層も隈無く回っていた。
そんな時、総駕がレーンを流れる部品を見てある事に気がつく。
「ここまでで一つ気が付いた事がある、何で気がつかなかったんだ…」
「ん?」
紫宴が先導して3階から4階に向かう途中総駕の言葉に振り向く。
「これを作ってたんだ」
総駕は腰元の電子デッキホルダーに手を当てる
「デッキケースか!」
紫宴はケースを見てから足を止める。
「いつの間に付けてたなとは思ったけど何か特別なの?」
「ああステージを使わずに試合をする事が出来る、しかもカードを投げれば自動的に処理される」。
紫宴は説明を聞いて成る程なと言った感じだ
「それでこんなに大掛かりな訳か」
「もっと早く気が付けば…」
作られていたデッキホルダーの表面カバー…。
気がつくのが遅れた事に悔しさを感じる。
「いや寧ろ有難かったよ、ここが何なのかハッキリしたからね、
でも問題は二つだ、何故プレイヤーの立ち入りを禁止してるのか、
そして、負けたプレイヤーは何故ここに入って行ったのか」
「なら早く負けたプレイヤーを見つけないと」
「そうだね…」
総駕は先を急ぎ、紫宴はそれに続くが先程よりは勢いは無かった。
紫宴は思考を巡らせた…、勝ち進んだプレイヤーの立ち入りを禁止しているのは見せられない物があるからだと推測。
それはこの工場じゃ無いハズ、別にホルダーを製作しているのが見られても今更困らないだろう…。
となれば負けたプレイヤーの状況を見せられないからか…。
ここまで殆どa.bから通って見てきたが敗北者とは出会わなかった、なら彼等はもう此処にはいない可能性が出て来た。
・・・
同時刻所内監視室にて
「侵入者か…」
静かに立ち上がり、水色の髪を揺らしながら彼女は部屋を出る。
・・・
bブロックでは山代、松本と合流する高田と大田
「高田さん!大田さん!」
松本が2人の合流に歓喜する。
「この通路を進めば桜紫咲達とも合流できる」
大田が先頭に3人を先導する、そんな矢先
cブロックに繋がる道がシャッターで閉ざされていたのだった。
「なんだよコレッ!」
シャッターで前に進めず苛立つ高田
「…別の道から行きますか?」
山代が高田に落ち着かせる様に声をかけるが
大田は言った
「いや、cブロックに繋がるのは2階からだけだ」
「じゃ、どーすんだよ」
更に苛立つ高田。
「こうなれば止む終えないaブロックから戻るしか無い」
「ッチ、結局かよ!」
大田の提案しか打開策は無く皆は早急に施設内から外へ向かう、4人の足音が廊下に響く。
aブロックへ戻る途中、高田が呟く
「なんか聞こえねぇか!」
「えっ?」
先頭にいた大田はそれに気づいた様子は無く聞き返す。
「本当だ!なんか聞こえます」
「俺もっす」
山代と松本もその音に気がつく、4人は一度止まると音の正体は足音と分かる。
「コッチ来てんのか⁉︎」
高田が焦りを感じる
(マズイ…桜紫咲と合流出来てない今、DDTで戦うとなれば…)
足音が迫る…全部で三つ、3人の黒服が高田達の前に立ち塞がる。
「お出ましかよッ」
「だが此処にはステージは無い!」
予想どうりの展開に顔を歪める高田に大田は落ち着いて場の状況を言った。
「今から俺達と戦ってもらう」
黒服が低い声で言った、
だが高田が挑発する様に返す
「はっ?おっさんの言う様にココにはステージはねぇぜリアルファイトかよ!コイよッ!
生憎だがこっちは4人いんだ」
高田の挑戦的態度に黒服は真顔のまま電子デッキホルダーを投げ渡す
「我々もプレイヤーだ、これを使ってもらう」
バシッ
宙で投げられたケースを高田は受け取る
「それがあればステージが無くとも同様に試合を行える」
高田以外の3人にもホルダーが投げ渡される。
しかし高田は一つ指摘した
「だが人数が合ってねえ!4対3だがコッチは4人で良いのかよ?」
「心配しなくとももう1人が向っている、外で1人倒したからな」
黒服の”1人倒した”と言った言葉に山代と松本がハッとする
「もしかして二階堂さんの事か!」
「そんな⁉︎…」
松本は引き止められなかった事に責任を感じて震え自ら名乗りでる
「俺から戦います!」
「いいだろう」
黒服の1人と松本がデッキをセットし場所を少し離れる。
「なら俺もだ、俺もあの時ちゃんと引き止めてたら変わったかも知れない…」
山代は松本に続く、すると別の黒服が前に出て誘導する。
「残ったのは俺とお前達のどちらかだ。」
残った黒服が相手を待つ
「どうします?大田さん俺からでも良いすっよ」
高田が行こうとするが大田は自信有り気に口角を上げて笑う
「若い奴だけに頑張らせる訳にも行かねえ、
良いトコ無しもこれっきりだ、それに万が一、誰か負けたら二回戦う事も考えりゃ一番強い俺がスタンバっとかなきゃな」
「初めてカッコよく見えました」
「初めては余計だ」
大田は高田に背向けサムズアップしながら黒服との試合に挑む。
残った高田は勇ましい背中を見送り、緊張感は少しあるが今の構築と大田の実力も確かだと信じて相手を待つ。
…そして3人其々の責任を感じた戦いが始まる。