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目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています。  作者: 月影みるく


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第22話 9年のあいだに

 ――九年の月日が、静かに流れた。


 幼い身体で光を暴走させていた私は、

気づけば十二歳になっていた。


 鏡に映る少女は、

かつての面影を残しながらも、はっきりと変わっている。


 絹のように透き通る白銀の髪。

 宝石のような青い瞳。


 視線を向けられるたび、

息をのむ気配を感じるようになった。


(……慣れないな)


 美貌だけではない。


 成長とともに、魔力も確実に増大していた。


 光属性は安定し、

癒やしも浄化も、短時間なら問題なく使える。


 けれど――


(……闇は、まだ)


 感情が揺れたとき、

胸の奥で、別の力が目を覚ます。


 だから私は、

怒らず、泣かず、笑うことを選んだ。


 みんなを、心配させないために。


「今日はここまでだ、ルクシア」


 兄――ユリウスは、成長しても変わらない。


 背は伸び、表情は大人びたのに、

私を見る目だけは、昔のままだ。


「無理するな」

「顔色が少し悪い」


「大丈夫だよ」


 そう言うたび、

彼は少しだけ、納得しない顔をした。


 レオンハルト王子も同じだった。


 王子としての立場と責任を背負いながら、

私の前では、相変わらず距離が近い。


「ちゃんと寝てる?」

「食事、抜いてない?」


(過保護は健在)


 エリオス、セレス、カイ、ノアも、

それぞれの役割と自覚を身につけていった。


 護衛の数は増え、

外出は制限され、

魔法の練習は短時間のみ。


 ――守られている。


 けれど、

自由ではなかった。


 そして、告げられた。


「明日、王立魔法学院へ入学する」


 ユリウス。

 レオンハルト王子。

 エリオス、セレス、カイ、ノア。


 全員、十六歳。


 当然の進路。

 当然の未来。


 ――私だけが、取り残される。


 入学前夜。


 誰もいない庭で、夜風に髪を揺らした。


(……いなくなるんだ)


 胸の奥が、少しだけ苦しい。


 翌朝。


 王都は、学院入学の日特有の賑わいに包まれていた。


 制服に身を包んだ六人の姿は、

もう“子ども”ではなかった。


「……行ってくる」


 ユリウスが、私の前でしゃがむ。


「絶対、無理するな」

「毎日、連絡する」


「分かってる」


 レオンハルト王子も、視線を逸らさず言う。


「何かあったら、すぐ知らせて」

「ボクは、すぐ戻る」


「うん」


 エリオスたちは、それぞれ短く言葉を残した。


「待ってて」

「帰ったら、また遊ぼう」

「……ちゃんと、元気で」


 馬車に乗り込む背中を、

私はただ、見送ることしかできなかった。


 遠ざかっていく背中。


 九年のあいだに、

私は確かに成長した。


 でも――


(……まだ、追いつけない)


 胸の奥で、

光と闇が、静かに揺れた。


 王立魔法学院への道が開かれるその日まで、

私は、この場所で待つ。

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