第21話 守られる檻の中
王立魔法学院への入学が決まってから、
私の日常は、はっきりと形を変えた。
(……静か)
以前は誰かしらが話していて、
笑い声が途切れることはなかったのに。
今は、足音の方が多い。
廊下。
庭。
部屋の前。
どこへ行っても、護衛の気配がある。
「ルクシア様、こちらへ」
「お一人での移動は危険です」
やわらかな口調だけれど、
拒否という選択肢は、最初から用意されていなかった。
(……これが、守られるってこと)
外出は、完全に制限された。
庭で遊ぶ時間も、決められた短時間だけ。
魔法の練習は、
さらに短く、さらに慎重になった。
「今日はここまでにしましょう」
光が、ほんの少し揺れただけで、即終了。
(……まだ、なにもしてないのに)
その日の午後。
中庭で、久しぶりに友人たちと顔を合わせた。
エリオス。
セレス。
カイ。
ノア。
みんな、前と同じ顔をしているはずなのに――
どこか、ぎこちない。
「……元気?」
私が声をかけると、
一瞬だけ、空気が止まった。
「うん、元気だよ!」
セレスが笑う。
でも、その笑顔は少し硬い。
「……無理、してない?」
ノアが、遠慮がちに尋ねる。
「してないよ」
本当は、少しだけしているけれど。
カイは、私をまっすぐ見られず、
視線を逸らしたまま言った。
「……すごいよな、ルクシア」
その言葉に、胸が小さく揺れる。
「光と闇、両方なんて……」
エリオスは、少し距離を取った場所で立っていた。
「……近づきすぎるの、よくないって」
護衛に、言われたのだろう。
(……ああ)
分かってしまった。
私が変わったんじゃない。
世界の見方が、変わったんだ。
「ねえ」
思わず、口を開く。
「前みたいに……遊べない?」
その瞬間、
全員が、困ったような顔をした。
「……遊びたいよ」
「でも」
「何かあったら……」
言葉の続きを、
誰も口にしなかった。
それが、答えだった。
夜。
自室の窓辺に座り、外を眺める。
遠くに見える、王都の灯り。
(……学院に行けば)
もっと多くの人に会う。
もっと、多くの視線を浴びる。
怖がられるかもしれない。
期待されるかもしれない。
でも。
(今よりは……)
一人じゃないかもしれない。
胸の奥で、光と闇が静かに揺れた。
守られている。
でも、閉じ込められている。
それでも私は――
この力と一緒に、
前に進くしかないのだと、
静かに理解していた。




