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目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています。  作者: 月影みるく


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第19話 光と闇のあいだで

 ――暗い。


 どこまでも、静かで、何もない。


(……ここは)


 足元も、空も、境界すら曖昧な世界。

 私は一人、立っていた。


「……起きた?」


 背後から、声がする。


 振り向くと、そこにいたのは――


 私と同じ姿をした“誰か”。


 けれど、髪は夜のように黒く、

 瞳は深い闇をたたえていた。


「……あなた、だれ?」


 問いかけると、彼女は小さく笑う。


「闇だよ」


 当然のように、そう言った。


「あなたが怒ったとき、

 あなたが『守りたい』って願ったときに生まれたもの」


 胸が、きゅっと締めつけられる。


「……でも、あれは……」


 みんなが、傷ついて。

 私は、倒れて。


「間違いだと思う?」


 闇の私が、首をかしげる。


「守ったよ。ちゃんと」


「……でも」


 私は、拳を握りしめた。


「みんな、怖い思いをした。

 私のせいで……」


 闇は、しばらく黙っていた。


 やがて。


「じゃあ、光は正しい?」


 その言葉と同時に――


 ふわりと、温かな光が差し込んだ。


 もう一人の“私”。


 今度は、淡く輝く光をまとっている。


「喧嘩しないで」


 光の私が、穏やかに言う。


「どちらも、ルクシア」


 闇と光が、同時にこちらを見る。


「怒りも、優しさも」

「守りたい気持ちも」


「全部、あなたのもの」


 私は、二人を見つめ返した。


「……でも、どうしたらいいの?」


 力が強すぎる。

 制御できない。


 誰かを傷つけてしまうかもしれない。


 闇が、一歩近づく。


「拒絶しないで」


 光も、そっと隣に立つ。


「受け入れて」


 二人の声が、重なる。


「恐れないで」


 その瞬間。


 胸の奥で、何かが静かに重なった。


 光と闇が、溶け合うように、

 柔らかな明滅を繰り返す。


(……あ)


 怖く、ない。


 制御できない力じゃない。

 ただ、知らなかっただけ。


「……私」


 私は、小さく息を吸った。


「どっちも、私なんだ」


 光が微笑み、

 闇が、満足そうに頷いた。


「それでいい」


 世界が、ゆっくりと遠のいていく。


 ――――


「……ルクシア」


 誰かの声。


 温かい手の感触。


「……目を、開けました」


 現実に戻る。


 天井が見える。

 見慣れた、自分の寝室。


 ベッドのそばには、

 父と母、ユリウス、レオンハルト王子。


 そして――


 王と王妃。

 騎士団長アルベルト・グランツの姿もあった。


「よかった……」


 母の声が震える。


「意識が戻ったか」


 王は、静かに言った。


 アルベルトは、私をじっと見つめている。


 その瞳は、恐れでも警戒でもなく――


 覚悟の色だった。


「……闇魔法」


 低い声が、部屋に落ちる。


「確かに、発現を確認しました」


 空気が、張りつめる。


 王妃が、そっと口を開いた。


「ですが同時に、

 光との共存の兆しも感じられます」


 父が、一歩前に出る。


「娘は、危険な存在でしょうか」


 アルベルトは、即答しなかった。


 そして。


「……いいえ」


 はっきりと、言った。


「彼女は、“選ばれた”のではなく」

「“両方を抱えて立てる”存在です」


 その言葉に、胸が少しだけ軽くなる。


 王は、私をまっすぐ見た。


「ルクシア」


「はい……」


「恐れているか」


 私は、正直に答えた。


「……少しだけ」


 王は、頷いた。


「ならば、学ぶ必要がある」


 王妃が、優しく微笑む。


「一人ではありません」


 ユリウスが、強く手を握る。


「絶対、離れない」


 レオンハルト王子も、真剣な瞳で言った。


「ボクが、王子としてじゃなくても守る」


 アルベルトは、静かに膝をついた。


「この命に代えても」


 その言葉に、息をのむ。


 私は、小さく首を振った。


「……死なないでください」


 その一言で、空気が緩む。


 光と闇。

 恐れと、希望。


 そのどちらも抱えたまま。


 ――私の未来は、

 今、確かに動き始めていた。


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