三話
名も無き暗殺者 3話
突きつけられる銃口 お手上げ状態の俺
下手すりゃマジで撃たれるぞ
「おい 怖くないのか? お前は今 殺されかけてるんだぞ?」
「ここんとこ物騒なことに巻き込まれまくってるんでね 慣れちまったみたいですよ」
「ハッ! 慣れただぁ・・・?」
いかん 言葉を間違えたか・・・?
「貴様 ゲームか何かと勘違いしていないか?」
冷たい目線 この目なら何でも殺してしまいそうだ これが暗殺者の目なのか?
と その時 後ろに気配を感じた・・・のも遅く 俺の体は地面とキスするがのごとく 倒れる
・・・
「こういう奴は痛い目を見ないと理解できねぇ ま 痛い目を見ても馬鹿なヤツは変わらんが」
SIGはスタンガンをコートの中にしまう
「気絶させたの?」
「ああ やたらめったら殺すのは主義じゃないからな」
目が覚める
自室のベッドの上 傍に寺原がいた
「寺原・・・お前が運んでくれたのか?」
「いーや 里宮が 後知らないオッサン ”彼のことよろしく”って」
里宮?・・・ああそうか あいつらと話していたときに気を失ったんだっけか
「おいおい 里宮に殴られでもしたか?」
「・・・まあ そんなところだ」
しっかし あんなイカツイおっさんと組んでたとは
もしかしてあいつはあのおっさんに脅されてたりしてるんじゃないのか?
・・・いずれにせよ このまま彼女にあんな事を続けさせるわけにはいかない。
「寺原」
「ん? どうした」
「もしもさ・・・もしもの話だが 俺が実は影の組織の暗殺者とかだったらどーするよ?」
「はぁ? なんじゃそりゃ」
苦笑された。 まあそうだよな
だが寺原はうーむと考え始めた
「・・・そうだな もしお前が暗殺者だと知っても 別に俺は何もしないさ」
「え?」
ちょっと予想外の反応に驚いてしまう
「だって暗殺業だぜ? 下手に関わってバッキューンされたら 俺、死ぬじゃん
そんなリスク背負ってまで関わりたくは無いな 学校の中だけで充分だ」
「そうか・・・」
確かに 自分の命の方が大切・・・だもんな
「さって お前大丈夫そうだし 俺は帰るわ じゃな」
「ああ」
ダルそうに立ち上がり 部屋の出口に向かう寺原 ノブに手をかけようとしたその時
「”知らぬが仏”って言葉がある。 多くのことを知っておくのは悪いことじゃないが、この世にはな 知らなくてもいい事って、あるんだと思うぜ?
無茶はしないこったな じゃ お大事に」
あいつがマジにまともな言葉を発したのって 初めてな気がした
しかし あれが奴なりの心配の仕方なのかもしれない。
TVを点ける。 ニュースをやっていた
『本日未明 ○○公園にて女性が刺され、病院に運ばれましたが、まもなく死亡 警察では通り魔による犯行と・・・』
まったく、毎日毎日よく殺人ばかり起こるもんだねぇ てか近所かよ わが町も物騒になったもんだ
・・・
ふと 里宮の事が頭に浮かぶ
あいつもTVニュースに上がるような犯罪者と同じように、殺害を楽しんでいるのだろうか・・・
廃ビル アジト内
『仕事かなんだか知らないが、俺はお前を止める。 偽善だの馬鹿だの言われようが知ったことか!!』
里宮に対して隼人が放ったこの言葉。 自分でも言ってるとおり、偽善者丸出しの馬鹿の言葉
けど 彼のそんな言葉が、頭から離れない。 里宮自身にも その理由は分からなかった。
「ベレッタ 仕事だ」
SIGは写真を置く 写真には冴えない男の顔
「誰?」
「最近 ここらで起こっている 通り魔事件の犯人だ。奴もかつて組織の一員だった。」
「で? 組織を抜け出して人殺して遊んでいるわけ?」
「前にも話したと思うが、組織は結構イってる奴が多い。 こんな事件起こしたって、何もおかしくはないのさ。
だがこの街に現れちまったのが運の尽きだ。 始末する。 ベレッタ、いいな?」
「了解。 で? 作戦は?」
SIGは周辺の地図を広げる
「先日、事件が起こったのが ここの公園 警察は警戒しているだろうが 流石に24時間張り付くのは不可能に近い。 犯人の方も素人じゃない。
恐らく同じ場所で第2第3の犯行に及ぶと見て間違いないだろう。」
「で? 警察の代わりに私たちが張り込んで始末すると?」
「要はそういうことだ 明日の夜 作戦を実行する」
翌日
「おっ 隼人 もういいのか?」
教室入って早々、寺原が声をかけてくる。 いつもはおちゃらけているが 真面目な時は真面目だ。 奴のこういうところが俺は好きだ
好きつっても、あくまで友人としての話だ。 言うまでも無いが。
「ああ、寝てるのは主義じゃない」
「まあ、お前らしいわな ところで隼人 里宮のことなんだが」
「ん? あいつがどうかしたのか?」
すると寺原はガラでもなくこう言った
「あいつにはもう金輪際関わるな」
放課後
何故、寺原が急にあんな真面目なことを言ったのか。
あの会話の後も 寺原と話す機会はあったが、里宮の事は話題には上がらなかった。
もしかしたら、奴は俺の事を本気で心配してくれているのかもしれない。
そんな事を考えつつ、下校 寺原は用事で先に帰ってしまった。 里宮は相変わらず行方が知れない。
ザッ ザッ
遠くから聞こえる足音
ザッ ザッ
人影はこちらに向かってきているようだった。
ザッ ザッ
手に何か握っている
ザッ ザッ
俺は不思議と動けなかった。
ザッ ザッ
俺はようやく その人影の手に握られているものが何か分かってしまった。
「あれは・・・おいおいおいおい!」
「ヒャアアアアアアハアアアアアア!!」
俺はとっさに右に飛ぶ、ようやく体が動いた
シュッ
それが頬をかすめる 血が流れる感触が頬を伝う
「チッ 仕留め損ねたか、今日はニューレコードは出ないようだな」
夕暮れの光に妖しく光るナイフ そいつはそれの刃先を舌で舐める
「だっがぁ・・・次はないぜ ゲーム・・・オーバーだ」
バァン
一発の銃弾が男の手首に命中する
「おうっ!」
とっさに手首を押さえる男
撃ったのは・・・
やはり・・・
「死にたくなければ、そこから逃げなさい」
里宮だった
「待て! 里宮お前!」
「後ろ!!」
「イェアアアアアアアアアアア!!」
男が切りかかろうとしてきていた。
「うわっ!」
どすっ
とっさに右足で男の腹を蹴る
「イェ・・・ア・・うごぅぇ・・」
男が怯む
パァン
「ぐげぇぁ!」
銃弾が男の足に命中 男はその場に倒れこんだ
「早くこっちへ!」
「里宮 こいつはどうするんだよ!!」
「あなたには関係ない!」
「まさか お前また殺す気じゃあ!?」
ガッ
足を掴まれる
「クク・・・クケケケケ ゲームオーバーだ」
足に広がる熱い感触・・・足に力が入らなくなる
「おい・・・足に力が入らないぞ?」
バァン
「ぐげぇ・・・」
男は絶命する
「ベレッタ 無事か?」
どうやらSIGが止めを刺したらしい
「ええ でも彼が刺されたみたいね 自業自得よ」
「馬鹿が・・・だから関わるなと言った」
意識が混濁する中 二人のそんな冷たい言葉が響く
そして 意識が
視界が
黒に染まった
続く