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第七話

場所はギルド。

受付嬢の真ん前。

トロールの鎧は重過ぎたので置いてきた自分達は今、受付嬢にこれまでの事を報告していた。


「はい?鎧持ち──魔王軍がいた、ですか?…………ふぇぇぇえええ──むぐっ!?」


コテン、と首を傾げる受付嬢。

言葉の意味を理解した途端、大声を出しかけた所でカウンターから体を乗り出して自分の手で受付嬢の口を押さえる。


周りを見渡すとギルドにいる全員は酒を呑んで上機嫌になっており、こちらを見ている者はいなかった。


「むー!?む!?むーーー!」


涙目でジタバタと慌てる受付嬢にほんわかしていると、隣にいるフィランが人差し指を口に当てて静かにするようにする。


「静かに。街の皆に知られたら街中が慌て出してしまうわ。直ぐに上の人に言って欲しいんだけど。勿論、私達も漏らしたりはしないわ」


フィランは安心させるようにゆっくりと優しく囁き微笑む。

それに安心したのか受付嬢は何度も頷いた。


「わ、分かりました………直ぐにギルドマスターにこの事を知らせます」


「えぇ、よろしくね」


体は若干震えているが、この街の崩壊の危機かもしれないのである。

仕方が無い話だ。


奥へと行く受付嬢を見届けながら、酒でも頼もうかと思っていると突然声をかけられた。


「ねぇ、少し話いい?」


「ん?シスター………さん?」


振り返った先にいたのはアリアと同じ青と白を基調とした制服を着た聖女教のシスターだった。

しかし、その制服は動きやすい素材で出来ており、機動性を重視した造りになっている。

そして、背中には意匠が凝らされている丸い大盾と、腰には幅が大きい片手剣が佩かれていた。


髪は腰まであるであろう髪を耳から上に二つに括った髪型にし、緑の瞳を蓄えた目は活発そうに吊り上がっている。


「えぇ、聖女教のシスターで間違いないわよ。ここの教会のシスターじゃないけどね」


ふふん、と何故か自慢げに鼻息を鳴らし、腕を組むシスター。


その時に強調された胸部装甲に思わず目がいってしまうが、隣のフィランが排泄行為をしている家畜を見る一般人の目となっているので直ぐに視線をシスターの目へと戻す。


「聞くつもりではなかったのだけど、貴方達と受付の人との会話に魔王軍って言葉を聞いたから気になってしまってね」


シスターがそう言った瞬間、俺達は体勢と視線を元に戻して聞こえない程度に会話する。


「おい、どうする。早速バレてるけど?」


「知らないわよ。それよりも周りに誰もいなかったのに、どうしたら聞こえるのよ。馬鹿みたいな地獄耳ね。特徴と言ったら一定の部分がデカいだけなのにね」


「あのアホみたいな地獄耳シスターさんは自称ベンベルグ教会の人じゃないシスターさんだけど言っても問題ないんじゃない?」


「クソみたいな(地獄耳)シスターに言ったとして、ギルドと情報共有しないまま教会に報告されたら更に混乱を生むでしょうが。ここは受付が戻ってくるまで待っていましょうよ」


「だな、クズ(みたいな地獄耳)シスターには悪いけど待ってもらうか」


相談が終わり、振り返るとそこにはギルドの酒場の端で三角座りしながら暗い雰囲気を出しているシスターがいた。


「べ、別に馬鹿じゃないし!アホじゃないし!クソじゃないし!クズじゃないし!そ、それに少し太ったけど………ま、まだ細いし!………多分………」


涙目でプルプル震えるシスターは小さい声でブツブツと呟いていた。


「なぁ、あの人、自分が胸でかい事自覚してないぞ」


「それに川の流れの如く太った事を暴露したわね」


「な、なによ!言っとくけど私は太ってないから!普通………えぇ、普通よ!何だったら証拠を見せて上げましょうか!?いや、見せてあげるわよ!!」


たくし上げながらそう言うと突然、己が着ている服に手をかけ始めた。


勿論だが男の人口が多いギルド。

その人口が多い男達が目の前で何故か服を脱ごうとする痴女に目を突き出さんが勢いで見開いている。


因みに人口が少ない女は先程のフィランの様な目をして雄共を見ていた。


「なぁ、これってヤバくないか?上に着ている服脱いじゃったぞ?」


「そうね。あのシスターが社会的に抹消される前に止めましょうか。後一枚で完璧に事案発生だわ」






♠︎






「………グスッ………」


「ほら、鼻をかみなさい。お水、貰って来るわね?」


「まぁ、人生色々あるって。誰しも裸になりたい時もあるさ」


「あ、うん、ありがとう………ねぇ、何で私に問題あるかのように慰めているの?」


あれからシスターによる騒ぎでギルドの酒場がてんやわんやになった後、自分達は一つテーブルを使って座っていた。


周りの雄共は淑女達の腰が入った腹への殴りに撃沈しており、阿鼻叫喚である。


「さて、自己紹介しようか。俺はレイジ・グランディウス。各地を旅しているよ」


「フィラン。ただのフィランよ。一応ここを拠点としているわ」


「あ、さらりと流すのね。私は聖女教本部に所属する巡察官──テレシア・クレイムスよ。ここに来たのはベンベルグ教会から呼ばれたからよ」


聖女教には各地にある教会の上に教会本部がある。

教会本部の場所は誰も知る者はおらず、教会から選ばれた者だけが教会本部へと向かうことができる。


要するに目の前にいるシスター──テレシアは教会に選ばれた実力者である、という事だ。


「さっき魔王軍について知りたがっていたけど、もしかしてテレシアさんが呼ばれたのは魔王軍について調べる為なのか?」


「いいえ、私が呼ばれたのは別件。最近噂になっている殺人鬼についてよ」


「殺人鬼?フィランさん、知ってる?」


「最近、ベンベルグに出始めた犯罪者よ。殺された人は老若男女問わず様々だったけど目撃者の情報で黒いフードを被った同一犯だと分かったの」


「その中にはベンベルグ教会の関係者もいて、いよいよまずいと思ったのでしょうね?近くにいた私が呼ばれたのよ」


「じゃあ次は貴方達の話よ。私はしっかりと話すべき事は話したんだし」


今は受付嬢がギルドマスターに話をしているが、ギルドだけで国規模かもしれないこの問題を解決する事は無い筈だ。

故にギルドは国に必ず報告する。

そして、聖女と縁があるこの国の王女は必ず教会に連絡するだろう。


そういう事でテレシアに伝える事にした。


「そうだな。結界、つまり教会にも関係あるかもしれない話だしな。後でギルドと情報共有してくれよ」


自分とフィランはテレシアにこれまでの事を伝えた。


テレシアは手に顎を当てて思案顔になる。

どうしたのか、と心配する自分の視線に気づいたのか心配無いように手を振った。


「あ、ごめんなさい。最近現れた殺人鬼と魔王軍。同じ時期に現れたのがどうも引っかかってね」


「考え過ぎじゃないのかな。だって殺人鬼って人間だろ?どうやったら魔王軍と繋がるんだ?」


「それもそうよね………話してくれてありがとう。これからギルドマスターと話しに行こうと思うわ。貴方達も殺人鬼には気をつけてね。向こうはどういう手口で襲いかかるか分からないし」


席から立ち上がりつつ色々と心配してくれるテレシア。

それと同じくらい色々と残念な気がするテレシアだが心配してくれているので、自分とフィランも手を振りつつ返した。


「おう、気をつけておくよ。テレシアさんも殺人鬼の前で服を脱がないようにな」


「分かってると思うけど、貴方のそれはとても巨大だから殺人鬼を圧迫させないようにね」


「するわけないでしょ!?後、何度も言うけど私は太ってないッッ!!」


やはり己が胸がデカい事を自覚していないシスター、テレシアだった。



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