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the begining part1

いやー、おわりました。まだ続きはありますが

 絹の様に長くて美しい黒髪。着ている艶やかな和服の上からでも分かるその慎ましい胸、日本人形のように白くて滑らかな肌、とそれでいて知性的な双眸。そして氷のような無表情。 その美少女はさらに背中から純白の羽が出ていた。 

「お前、何者だよ!」 

 俺がそう聞くとその美少女は言った。 

「……私の名はダミア。天国政府霊魂鎮圧庁に勤めている。年は……」 

「それ以上言わなくていい! 俺の何かが壊れそうで嫌だ!」 

 そう言って俺にダミアに何も言わせまいと大声を張り上げた。というのも、俺はこんな超絶美少女で、もし年が4、5桁いっていたら、と思うと、見とれてしまった自分への嫌悪でどうにかなりそうだったからだ。  

「……わかった」   

 そう言ってから、ダミアと俺は黙りこくってしまった。

 その間、俺は自分の身に起きている状況がいまだに理解できず、混乱していた。  そうして、俺がとりあえず今までにあったことを頭の中で整理していると、あることを思い出して俺はダミアにたずねた。「なぁ、さっき、俺はよく分からない白い空間で寝ていたんだが、そのときどこからかお前の上司を名乗るやつの声が聞こえてきて、お前に全ての事情を聞け、って言われたんだ」

 するとダミアはこくり、とうなずいて、

「……それはツサボ庁長官だと思う。」

「何だ、そのアフリカの都市でありそうな名前!?……ってまぁ、そんなことはどうでもよくて。俺がいたあの白い空間は何なんだ?」

「……あれは、死んだ人間の魂が天国に行くまでに通る通り道。普通だったらさっさと通り抜けちゃうんだけど、あなたの場合は死んでから、すぐに私が助けたからその反動で、あそこに少しばかりの間、留まってしまった」 

「……はぁ。そうなのか。まぁ、とりあえず、俺はお前に助けられてこの世界に戻ってきたということについては理解できた。でも、そこで疑問が一つわいて来るんだが、」

 俺はそこで一拍、間を空けて、ダミアにたずねた。

「何故、俺を助けた?」 

「…………」

 俺がそう聞いてもダミアは答えなかった。そこで俺はすぐにはあきらめずに質問を変えた。 

「じゃあさ、そのお前が勤めている天国政府、だっけか?それは何なんだよ?」

 俺がそう言うと、今度はダミアは饒舌に俺に語り始めた。 

「……天国政府はその名の通り、死んだ人間の魂が集う天国を統治する機関のこと。ちなみに人間界で悪人が行くところとして存在を考えられている『地獄』はもう何年も前に滅ぼされて、今は無い」

 ……そうか、地獄は無いのか。まぁ、地獄は怖いし、俺も死んだときには絶対に行きたくなかったので無くなってよかった、と思う。 

「って、つまり……待てよ。もしかして天国って、この俺たちの住む世界のように頭の良い奴らが権力を握り、俺たちと同じ人間なのにもかかわらず、驕っているような腐ったものなのか?」 

 俺がそう尋ねるとダミアは思案顔になってこう言った。

「……まぁいいすぎだとは思うけど、基本的にはこの世界と大して変わらない。選挙もするし、政策だってやるし、税制も確立している」 

 俺は一気に自分の心の温度が氷点下にまで下がるのを感じた。自分が理想としていた世界ー自分が全てを捨ててまで行こうとした世界、がまさかこの世界とさして変わらないなんて。 

 俺がそう落胆しているとダミアがその無表情のまま口角をわずかに歪めて、  

「……だから、提案がある」 俺にそう言った。  

「……提案?」 

「……そう、提案。あなたは人間界が嫌で嫌で仕方が無くて、自ら命を絶った、でしょ?」  

「……まぁ、そう、だけど……って何故お前がそれを知っている!?」 俺がそう聞くとダミアは何の抑揚も無い声で言った。 

「……だって私は天国政府霊魂鎮圧庁に属する天使。……天国へやってくる霊魂がどのような理由で死んだのかなんて全部、把握している。」

 そうダミアはそんな大事なことを、なんでもない事の無いように言ったので、俺は嘆息して、  

「……そうか。まぁ、その件は分かった。……で、とりあえず先ほどから気になっていたのだがその霊魂鎮圧庁ってのは何なんだ?」 

「……その名の通り。天国に来る霊魂はまず、私たちによって生前に満足している霊魂とそうでない霊魂の二つに振り分けられる。前者はそのまま天国に住んでもらう。でも後者は私たちによって人間として実体化させ、もう一度人間界に送り込まれる」 

「へぇぇ……そうなのか……」 

 俺はそう言って、ふいに、校庭を見わたした。なるほどじゃあ、この学校にもそういうやつがいるかもしれないのか………。 

「……話、続けてもいい?」 

 俺がそう感傷に浸っていると、突然、ダミアが俺にそう尋ねてきたので、  

「あ、ごめん、ごめん。続けてくれ」 そう言って、俺は、ダミアの方に向きかえった。

「……それで、実体化した霊魂には3年間の猶予がある。だから、その間にそれぞれが、人間界でやり残したことや、好きなことをして満足して無事、天国に戻ってくる。……まぁ、これを人間界では『成仏』というのだけど」 

「なるほどな。で?何を俺に対して提案するんだ?今までの話を聞く限り、別に何も無いじゃないか」 「……ここからが本題」 そう言って、ダミアはその無表情な顔を若干とはいえ、引き締めた。    「……実体化した霊魂、彼らは人間界では生き霊(ザ・ボーン)と呼ばれているけど、その生き霊達の中でごく少数なのだけれど、人間界では地縛霊(ザ・ステイ)と呼ばれる厄介な奴らが……いる。」 確か、地縛霊というのはその土地に未練をもって住み続ける霊のことだったはず。 

「……大体、あなたが考えているイメージであっている。彼らは与えられた3年間で満足せずに私たちの勧告を無視してまでその場に居続け、満足しようと求め続ける。」 

「……そんなこと、お前らが、許さないだろ?」 そんな、数の少ない地縛霊なんて天国政府にかかれば一発で収まるじゃないか、と俺はそう思った。 しかし現実はそう甘くは無い様で、 

「……私たちはせいぜい彼らが降り立った場所だけでしか動けないように、制限することぐらいしか出来ない。というのも、もともと天国政府は、霊魂にかなり有利に、なるような政策ばかりを作っている。……だからそういう地縛霊が発生するのも彼らが3年間を終えて成仏する際に私たちが満足したかどうかを聞いて彼らがイエスと答えて、初めて成仏させられる」 

「霊魂に選択の権利があるって、おかしいだろ……」

 俺がそう言うとダミアはため息をついて、 

「……そこでようやく提案の件に遡る」 

「……ここでか」   

すいません。又修正しました

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