第17話 夜に起きた異変
その夜。
過保護ルールのおかげで、私はいつもより早くベッドに入れられていた。
部屋は静かで、カーテン越しに月明かりが差し込んでいる。
(……眠れる、かな)
昼間はあれだけ騒がしかったのに、夜になると嘘みたいに静かだ。
私は布団の中で、そっと目を閉じた。
――けれど。
どれくらい時間が経っただろう。
ふと、胸の奥が、ひやりとした。
(……なに?)
目を開ける。
部屋は、変わらず暗い。
誰もいない。
物音もない。
なのに。
(……寒い?)
違う。
冷たい、というより――沈む感じ。
胸の奥で、何かが、ゆっくりと目を覚まそうとしていた。
(……光じゃ、ない)
はっきりと分かる。
いつもの、温かくて優しい感覚とは、まったく違う。
私は小さく息を吸った。
すると。
――すう。
部屋の隅の影が、わずかに揺れた。
(……え)
目の錯覚、だと思いたかった。
でも。
影は、確かに。
まるで、生き物のように、ゆっくりと広がっていく。
(……なに、これ)
怖い。
心臓が、どくん、と跳ねる。
その瞬間。
胸の奥が、きゅっと締めつけられた。
影が、ぴたりと動きを止める。
(……止まった?)
私は、自分の手を見つめた。
何もしていない。
ただ、怖いと感じただけ。
それなのに。
(……今の、私?)
小さく、喉が鳴る。
――だめ。
これは、知られてはいけない。
そんな直感が、はっきりと胸に浮かんだ。
私は布団を強く握りしめる。
(……大丈夫)
ゆっくり、深呼吸。
胸の奥を、いつもの光で満たすイメージをする。
すると。
影は、すうっと元の形に戻り、
何事もなかったかのように、部屋は静寂を取り戻した。
――静かすぎるほどに。
(……今のは)
夢?
それとも――。
私は答えを出せないまま、布団の中で身を縮めた。
誰にも言えない。
言ってはいけない。
だって。
もし、これが知られたら。
(……きっと、みんな)
余計に、心配してしまうから。
月明かりの下で、私は小さく息を吐いた。
胸の奥で、
何かが、静かに息づいているのを感じながら。




