第12話 それぞれの想い
あの日からだった。
お兄様の友人たちが屋敷に来るたび、
なぜか――私の周りがやたらと騒がしくなったのは。
(……気のせい、じゃないよね?)
まず最初に異変を起こしたのは。
「ルクシア様」
静かな声で名前を呼んできた、エリオス・ヴァレンティスだった。
「今日は外が少し涼しいので、こちらの方が過ごしやすいかと」
そう言って差し出されたのは、膝掛け。
(え、気が利きすぎでは……?)
「……ありがとう」
私がそう言うと、エリオスは少しだけ目を細めて微笑んだ。
「どういたしまして」
それだけで十分らしい。
距離は近づけないけれど、確実に私を見ている。
(大人だ……)
――次。
「ルクシア!」
元気いっぱいの声とともに駆け寄ってきたのは、セレスだった。
「一緒に庭行こう! 花、いっぱい咲いてるんだ!」
「おにわ……?」
「そうそう! 転ばないように、ちゃんと手つなぐから!」
有無を言わさず手を取られる。
(あ、でも……楽しい)
笑顔全開で話しかけてくるその様子に、
自然とこちらも笑ってしまう。
「ほら! ルクシア、笑った!」
(今の、たぶん喜ばせたつもりなんだろうな……)
――次は。
「……ルクシア様」
控えめに声をかけてきたのは、カイ・ローディア。
手には、小さな木彫りの人形。
「……これ、俺が作りました。危なくないように、角も削ってあります」
(手作り……!?)
「……ありがとう」
そう言うと、カイは耳まで真っ赤になった。
「その……気に入ってもらえたなら……」
それ以上は何も言わない。
けれど、その視線は真剣だった。
(不器用……だけど、優しい)
――そして。
「ルクシアちゃーん!」
最後に現れたのは、ノア・フェルミナ。
「一緒に絵本読もうよ! ボク、声出すの得意なんだ!」
そう言ってページをめくった瞬間。
「……あ」
逆さまだった。
(……)
「あっ、ごめん! 今のナシ!」
慌てて直す姿に、思わずくすっと笑ってしまう。
「笑った!? やった!」
(そこ喜ぶんだ……)
そんな様子を、少し離れた場所から見ていた二人がいる。
「……なんで、みんなあんなに必死なんだ」
腕を組むユリウス。
「分かりきってるでしょ」
レオンハルト王子は、むすっとした顔で答える。
「ルクシアが可愛いからだよ」
「……それは認めるけど」
「でも」
レオンハルトは、私を見つめて静かに言った。
「一番そばにいるのは、ボクだ」
「それは俺だろ」
火花が散る。
(……あの)
私はというと。
誰かが優しくしてくれるたび、
誰かが笑いかけてくれるたび。
胸の奥が、ふわっと温かくなっていた。
(惚れてもらう、とか……よく分からないけど)
でも。
――大切にされている、ということだけは。
ちゃんと、伝わっていた




