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RECORD2:出発

食堂にはすでにちらほらと人がいて早めの朝食をとっていた。

若い者はほとんどおらず、おじさんたちがコーヒーにトーストの組み合わせで新聞を読みふけっているのが大体を占めている。

「お〜い、リース!こっちだ〜!」

トレイを持って座る場所を探していると、聞き慣れた声に名前を呼ばれる。

振り返ってみると同じ位の年の男がホイホイとこちらに手招きしている。


その程よく筋肉がついた肌は少し日に焼けていて、金髪の整った顔つきに紅い眼が映えるその顔は誰が見ても二枚目に分類されるだろう。

だが、笑顔で立ち上がって目前の特盛りカレーを食べるのに使っていたであろうスプーンをブンブン振り回すことで見事にそのイメージを粉々にしている。

─そしてそのせいでさっきから周りの視線が非常に痛い。まあ当の本人は気付いていないようだが。


「おいウィル、分かったからその子供っぽい呼び方は止めてくれ」

トレイを置いて男の向かい側に座りながら先程の行為をさとす。

「え、何の話だ?」

「いや、もういい…」

多分言っても無駄だろう。元々そういう奴だ。それよりもさっさとトレイの中身を胃に流すほうがよっぽど時間の有効利用というものだ。

そう思ってトレイのサンドイッチに手をつける。


そしてこの、スプーンを手に俺の向かいに座っている男がウィリアム・キース。俺よりも一つ年下の22。

コイツとは知り合ってから3年の仲になる。

知り合ったのは能力テストの模擬戦闘。そう、お互い合意の下、迫真の演技で八百長試合をした時の相手こそがウィルである。あの時、格闘テストの時は俺が、そして射撃テストの時はウィルがわざと手を抜いて互角にした。

向こうも似たような理由で、入隊はしたいが危険な依頼は極力避けたいというもの。

ちなみに彼は俺がAPである事を知っている数少ない一人でもある。


「それにしてもお前はよく朝からそんなに食えるよな」

ウィルが朝から大量に、それもカレーを食べているのを見て思わずそんな言葉がもれる。

目の前の2人前はありそうなカレーがみるみる内に減っていく様はなかなか壮観だ。

「お前の方が食わなさすぎなんだよ。サンドイッチなんざ女の食いもんだっ」

スプーンを一語一語に合わせて振りながら熱弁する。

「んなこと誰が決めたんだよ。ただ今朝寝覚めの悪い夢を見たから食欲無いだけだ」

パンからはみ出かけたレタスを押し戻しながら今朝悪夢を見たことを話す。

「お前が悪夢?めずらしいな」

「ああ、何年振りかもな」

「………」

ウィルが驚いた表情をした後、何かを考え込むように押し黙る。

「ん、どうした。福神漬けが合わなかったか?」

うつむいた顔を覗き込みながら冗談半分に問いかける。

「──それって空に関係する夢か?」

詮索するような目でウィルが問いかける。

「…そうだけど、どうして?」

「それも航空機絡みの?」

的確に言い当てるウィルに、リースは身体を戻して席に着いた。

「……確かにそうだけど、どうして分かった?」

(コイツが他人の夢を言い当てるなんて、気味が悪いな…)

そう思っていると、ウィルが何かをゴソゴソと取り出した。

「これだよ」

そしてリースに向かって本のような物を差し出す。

「お前の体内時計はかなり精密みたいだな」

──それはどこにでもあるような週刊誌だった。

そのなかのページの端を折り曲げている所、ゴシップ記事のスペースにそれはあった。


『史上最悪の惨事から10年、歪曲された情報の真実に迫る!!』

という活字が大きく印刷されている。

『我々取材班は信用できる筋の協力を経て、10年前の旅客機空中衝突事故の事後情報が虚偽の報告ではないかという情報を入手した。

この事故は、空港付近で着陸態勢に入る980人搭乗の大型旅客機に、近くを飛行中の戦闘機が空中衝突をするという痛ましい惨事である。

あまりに惨い事故である為「神の気まぐれ」とまで呼ばれるようになったが、墜落した航空機の残骸から乗客十数名が生きて救出されたという奇跡に近い生還劇もあり、「神の気まぐれ」たるもう一つの所以となっている。

この事故に対して空軍関係者は、「当時、機体の計器類が原因不明の故障を起こし、マニュアル操縦に切り替えている最中に起きた不慮の事故である」としているが、我々が入手した情報により様々な説が浮上した───』


それより後は情報を元に立てたたくさんの仮説が書き連ねてあった。

まともな物では戦闘機パイロットの不注意説、管制塔の指示ミス説、旅客機側の不備を指摘する説などだが、後のほうに来ると第三者が撃墜したという説、乗客の中に軍にとって不都合な人物がいて、口封じの為に突っ込んだという説、挙句の果てには衛星兵器の誤射でGPS関係の機器が誤作動を起こした説等、にわかには信じ難い物まで様々だ。


「…これが今朝の夢に関係あるって?」

「無いとも言えないだろ?お前には馴染み深い出来事だしな」

テーブルに肘を突いて手に頭を乗せ、もう片方の手で垂直に立てたスプーンを器用に回しながらウィルが問いかける。

無論、すでに皿の中のカレーは跡形も無く消えている。

「この雑誌、しばらく借りてもいいか?」

「やるよそんなもん。俺に有益な事は書いてないからな」

それを聞いてからサンドイッチの最後の一切れを放り込み、雑誌を丸めて仕舞う。

「じゃ、部屋に帰って暇つぶしに読みますか」

席を立って大きな伸びをした後、部屋に戻ろうとする。

「帰って読むって…おいリース、これから任務だろ?準備できてるのか?」

「………へ?任務?何の?」

つっけんどんに聞き返す。そんなの初耳だ。身に全く覚えが無い。

「昨日エイドから連絡あっただろ。ここから半日位MHで飛んだところにある町で、俺は護衛任務、お前は物資の輸送任務、って」

「……」

「まさか、お前のエイドから連絡もらってないのか?」

無言で首を振るとウィルが絶句する。

「そんなバカな。エイド全員に連絡は行ってるはずだぞ」


──エイドというのは傭兵が志望すれば安値で雇える補佐の事で、必要な依頼のより分けをしたり、傭兵のための細かい物資調達や体調管理なんかを請け負ってくれる。

細かい仕事を正確にこなさなければならないので、エイドは基本的に女性が多い。

かくいう俺も去年からエイドを一人つけている。

どうしてかというと、依頼の取捨選択や金銭勘定に俺がとことん弱いから。

報酬が良く危険ではない任務を数多の中から選び出すのは非常に骨が折れる仕事である。だから依頼と金銭関係は全てエイドに一任して、必要に応じて連絡を入れてもらっているのだ。


「お前のエイドって…イルマちゃんだよな?」

心底心配そうな顔でウィルが聞く。

「確かにイルならやりかねん。だけどな、ギリギリで連絡入れたことはあっても連絡し損なった事は今まで一度もなかったぞ」

「だけどイルマちゃん、すこし抜けてるとこがあるっつーか、なんつーか──」

「リースさぁーん!!」

ウィルの話を遮るように再び食堂に俺の名前が響き渡る。しかも女性の。

そして例の如くまた集まる視線。さらに今度は時間が経った分、数が増えている。

……痛い、みんなの目線がひたすらに痛い。なんか勘違いの殺気も混じってる気がする。

(今度から外を出歩く時は注意した方がいいかもしれないな…)

そんな人の思いをよそに、少女が一人人垣を掻き分けて近づいてくる。

ショートカットに切られた茶髪は走るごとに肩の辺りを舞い、髪色に近い透き通るようなとび色の瞳には、今しがたまであった焦りと探していた人を見つけられた喜びが半々に出ている。

「リースさん!えと、そのっ!大事な話が──」


ズデンッ!ツツーー。


目の前まで来て前のめりに転ぶ彼女。そしてそのまま俺とウィルの足元まで滑って来る。

「…おーい、イルゥー。大丈夫か?」

しゃがみ込んでうつ伏せの頭をツンツンと突く。

「うー、大丈夫です…」


──エイドを雇った時の俺は金がほとんど無く、破格の値段で募集したのを今でも覚えている。

そのダメ元で出した募集にたった一人だけ立候補が上がったのが、目の前で涙目になって起き上がる彼女、イルマ・キオーリッシュである。

歳は教えてくれないが、この前乗り物の免許を持てない・・・・とぼろを出したので20以下というとこまでは目星がついている。ちなみに俺とウィルの間では18〜9くらいと言う事で折り合いをつけている。


「ハッ!!それよりも大事なお話が──!!」

「ああ、任務の事だろ?さっきウィルから聞いたぜ」

慌てて立ち上がろうとするイルマを制して隣のウィルをあごで指す。

「あっ、キースさん。伝言どうもありがとうございます。それにいつもシルビアさんにはお世話になってます」

ウィルに気付いたイルマが深々と頭を下げる。ちなみに、シルビアとはウィルが雇うエイドの名前で、かなり厳しい事でちょっとした有名人になっている。彼女はイルマの指導者兼良き友人でもある。

「おぅ、あんなのでよかったらいつでも貸し出してやるよ」

ウィルが周りに密告者がいないことを確かめてから胸を張って言う。正直、ウィルも彼女には頭が上がらないところがある。

「それよりイル、一体どうしたんだ?当日になるまで連絡を寄こさないなんて。何かあったのか?」

「そ、そんな事ないですよっ!逆に私がいくら連絡してもリースさんが返事してくれなかったんじゃないですか!!」

「そんなバカな」

「本当です!ちゃんと端末に連絡入れたんですから」

頬をぷぅと膨らませるイルマ。どうやら本当らしい。

とりあえず、ポケットに入れてる連絡用の携帯端末を取り出す。

「でもなあ、端末に連絡入った覚えは……ア」

「どうした?」

ウィルが尋ねる。

「…電源が入ってない。っていうか、バッテリー切れてる」

その一言にウィルは呆れ、イルマは非難の声をあげた。

「だって仕方ないだろ?使う事なんて最近無かったんだから─」

「だからって、充電もしないで放っておくなんてあんまりです!」

イルマの目が釣り上がる。

「分かった分かった!今回は俺が全面的に悪かったよ!だから帰ってきたら何か甘い物おごってやるから機嫌直せ、な?」

「まあそれなら、別にいいですけど…」

そこまで言ってやっと機嫌を直す。

甘い物で釣るのは俺がこの一年で覚えたイルマの機嫌回復法だ。

「そろそろ部屋に戻らないか。食べ終わったのにいつまでも食堂にいたんじゃ悪いだろ?」

「人も増えてきたしな」

ウィルも賛同する。正直、あの視線から離れたいというのもあった。


それから三人で雑談をしながら人気の少ない通路を移動する。

「えーっと、バッテリーが切れてるんだよな」

端末を裏返してカバーを開け、使用頻度の少ないバッテリーを取り出す。

コイツが消耗する電気の割合の一番を占めるのはおそらく待機電力であろう。

そのまま指でバッテリーの電極の突起部分を持つ

「もしかして、アレで充電するのか?」

ウィルがため息混じりに聞いてくる。

「え、アビリティを使うんですか?」

イルマの目が興味の色に染まる。

「まあ、この方が手っ取り早いし、電気は俺の十八番おはこだからな」

誰もいないことを確認してから、指先に精神を集中する。


パチ、バチバチッ…


特有の光とスパーク音を立てながらバッテリーに電力が供給される。

「うわぁ、すごい……」

イルマが感嘆の声を漏らす。

「そういやイルマちゃんは属性のあるアビリティはまだ扱えないんだっけ?」

「はい、訓練は受けてるんですけど、まだそこまでは…」

ウィルの質問に残念そうに答えるイルマの表情が少し曇る。

「まあその分イルは一生懸命頑張ってるし、何より機械の知識は教授以上だからな」

「へへ、そうですか?」

リースの言葉に彼女の表情が少し和らぐ。


APが持つアビリティという能力にはある程度傾向があり、子供や訓練を受けていない人でも物を浮かせたり割ったりといった能力は使えることが判明している。

そして、火や水、俺のように電気といったその場に無いものを作り出す能力は、訓練を受けないと習得するのは難しいと言われている。


「─よし、これくらいでいいだろう」

放電を止めてバッテリーを端末にセットする。

「うわっ、すごいな…」

電源をつけた端末にはイルマからの20件余りのメッセージ履歴があり、彼女がどれだけ頑張ったかが一目に分かった。

「集合まではまだ20分あるぞ」

腕時計を見たウィルが言う。

「それだけあれば十分準備が出来るな」

「今回リースさんは輸送任務だけなので、今日の夜には帰還する予定になってます」

歩きながらイルマが説明する。

「おっと。じゃ、俺はこっちだから」

「おう、また後でな」

「シルビアさんによろしく伝えておいて下さいね」

ウィルが差し掛かったT字路で二人と別れる。

「…リースさんが帰ってきたら何を奢って貰いましょうか?」

イルマがうっとりと幸せな妄想に入り込む。

「何でもいいが財布を空にするような物だけは頼むなよ」

「分かってます。リースさんの台所事情は私のほうが良く知ってるんですから」

「それもそうだな」

そこまで言って二人でくすくす笑う。イルマとは普段あまり話す機会が無いので、こういった雑談は結構新鮮に感じる。

「お、ついたな」

そこには見慣れたドアがあるじの帰りを待っていた。

「じゃあ、帰られたらまたここに来ますね」

「あぁ。その時までには何奢ってもらうか考えとけよ」

「はいっ」

イルマと別れて誰もいない自室に入る。

「さあて、準備しますか」

そういって任務に持っていく荷物をまとめ始める。


5分ほどで荷造りが終わり、中サイズのアタッシュケース一つと、1メートルはある直方体のケース一つに必要な物をすべてしまい込む。

「ほいじゃ、行きますか」

ドアにロックを掛けて、二つのケースを両手に輸送機の発着場に向かう。


発着場では三機の機体がアイドリング状態で待機していた。

──MHタイプと呼ばれるこの機種は、27世紀の産業革命の時に誕生したいくつかの新技術で出来ていて、タイヤと呼ばれる物は一切無く、着陸脚と呼ばれる三本の脚で離着陸時の機体を支える構造になっている。

VTOL(垂直離着陸)の機能も有する為滑走路が一切必要なく、高出力のエンジンにより非常に高い機動性を得たため、主翼も廃止されている。この機体の登場によりヘリは退役に追い込まれ、今はMHがヘリと変わって兵員輸送、低空での航空支援等の任務をこなしている。


ここにある三機もMH型だが、そのうち二機には一切武装が無く、機体の凹凸といえば機首に尾翼、機体を支える脚だけという、何ともシンプルなフォルムをしている。

残る一機はそれに武装を足したような機種で、機体の随所にミサイルポッドが付き、機体の下部には銀色に光る大口径ガトリングが装着されている。


「よっ。遅かったな、リース」

後ろからウィルに声を掛けられる。

「ちょっと荷造りしてたんでな」

そういって両手にあるケースを持ち上げてみせる。

「一日ポッキリの仕事にそんなデカイもんを持ってくのか?」

異様に直径が長いケースを指差してウィルが驚く。

「両方とも保険だよ、保険。非常時に役に立つ道具が入ってるんでね」

「非常時ねぇ…、おっと、任務説明が始まるみたいだな」

エンジンをふかす輸送機のそばに人だかりが出来ていた。

その中にリース達が混ざると、大柄な恰幅かっぷくの良い男性が書類の束を片手に歩み寄ってくる。その胸には20年以上SCに所属した事を証明するバッジが着けられている。

「…そこに並べ。任務の説明をする」

男の声は低くしゃがれ威圧的で、全員を整列させるのに十分なものだった。

「座れ…。私はルドビッチ・ハインケル。この傭兵会社に入隊して今年で35年になる。今日は貴様達に任務の説明をするために来た」

一同を睨みつけ、咳払いを1回してから話を続ける。

「ここに居る43名が本日の任務に参加するメンバーだ。

今から6分後に、お前達には後ろのMH二機と護衛用のMH-A一機にそれぞれ乗ってもらう」

そう言って後ろの三機を顎で指す。輸送機は二機ともカーゴルームの扉が開いていて、その内の一機には銃や弾薬といった兵器が黙々と積み込まれている。

「兵員の内わけはそれぞれにパイロット1名ずつ、残りは全員一号機に搭乗してもらう。パイロットはダグラス、機体のコードネームはリーマー1」

そこで紙を一ページ捲り、新たな書類に目を通す。

「…二号機には武器と弾薬を積み込んでいる。パイロットはレイナード、コードネームはリーマー2」

ハインケルは一瞬だけリースのほうを睨み、再び書類の束を捲った。

「三号機はMH-A、護衛機だ。二機を目的地まで無傷で運んでもらう。パイロットはハイネマン、コードネームはリーマー3だ」

そこまで言って書類を脇に仕舞う。

「目的地は東の町ミレース。ここからMHで6時間の位置にある山岳地帯の町だ。

所要時間は向こうでの滞在を含めて13時間。兵員40名に武器弾薬、MH-1を依頼主に配送し、パイロットはリーマー1に搭乗、帰還する。以上だ。質問はあるか?」

そういって兵員を見わたす。すると若い傭兵が手を挙げて立ち上がる。

「何だ、言ってみろ」

「はい。ここからミレースまでの道中はそのほとんどが森林地帯です。ミレース自体も治安が悪いわけではないのに、何故これだけの武装を、それも護衛つきで運搬するのでしょうか?」

威圧的な言葉に気圧されつつも男はこれだけを言ってのけた。

「…中々いい質問だ」

ハインケルがキズのある顔をニタっと吊り上げて笑う。

「確かにミレースまでの道中は森林地帯で武装集団が発見されたことも無い。しかし、発見されて無いだけで現時点では偵察すらなされていない。

幸いクライアントからの購入依頼があったため、上空を通過するに際し万が一対空砲火を受けることがあったとしても、対地攻撃能力を備えたMH-A型を護衛につける事で被害を最小限に抑えることができると司令部が判断した次第だが、理解できたか?」

そう言って質問した兵に向き直ると、兵士は頷いて再び座った。

「他に質問は無いな?よし、それでは時間だ。諸君、楽しいフライトを満喫してきたまえ」

それだけ言うとハインケルは書類を持って立ち去って行った。

「指定時刻になりました。各員、輸送機に搭乗してください」

発着場に抑揚の無いアナウンスの声が響き、皆がぞろぞろと機体に乗り込みだす。

「じゃあなリース。向こうに着いたらしばらくお別れだ」

乗り込む間際にウィルがリースに話しかける。

「そうだな。帰ってきた時には土産話を一つ頼むよ」

「でかいのを持って帰ってやるさ」

最後にもう一度手を振って、リースは武器を満載したMHに、ウィルはもう一機のMHのカーゴルームに他の兵と共に入っていく。


タンデム式のそこそこ広さのあるコクピットに入り、前の席に座って両肩の二本のベルトをクロスさせ、シートに着ける。

イヤホンとマイクが一体になっているヘッドギアを頭に取り付け、いくつかのスイッチを操作し、コンピュータの電源を入れる。

「──システム起動。MH機にようこそ。私はナビゲーションAIのクレアです」

機械の作動音と共に無機質な機械音声…ではなく、かなり本物に近い音声がイヤホンから発せられる。

「私の機能はこのMH機の管理と点検、及びシステム面での修復で、必要に応じてパイロットに代わり機体の操縦も行います」

「それは中々頼もしいな」

離陸の為の様々な手順をこなしながらAIの説明を聞く。

「クレア?」

「はい、何でしょうか?」

待機モードになり指令を仰ぐ。その間にもエンジン音は次第に大きくなり、リースが手順を確実にこなしていく。

「操縦関係は俺に任せて、君はレーダーのチェックを重点に置いてくれ。今から飛ぶ場所ではレーダーでの早期警戒が必要になる。分かったかい?」

そこまで言うと、AIが返答する。

「了解しました。操縦をパイロットに一任、レーダーによる早期警戒システムを最重要項目に設定します」

返答と同時にコクピットについているカラーディスプレイに目まぐるしく文字の羅列が流れ、AIの活動を示す小さなオレンジのライトがチカチカと点滅する。

「設定が完了しました。フライトを開始してください」

離陸準備を整えた事をAIが知らせる。

「それじゃあ、荷物の宅配を始めますか」


スロットルを上げて、操縦桿を引き上げる。

辺りに強力なダウンウォッシュを起こしながら、三つの機体が晴天の空に舞って行く。

そして二機の輸送機と一機の護衛機が目的地に向かって基地を飛び立った。


※ここからは作者の見るに耐えない駄文ですので読み飛ばして下さってもなんら問題ありません。と言うより読んだ方が時間の無駄かもしれません。


二話目の投稿も何とか間に合いました、acruxです。

できれば週一のペースで連載したいと思うのですが、早くもバテ気味です。

次は十日に一話になるかもしれません。

あと、一つの話に色々詰め込みすぎたと少し反省しています。今後の連載の大きな課題になりそうです。


それでは、次の話に続きます。

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