プロローグ
日中、夜間問わず暗闇に包まれた洞窟。壁に掛けられた青い炎のみが、この湿度の高い空間を照らす。
ただならぬ雰囲気を放つ数人が、ある者を中心に集まった。
「……団長。目標の居場所が確認できました」
「ふふん、さすが早いわね」
団長と呼ばれた女は機嫌良さそうに目を細める。
彼女はオレンジ色の髪を揺らし、ローブを纏った者の頭を撫でた。
「よくできましたっ!」
「ありがたきお言葉」
片膝を着き、低姿勢で団長に頭を下げる。
「別にもったいないとかないと思うよ! ただ、みんなで仲良くしたいじゃん? ね?」
「……ええ、そうですね。仲良く」
ローブを纏った男の声は低く、自分の玩具を没収された子供。
しかし、そんな男の雰囲気を気にすることもなく、団長は笑顔を洞窟に放ち続けた。
「天からの贈り物だよね! これで、大人しくアタシのものになってくれればいいけどさ!」
「それは難しいんじゃないですかね」
男は立ち上がり、バジリーナに微笑む。不気味な笑みを受けてもバジリーナの顔色は一瞬も変化はない。
むしろ、更に上機嫌になったかのようでもある。
「そうだね。でも、だからこそ、アタシは君を仲間にしたんだよ?」
「ええ、団長の目的はなんでしたっけ?」
「えー、また説明しなきゃダメ?」
おねだりをするような顔でバジリーナは、男を直視。ビキニアーマーという妙に露出の多い団長の魅惑ボディと合体すれば、どんな男も心が高鳴るものだ。
この男もまた例外ではなかった。
団長は唇に人差し指を当て、しーっと静かに囁く。
男の耳元で、悪魔の吐息が掠る。
「……この世界で一番強くて恐れられる存在になることだよっ」
「え、ああ、そうですよね」
甘いフェロモン全開の団長の言葉と吐息に、何を話していたのか忘れかけていた男。
すぐに我に返り、己の悲願をつぶやく。
「……俺様の目標は、九星 大地を倒すこと」
自ら団長は男と距離を置いて、背を向けた。
「でも、本当に倒しちゃダメだよ。アレは『天井天下無双魔王譚バジリーナちゃん計画』には必要な人間なんだから」
バジリーナはそう言って微笑んだ。




