マスクなんか被りたくないよ!
美樹が自慢なのはボディラインであったが、顔も人並み以上だという自負はあった。少なくとも名指しでエキストラに抜擢されたことがあったからだ。でも、その時の役は美人ばかりいる美容院の美容師というものであったが・・・
しかしサイバロイドという機ぐるみを着せられたらその顔をアピールできないじゃないの! それに顔をアピールできなかったら他の仕事の口なんかないじゃないのよ!
そう美樹は心の中で叫んでいたが、すでに喉と口の中は詰め物のようにサイバロイドの装置が入れられ、すでに呼吸をしていなかった。正確には液体呼吸という技術により肺の中は特殊な薬剤で満たされており、外部の酸素交換装置が体内に酸素を送り込んでいるので自活呼吸を必要としなくなっていたのだ。
そういった宇宙飛行士用の技術を転用しているのは、中の人の存在を消すためであった。中の人は部品を構成する一部であり、人間のように呼吸しているのがばれては困るからに他ならなかった。
美樹は猿轡をされたようになったうえ、髪の毛は固められていたが、顔はまだ何も加工されていなかった。しかし、いよいよ頭部も改造が始ろうとしていた。
ロボットアームが美樹の鼻腔と耳穴に装置を挿入し始めるとともに眼窩に水中ゴーグルのようなものを被せ始めた!
「わ、わたしの顔を覆わないでよ! これが私のアイデンディティなのに、機械に覆われるなんて嫌よ!」心の中で美樹は泣き叫んでいたが、あっという間に美樹の頭部は外骨格の中に埋もれていってしまった。




