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目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています。  作者: 月影みるく


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第31話 前夜、そして当日

特訓は、最後の最後まで続いた。


「ここまでだ」


 リヒトの一声で、ようやく全員が息をつく。


 額に滲んだ汗を拭いながら、私は小さく呼吸を整えた。

 胸の奥では、光と闇が静かに、けれど確かに共鳴している。


「安定したな」


 短く告げられたその言葉に、全員が黙って頷いた。


「……もう、やれるだけのことはやった」

「あぁ……」


 それ以上、誰も言葉を続けなかった。


 ***


 そして――大会前夜。


 私は自室のベッドに腰掛け、窓の外を見つめていた。

 王都の灯りが、夜空に散らばる星のように瞬いている。


(明日……魔術大会)


 一般の部。

 年齢制限はなく、優勝すれば来年四月から王立魔法学院へ入学できる。


 ――みんなのいる場所へ。


 ノックの音が重なり、扉の向こうから次々と顔が覗いた。


 ユリウス。

 レオンハルト。

 エリオス、セレス、カイ、ノア。


 誰一人、「勝て」とは言わない。

 ただ、口を揃えて言うのは――


「無事でいろ」


 その一言だけだった。


 それが、何よりも胸に沁みる。


 最後に、リヒトが静かに告げる。


「恐れるな」

「君の力は、もう君のものだ」


 その言葉を胸に刻み、私はゆっくりと目を閉じた。


 ***


 ――魔術大会当日。


 朝の空気は、驚くほど澄みきっていた。


 王都の中央。

 巨大な円形闘技場には、すでに多くの人々が詰めかけている。


「すご……人、多い」


 思わず、素直な声が漏れた。


「観客席、ほぼ満席だね」

「一般の部は特に人気だからな」


 ユリウスとエリオスが周囲に視線を走らせ、警戒を怠らない。


 王族席には、王と王妃の姿もあった。

 私に気づいた王妃が、そっと微笑みかけてくる。


(……大丈夫)


 そう、自分に言い聞かせる。


 控え選手用の通路へ向かう途中、ざわめきが一段と大きくなった。


「……あの子、誰?」

「かわいい……」

「一般の部? 冗談だろ?」


 好奇と疑念の視線が、容赦なく集まる。

 けれど、不思議と怖さはなかった。


 レオンハルトが、そっと私の手を取る。


「ボクたちは、ここにいる」


 ユリウスも静かに頷く。


「逃げたくなったら、すぐ言え」


 私は一度、深く息を吸った。


 胸の奥で、光と闇が静かに応える。


 そのとき――


「――これより、王国主催・魔術大会を開会する!」


 闘技場全体に響き渡る宣言。

 割れんばかりの歓声が、空を揺らした。


 一般の部。

 無名の挑戦者たち。

 そして――最年少の参加者、ルクシア。


 運命の舞台は、もう目の前だ。


 私は、一歩前へ踏み出した。


 ――ここからが、本当の始まり。


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