ある日のある少女の恋物語
連載が三つあるのに短編です。
…続きが書けないので逃避しました。
春、君と出会って。
夏、君とよく話すようになった。
秋、君への恋心を自覚して。
そして、冬ーーーーー。
* * *
裏庭の花壇の近くのベンチに私は座っていた。
季節は、冬。
比較的、寒い方の今日。
私、赤崎真由は耳あてをして首に巻いたマフラーに顔を埋めて、かじかんだ手を擦りながらグランドを見ていた。
裏庭の花壇の近くのベンチからは、グランドがよく見える。
ほとんどの人が知らない穴場から私は彼を見ていた。
私の男友達のなかでは一番仲がいい。
そしてーーー。
私の好きな人。
彼の名は、峰川孝彦。
彼との出会いは、私が友達に誘われてサッカー部のマネージャーになった時。
彼と仲良くなったキッカケは、夏の合宿の時。
彼への恋心を自覚したのは、秋のある日。練習が終わったあとのこと。
そして、今日。
私は、彼に思いを伝える。
容姿端麗、運動神経抜群の彼は女の子によくモテる。
対して、私はすべてが平凡。
好かれているわけがない。
でも、もう仲がいい友達ではいられない。
例え、告白して玉砕して友達でいられなくなっても。
伝えるって決めたんだ。
だから、今日は部活を休んでここにいる。
きっと、部活にいけば決心が鈍るから。
ここで、孝彦の姿を見ていた。
* * *
辺りが暗くなってきた。
そろそろ、部活が終わる。
「あ、真由。やっぱりここにいたんだ。」
声がした方に、顔を向ける。
そこには、制服姿の孝彦がいた。
別に、ここに来てほしいなんていってない。
でも、孝彦は知っている。
部活に行きたくないと言えば、私がここにいることに。
「どうした?なんか、あった?」
心配そうに私の顔をのぞきこむ孝彦。
私は、スカートを握りしめると決心したように孝彦を見た。
「あのね、孝彦。孝彦に伝えたいことがあるんだ。」
「え、俺に?なんの話?」
孝彦は、驚いた表情を浮かべている。
私は、ゆっくりと息を吐くと言った。
「私ね、孝彦が好きなの。友達としてではなく、異性として。」
「………え?」
孝彦は、戸惑っているようだ。
孝彦が何か言おうとする前に私は口を開いた。
「ごめんね、突然。孝彦は、私のこと友達としてしか見てないことは知ってるよ。でも、どうしても伝えたかったの。…それじゃ。返事はいいから。」
「え…。あ、おい!」
私は、言いたいことだけいうとベンチから立ち上がり走り出した。
…泣かないって決めたのに。
とめどなく溢れる涙。
あぁ…、私の恋終わったな。
そう思いながら、走っていたが突如腕を捕まれた。
振り返ると、孝彦が私を睨んでいた。
「逃げるなよ!俺、何もいってないだろ!?俺がお前のこと友達としてしか見てないっていついったんだよ!」
「だって……。」
私は、俯いた。
でも、孝彦はそれを許してくれなかった。
顎を掴み、強引に上を向かせてきた。
「俺の話、聞いて。」
「……うん。」
「俺もお前のこと好きだよ。」
「………え?」
今度は、私が戸惑う番だった。
そらしていた視線を孝彦に向けると今まで見たことがない優しい目で私を見つめていた。
「ど、どう、して…?」
「んー…。真由の一生懸命マネージャーの仕事してるとことか、気配りがすげー出来るとことか皆がやりたくない仕事を率先してやっているとことかを見るうちに…な。でも、それまであんまり仲良くなかったから夏の合宿の時頑張ったんだぜ、俺。」
「……嘘。」
「本当。」
そういうと、孝彦は親指で優しく涙を拭ってくれた。
だけど、私の涙は止まらない。
彼は、苦笑しながら優しく抱き締めてくれた。
「泣くなよ。」
「だって……。」
「俺たち、両思いだろ?喜ぶところじゃん。泣くところじゃねーだろ。」
「嬉し泣きだもん…。」
「だとしても、泣くなよ。俺は、笑っててほしいの。」
「……ん。」
私は、顔をあげふわりと微笑んだ。
そして、彼の背中に手を回す。
「好き。孝彦が好きだよ。」
「俺も好きだよ。真由のことが好き。」
お互いがお互いの顔を見て思いを告げる。
私は、恥ずかしくなって孝彦の胸に顔を埋めた。
すると、孝彦はさっきより強く抱き締めてくれた。
「……真由。」
「んー?」
孝彦の声に顔をあげる。
すると、孝彦の顔が近づいてくる。
私は、ドキドキしながらもそっと目を閉じた。
はじめてのキス。
触れた唇から温もりが伝わってくる。
温かくて甘い…。
孝彦の温もりを感じながら伝えてよかったと思った。
私、今どうしようもないくらい幸せ。