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若き元社長の、創造能力。  作者: 大岸 みのる
第二章:一部・若き元社長の、妹。
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若き元社員の、妹。3

「今日会った女に殺されるって、それって……」


 レイが呟く。どうやら、心当たりがあるようで、大地はレイを見つめる。


「その怪我が何よりもの証拠か。レイを傷つけたとなると、相当の手練れだな。相手はバジリーナか」


 大地の視線は鋭くなる。しかし、レイは首を横に振る。どうやら、相手はバジリーナじゃないようだ。

 かと言って、レイを傷つけた相手となると、探すのが大変だ。相手はギルドランク一位にある聖剣騎士達か、それと同等の実力を持つ者だ。それか、あとは≪十脳の皇帝≫。大地と同じく、特異能力を持つ存在だ。


「と、とりあえず、夕飯にしませんか? 大地さんもお疲れでしょうし」

「……それより」

「ダメですよ大地様。私達も疲れてるんですから」


 結局、この後も詳しい情報を聞く事ができなかった。何度も何度も、三人から事情聴取をしようとしても、無視されるばかり。

 お風呂に入り、恩人を傷つけた連中をどうするかと悩んだところ、大地はロリババァに色々聞くことにした。


 のだが。


 どうやらロリババァは、優と既に眠っていて、話なんてまともに出来そうにないほど、いびきがうるさかった。優も可哀想だな、と思いながら、大地は客人室を後にした。

 有力な情報を掴めない以上、大地はスキルを使うしかない。過去、この場所で何があったのかを探るスキルを作成しようと考えた。

 明かりの消えた店内に入り、スキルを発動させる。


「『創造能力スキル・クリエイティブ』『過去反映(リ・モーション)』」


 今回造ったスキルは、時間指定をして過去をホログラフィックで見ることができるスキルである。

 店が忙しかったのが伺える。フフィが大地の代わりを務め、他の二人も一生懸命働く。なんだか、自分がいない店を眺めていると、面白いな、と思い始めていた。

 しかし、目立つ客人はいない。

 ようやく、店が閉店した頃。そこに二人の人間が現れた。一人はスキンヘッドのスーツ男。もう一人は黒いスーツを着用した女性である。女性は死角にいる為、顔がよく分からなかった。

 色々と揉めている中、レイが遂にストライク・ソードを走らせた。


 その時、大地は目を見張った。


 相手の女性は、何かを呟き、レイの攻撃を止めた。そのあと、女性はレイの頭部に触れる。すると、レイは発狂し、その場に倒れた。

 この、女は一体…………。


 そこまで見たところで、女性は最後に言った。


「店長をフィールドナインに来るよう言っておいてくださいね。もし、来なかった場合、あなた達の命を貰うわ」


 それだけ言い残し、女性と男性は姿を消した。

 大地は瞳を鋭くし、その女性を睨みつける。

 スキルが終了し、大地は呆然としていた。


 ◆


 翌日。その日は雨で、朝から分厚い雲が空を覆っていた。空気も湿っているのに気温は高いしで、最悪である。

 今日もスキル屋は営業日だが、大地は書き置きだけして休むことにした。三人には大変申し訳ないけど、こればっかりは命の危機に関わるし、恩人を傷つけられた側の人間としては、あの女を許すわけにもいかなかった。

 早朝に店を出た大地は、フィールドナインへと向かう。場所については、昨日散々探索したので大体わかっている。

 訪れたのは、城下町の中心部にある市場から北にある、王族も扱う高級な物を販売している街。北街モールである。

 売っているものは、生活用品から武器まで多数。市場と違うのは、どの店も高額で質が良いものばかり。さらに、店内の清掃も行き届いている。

 そんな高級商店街の一角にある店、フィールドナイン。業務内容は、中々寝付けない人の為の睡眠屋である。

 どうも胡散臭いが、大地は足を進めた。

 扉を引くと、カランカランと乾いた音が響く。

 店内は、占いの館のように黒いカーテンで外の明かりが入らないようになっている。

 目の前には受付と思われる人間が立っていた。


「いらっしゃいませ」


 頭を下げる店員。昨夜のスキンヘッドとは違う人間なのだが、サングラスや服装は全く同じだ。

 標準表情の笑顔で、大地は歩み寄る。


「店長を呼んでくれないか」

「店長……は、いません」

「ん、不在なのかな」

「い、いえ、そうではなくて、店長という概念はないんです」

「失礼した」


 どうやら、この店は店長がいないらしい。多分、そういう役職の人間がいないのだろう。


「なら社長はいるか」

「あ、申し訳ないんですけど、社長は只今不在でして……」

「そうか」


 店員に言葉を返すも、早朝に社長がいたら変か。と大地は思い直した。

 ならば、後日出直すか、と思い踵を返そうとする。


「あ、えーっと、御用件とお名前を伺ってもよろしいですか?」

「ん、そうだね。行き違いになると、よくないからね。俺は九星 大地。社長直々に俺に用があったようなんだけど」


 ごく普通に返答した大地。だが、その店員は大地の名前を知ると、頭を再び下げた。


「失礼しました。九星 大地様。我が社長から、もし不在の際に来られたら、こちらのサービスを提供するように言われていまして」

「サービス?」

「はい、我が社の自慢、気持ち良く眠っていただけるという商品です」

「ん」


 顎に手を置いて少し考える。これは何かの罠である確立が高い。さらに、昨日の手荒さから無事帰れるわけでもなさそうだ。

 ならば、ここは罠にかかったフリをして、何かされそうになった時に、事を片付けようと思った。


「わかった。君達の商品を楽しませてもらうよ」

「ではこちらへ」


 奥へと通された大地。

 そこには、マッサージチェアーのような物がいくつも並んでいる。黒い革製の一人がけソファだ。

 触れてみると、素材が良いとわかる。多分、値段にしたら、そうとうな物だろう。


「どうぞ、おかけください」

「ありがとう」


 大地は腰を下ろし、体重を背もたれに傾ける。

 絶対に寝てたまるものか、今起きたばかりなのだから。と大地は内心で呟いていた。


「失礼します」


 そう告げると、店員は消え、やがて部屋の薄暗い電気も消える。

 完全な闇。ソファが動くわけないのに、大地はなぜか、宇宙にいるかのような無重力状態の感覚を味わう。


 ――――な、なんだ!?


 不思議な感覚が襲う中、立ち上がろうとするが、身体に力が入らない。

 これが一体、何の原理が働いてるのか全く分からない。このままでは、相手の術中にハマるだけだ。

 内ポケットにあるアブソーションを取ろうとするも、身体は動かない。さらに、口も動かなければ、やがて意識すら薄れて行く。


 ――――だ、ダメだ……。フフィ…………ッ!


 暗闇の中、大地は意識を失った。


 ◆


「社長、眠らせました」

「ありがとう」


 睡眠屋の裏部屋。従業員の休憩部屋に、女社長は腕を組みながら、アブソーションに視線を釘付けである。

 現在、女社長が発動しているのはスキル『完全睡眠スリープ・コンプリート』だ。例え、凶暴なマンモスであっても、血の気が多い魔物などに、かければ一瞬で睡魔に落ちる魔法スキル。

 これをかけて、すぐに眠らなかった大地はある意味、マンモスや魔物を超越した化け物ということになる。


 ――――さすが、いちにぃ!


 女社長は内心で微笑みながら、次なるスキルを発動しようしていた。


「……今に見てなさい。私がいないハーレムを築き上げた罰を与えてあげるわ」


 女社長は少しだけ笑った。

 店員は、そんな社長を見て身震いをした。この女社長がしようとしていることは、まさに非倫理的だ。もし、小悪魔に見つかったら最後、男は彼女を忘れられないくらいに依存する。

 一応、働いているだけあって、小悪魔の魔法には毒されていないが、自分がかけられるとなると、末恐ろしかった。

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