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strangecommute and meet(奇妙な通学と出会い)1

 

 主人公 竜山樹 縁空高校二年生

     ダミア 無表情天使

 幼馴染 法末想 

 

 冬の通学路には雪がわずかに降り積もっていた。天気は快晴であるにもかかわらず、風は昨日よりも冷たく、俺の体に叩きつけていた。

「うおっ。寒いな……」

 そう言って俺は冷えた手を口の近くまで持ってきて、息を吹きかけわずかながら温めた。

 それからふと俺は、

「今日から半年でここも……」

  そう言って立ち止まって辺りを見回した。どこでも見られそうな、家がただ無作為に塀越しに並んだだけの面白みのない風景。遠くには中尾山が、その威厳を放つかのように何も言わずにそびえ立っている。近くには家の前を箒で掃く初老の好々爺や、犬の散歩をする40代を思わせる男がいた。正直、俺はダミアにああ言ったものの実際は迷っていた。本当にこの世界は俺が自殺するのを延期してまで救う価値があるのか、と。

 俺の世界にはやはり何の変哲もない。別に俺がいなくたっていいじゃないか。ただ人間がどうでもいいことを考えて生きているような世界なんだから…………。

 とそこで、俺はある一人の少女に突然肩を叩かれた。

「おはよっ! 樹! 今日も空なんか見上げちゃって、また病んでんの?」

 そう朝から俺にこういう物言いをするのは、俺の幼馴染の、法末想(ほうまつおもい)ぐらいだろう。そう思って振り返るとやはり俺の予想は当たっていた。

 そのサラサラの腰まで伸びるロングヘアーは鮮やかなライトブラウン。品行方正学業優秀。縁空学園いや、ボランティアとかで町の清掃などもしているからこの地域、の人気者でもある。顔はやや童顔に思えるが、俺から見ても文句なしの美少女で、3ヶ月前に行われた縁空高校の文化祭ではミスコンで見事、他と圧倒的な差をつけて優勝していたぐらいだ。体の方も……そうだな、昔から見てきていたけれども俺の予想をはるかに超えるレベルで成長していたりしている。

 そんな神の手違いと思える完璧美少女と唯一の幼馴染である俺は昔から羨ましがられたり、ときには何であんな奴が、ということで憎まれたりもした。

 まぁ、そんな昔のことはさておき、俺は言った。

「全く、朝から元気だな……」

「いや、皆こんなもんだよ。逆に樹がテンション低すぎなんだって!」

「いや、そういうもんなのかね……」

「そういうもんだよ!」

 そう言って想は俺にニコッと笑った。俺はその笑顔の温かさに自然と笑みがこぼれた。すると思いはそれを見て、

「人間やっぱり笑わなきゃ! 樹だってそうすれば考えを改めなおせるよ! だからそうと決まれば私と一緒に学校に行こう!」

 そう言って想は、いきなり歩き始めたの。俺は何が『そうと決めれば』、なのかわからなかったがそれもまた彼女らしさであったので俺は何も言わずに彼女についていった。

 それから俺達は少しの間、お互い黙り込んだままだったが不意に俺の頭の中にある素朴な疑問がでてきて、それは話のネタにはちょうどいいか、と思ったので迷わず想に聞いた。

「そういえばなんでお前今日、こんなに遅いんだよ……」

 というのも、彼女は昔、風邪になっても遅刻せずに学校に来たことがある、というかなりの学校大好き人間だったので、こうして何も異常がないように見えるのに普通に学校に遅刻する理由が気になったのだった。それは軽い気持ちだったのだ。

 しかし、想は俺の予想をはるかに上回ることを言った。

「えっ?いや、だって樹のことずっとここで待っていたのに来ないんだもん。こっちも意地になってずっとここにいたの」

 それはまるで当然であるかのようだった。もちろんこれには俺もビックリ仰天して

「何で俺のことなんか待っていたんだ!?先に行っててもよかったのに、というかお前のことだから待っている間に色々な奴から声をかけられただろうに……」

 俺がそう言うと、

「もちろん。色々な人から一緒に行こうっていわれたよ……」

「じゃあ、なんで……」

「でも、私は樹と行きたかった。他の子よりも樹を選んだ。ただそれだけのことだよ」

「な……」

 俺は絶句した。するとそれを見てか想は自分がかなり恥ずかしいことを言ったことに気付き、顔を赤らめ、

「今のは違うから! 勘違いしないでね!」

 そう言った。そこまで否定されると悲しいものがあるな……。俺がそう思っていると、とつぜん俺たちの間に一陣の冷たい風が吹いた。すると想は青ざめた顔で

「……寒い」

 そう言って小刻みにその華奢な体を震わせていたので、それを見て、俺は

「そういえばお前どんだけ俺のこと、ここで待ってたんだ?ちょっと手触らせてみろ!」

 俺はそう言ってちょっと強引に想の手を握った。その手はまるで氷のように冷たく、想が俺のためにずっと待っていてくれたことを示していた。

「えっ……ちょっと樹!?」

 想はなんだか顔を赤らめてあたふたしていた。それを見て俺は、

「顔、赤いぞ、想?……はっ……もしかして熱でもあるのか?」

 そう言って、すぐに想を強く自分の方に引き寄せ、おでこに自分のおでこをくっつけた。

「……どうやら熱はないみたいだな」

 俺はそう言ってほっと安心していると、想は、頬を沸騰したやかんのように真っ赤に染め、

「……もう、もう大丈夫だからっ!! 離してっ!」

 そう言って俺のことをどんと突き飛ばした。俺は男とはいえ、近距離からおもいっきりやられたため、そのまま雪の中にドスンと倒れこんでしまった。

 そうして俺を突き飛ばした張本人は俺のことを見てばつが悪そうな顔をしたが、

「樹が悪いんだからね!!」

 そう叫んでそのまま身を翻して学校へと走り出してしまった。

 そうして想がいなくなって俺は腰をさすりながら、

「くそ、結構痛いわ……あいつおもいっきり俺のこと突き飛ばしやがって……」

 彼女のあの性格は昔からなのだが今でも俺はあれがどういう感情なのかよく分かっていない。ただ今、一つ分かったことがある。それは、

(やっぱり、想の笑顔をこの世界からなくすわけにはいかねぇ。それに俺に向けられるこの優しさは俺なんかではなく皆に向けられるべきなんだ……)

 そうして俺はこの縁空を自分の幼馴染を救うことに決めた。 

 そして俺は、体中についた雪を払って、立ち上がった。体は、かなり痛んだが、別に歩くには支障のないレベルだったので学校へと続く道を歩いていった。

 

 

 

 

 

 

法末さんいかがでしたでしょうか?こういうヒロインは俺の嗜好ですので

あとちょっと短いですかね?

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