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カードバトル/ダブルディティー  作者: KIRIー
Iステージ編
12/91

First Stage last turn

 3回戦が始まり4回戦、5回戦と大会は進んで行く。

2回戦から棄権者は多数いたが、長期戦と連戦になる事からか毎回戦毎に棄権者の人数は増えていった。


 1回戦を勝てばリスク無く試合が出来るとはいえ、大会の進行にはそれなりに時間が掛かる為、多くのプレイヤーは精神的に疲弊していた。


 6回戦に差し掛かった辺りで、会場の人数が減って大分動きやすい状況になる。試合を見物する敗退や棄権したプレイヤーも大勢いるが、残りのプレイヤーは3千から5千程度だろう。


 6回戦が終了すると一旦食事をとる為に進行を中断した。

黒服が持って来たテーブルの上に、片手で食べる事の出来るホットドッグやサンドイッチなどの軽食が並べられ参加中のプレイヤーに優先して配給される。


 プレイヤーの中でも食事を摂らない者も精神的理由からか少なくはなかった、そんな中でも紫宴は特に食欲が旺盛で英気を養う様に蓄える。


 ここまで紫宴は順調に駒を進め緊張感は無く、当たり前の様にして勝利していた。会場を去るプレイヤーも少なくはなかったが、総駕は会場に残り試合を観戦していた。



 然しながら、2回戦の後以降、紫宴とは一度も会わなかった。

総駕の中で紫宴のやっている行動は否定したくなると同時に危く見え理由はあれ自分を救った事もある。

そして、手段を選ばない非道の先には愛すべき人を助けたいと願う優しさがある。状況をどうにかして紫宴を救いたい強い気持ちがあるが、周囲を巻き込む方法だけは許せずに前に進めないでいる自分がいる。


 カルト教団と言う噂も流れる光郷院翼(こうごういんつばさ)の光の結社ーーー素顔に見えた紫宴の悲しき表情や時折見せる雰囲気は光郷院に対する殺気で本物で偽りが無いと分かる。

それは紫宴の言っていたように光郷院による洗脳は本物なのだろう…。


  それでも光郷院(こうごういん)を直接知らない俺が聞いた話を鵜呑みして良いのか…。


 レルと戦った時、パラパラに通じてそれが全てのプレイヤーの為になると確信したが、見た事も無い光郷院を頼まれたら俺は倒すのか?。

 藤堂との戦いは結局は俺自身の為だったのだろうか?。

藤堂に敗れた男は戦いを拒んだが藤堂はそれを笑ながら倒した、

それを許せず、この世界や何もできない自分を変えたかったのが建前だったのか?、…総駕は自分の中で自問自答を繰り返した。


「俺は建前で自分を守って…結果的に俺の為に戦っていたのかも知れない、だけど何か変えられると信じて戦っていたのも事実だ。

俺はまだ何一つ変えちゃい無い」


(自分の為に戦っていた自分を認める…

紫宴の自分の目的の為に戦っていた事も認める。

仲間や友達だと思ったならこそ進み方が違うなら正せばいい。そして自分の目で見た物を信じて進んできた…俺は紫宴の優しさも信じる。…出来るはずだ…もう一度向き合う事で)


「紫宴が俺に惹かれた理由…自分が見た物に真っ直ぐ打つかってく姿勢、俺には結局目の前までしか手が届かない、だから今回はお前にストレートにぶつかるぜ…」


● ● ● ● ●


 総駕が見守る中、紫宴は勝ち進み大会は深夜まで突入した3時になると残り人数は14名となった…。

長期戦に伴い精神力と体力も削られるハズだが揺るがぬ目的がある紫宴はモノともしないタフさを見せ決勝戦に進んだ。


 折しも別の会場では決勝戦が一足早くに始まっていた--

その様子をモニタールームからパラパラは観ていた。


「フフフ… この会場の優勝は彼女で決まりですね」

パラパラの視線の先に映るのはローブフードを着た女でフードの間からピンクの髪色を覗かせる。


「私の勝ちですね」

 感情の無い声でフードローブを纏った女は告げる。

その女の場にはピンク色の花弁をしたディメンションモンスターが存在し対戦相手のディメンションモンスターの蜂を毒々しい蔦で出来た檻に閉じこめていた…。


ポイズンプリズンフラワー

《ディメンションモンスター》

ステータス:不明


 美しい花に近づいた蜂が毒の檻の中で弱り果てると、ポイズンプリズンフラワーの柱頭が口の様に開き蜂は真っ暗な穴の中に飲み込まれる…。


 タイムクリスタルが砕け散りローブフードの女はステージに背を向ける。

そして勝利した女の元へ黒服の男が近づき一枚のカードを渡す…

「それがこの会場の優勝賞品カードだ」

黒服はカードをしっかりと受け渡すと周辺の黒服と共に撤収を始める。


 ローブフードの女の試合を上階の観戦席で観ていたプレイヤー達は完璧な戦いぶりに固まっていた。


 試合が終了した直後で会場が静けさに包まれる中一人のプレイヤーが賞賛を送るかの様にパチパチと手を鳴らし始める…。

ーーパチッパチッパチッパチッパチッ

手を鳴らしていたプレイヤーは男で、両肘掛けの椅子にゆったりと座り、容姿は神々しいギリシャ神話の神にも似た服装、そして金の長髪。

 その神々しい日本人離れした顔立ちの男に順々に視線が集まる、視線が集まる中、男がゆっくりと立ち上がり視線を下階にいるローブフードの女に向けながら告げる。

「実に素晴らしい戦いをした、、、

桜紫咲桃花(おうしさきももか)”」。


 立ち上がった神々しいまでの容姿の男に敬意を払うように、

ローブフードの女、桜紫咲桃花は左手を下腹部に右手を背中に腰を曲げ片膝を地に付け忠誠を示す

「ありがとうございます…

光郷院様」。


 光郷院の名を聞くと同時にその男光郷院に周囲のプレイヤーは距離を置く…。

桃花と光郷院の周囲は圧倒的なプレッシャーに包まれ、他のプレイヤーを寄せ付けず二人を囲う様に輪になっていた。


 桃花は立ち上がりあろう事か賞品として渡されたカードを上階にいる光郷院に投げ渡す。

--シュッと線を描く様に流れ誰しもがそのカードを注視した。


 パシッと光郷院は右手の人差し指と中指、親指で左頬付近で捕まえるとそれを横目で見る

「God Knows Dragonか…私に相応しいカードだ、良くやってくれたね桃花…フッ」。


 光郷院は口角を少し上げ笑うとゴッドノウズドラゴンを掴んだその右手から魔が禍々しい黒い光を放つ…!。

その光景を見ていたものは誰しもが驚愕した…

「私に蹂躙できぬものなどない…フッハハッ」

 光郷院の手にしていたGod Knows Dragonのカードを大衆に見せつけると先程のイラストと名前は異なり進化を果たしている事が見て取れる。


「彼奴が手にしてからカードが変わったぞ…」

光郷院がカードを手にしてからそのカードが変化するまでを見ていたプレイヤーが呟く

「本当だ!俺も見ていた!」

また別のプレイヤーも然り


 一瞬で賞品を手にした光郷院に睨みを利かせる

決勝に残ったプレイヤー

「彼奴…1度も戦わないで優勝賞品を手に入れやがった…」。


光郷院は頂点からモノをみる目をしていた

「これが私の力…。

私は神をも超える存在G.K.S.W.(ゴッドノウズシャイニングウィングドラゴン)の様にッ‼︎…」


試合中継を見ていたパラパラもその光景に驚くと同時に意気揚々としていた

「ほう!総駕様と同じ力!いやッ!

それ以上だ完全にあのゴッドノウズと同調しその力を自在に操っている…光郷院翼、、ですか自分の国を作り上げ人の心を操る貴方には操れぬ者は無いと言う訳ですか。

実に…面白いですねぇ」


 仮面の下でパラパラはニタァっと笑い

モニターに映る別の会場の映像拡大させた…。


 その会場の決勝では暴れ狂う戦いをしながらも相手を寄せ付けない強さを見せる緑の髪色に緑眼の男が映されていた、男の名は

大野崎緑徒--。


 このDDT世界に来る以前は日本を震撼させた極悪強盗殺人犯…然し、強盗殺人を繰り返す以前も人を殺めており、その際は密室殺人を数回行っていた。


 大野崎緑徒(おおのさきりょくと)はイカれた様に人の命を奪う事に快感を覚え強盗殺人を繰り返した際に捕まる事となる…。


 捕まる寸前も、駆けつけた警官を数名重傷まで追いやり、抵抗した後に逮捕される。

 その後、自ら密室殺人を数件繰り返したことを明らかにする。

その密室殺人とはパーフェクトクライムとも呼ばれており、強盗殺人を犯す数年前に起きた事件だった。

犯行、犯人共に足取りが掴めず難航していたが死刑判決が確定していた大野崎自らによって露見する事になる。


 映像に映し出されていた光景には、パーフェクトクライムを遂行する知能犯でも有り、殺人衝動に駆られる狂った一面を持つ、彼の性格そのものがプレイに現れていた…。


「終りダァァァア‼︎」

 口を大きく開けファイナルアタックを宣言し優勝を果たす大野崎緑徒(おおのさきりょくと)、そして各会場から順に輩出される勝利者を見守るパラパラが呟く。

役者(カード)が揃いましたね…全て私の

シナリオ通りに」。

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