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目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています。  作者: 月影みるく


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第27話 届かない距離、近づく未来

 王立魔法学院へ皆が入学してから、半年が経った。


 季節は巡り、王都には柔らかな春の気配が戻ってきている。

 けれど――私の胸の奥には、ずっと変わらない感覚があった。


(……静かだな)


 訓練後の中庭。

 風に揺れる木々を眺めながら、私は小さく息を吐いた。


 毎日、魔力制御の練習をしている。

 光も、闇も、以前よりずっと安定してきた。


 それなのに。


(前は、いつも誰かがいたのに)


 ユリウスお兄様。

 レオンハルト。

 エリオス、セレス、カイ、ノア。


 賑やかで、うるさくて、

 でも、当たり前だった日常。


 今は手紙で近況を知ることはできても、

 隣にいるわけじゃない。


「……会いたいな」


 思わず零れた声は、風に溶けた。


 ――――――――――


 その日の午後。


 王宮に呼ばれ、私は王と王妃の前に座っていた。


「最近、少し元気がないようだね」


 王が、穏やかな声で言う。


「……はい」


 否定はできなかった。


 王妃は優しく微笑み、私の手を取る。


「寂しいのよね。皆が学院へ行ってしまって」


 胸の奥を、正確に言い当てられた気がした。


「でも、それは悪いことじゃないわ」


 王妃は続ける。


「大切な人を想う気持ちがあるということだから」


 王が頷き、話題を変えた。


「ところで、ルクシア。もうすぐ王都で魔術大会が開かれるのは知っているかな」


「……魔術大会?」


「ああ。学園主催のものだ」


 王は説明を続ける。


「部門は二つ。学生の部と、一般の部」


「一般の部……?」


「年齢や身分を問わず、魔術を扱える者なら誰でも出場できる」


 私は思わず身を乗り出した。


「そして――」


 王は、少しだけ表情を和らげた。


「一般の部で優勝した者には、特例が与えられる」


「特例……?」


「次の年の四月から、年齢に関係なく王立魔法学院へ入学する権利だ」


 ――その瞬間。


 胸の奥が、強く跳ねた。


(学院……)


 ユリウスたちがいる場所。

 レオンハルトが学んでいる場所。


「もちろん、簡単ではない」


 王は念を押す。


「実力者が集まる。危険もある」


「ですが」


 王妃が、静かに言葉を継いだ。


「あなたなら、きっと制御できる」


 優しい眼差しが、まっすぐ私を見つめている。


「無理にとは言わないわ。でも……」


 王妃は、そっと微笑んだ。


「もし、少しでも“近づきたい”と思うなら。

 挑戦する価値は、あると思うの」


 私は、膝の上で手を握りしめた。


(……私が、学院に)


 まだ十二歳。

 本来なら、入学まではあと四年。


 でも。


(会いたい)


 一緒に学びたい。

 同じ景色を見たい。


 守られるだけじゃなく、

 並びたい。


「……出てみたいです」


 声は、思ったよりもしっかりしていた。


「一般の部に」


 王は、満足そうに頷く。


「いい目だ」


 王妃は、私の手を強く握った。


「準備は、万全にしましょう」


 その瞬間、胸の奥で光が静かに灯る。


 闇もまた、穏やかに応えた。


 ――魔術大会。


 それは、ただの競技じゃない。


 離れていた距離を、

 一歩、縮めるための舞台。


 未来へと繋がる、挑戦の始まりだった。

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