第24話 忍び寄る影
兄たちが学院へ旅立ってから、
数日が過ぎた。
表向き、私の日常は変わらない。
決められた時間に起きて、
決められた時間に食事をして、
決められた範囲で魔法の練習をする。
――完璧に管理された生活。
(……息苦しい)
最近、胸の奥の違和感が増えていた。
理由は、分からない。
ただ、時折。
夜になると、
胸の奥が、ざわりと波立つ。
光ではない。
でも、はっきりとした闇とも違う。
(……なに、これ)
ある日の夕方。
庭で、短い魔法練習を終えたあと、
私はふと、足を止めた。
空気が――重い。
「……?」
護衛たちは、気づいていない。
でも、確かに。
視線を感じる。
(……誰か、いる)
背筋が冷たくなる。
次の瞬間。
胸の奥で、
闇が――微かに、応えた。
(……っ)
思わず、息を詰める。
同時に、
遠くで何かが弾けるような感覚がした。
護衛の一人が、眉をひそめる。
「……今、何か――」
「なんでもない」
私は、咄嗟にそう言った。
理由は分からない。
でも。
(……知られちゃ、だめ)
その夜。
王都の外れ。
人気のない路地裏で、
黒衣の人物が膝をついた。
「……まさか」
その口元が、歪む。
「まだ、十二歳だというのに……」
指先から、黒い魔力が霧散する。
「光だけではない」
「……闇も、確かにそこにある」
低い笑い声が、闇に溶けた。
「見つけたぞ、ルクシア・ノクティス」
王都の灯りが、
何も知らずに輝いている。
その中心で。
私はまだ、
迫り来る影の存在を、
はっきりとは知らなかった。
けれど――
運命の歯車は、
確実に、回り始めていた。




