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目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています。  作者: 月影みるく


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第10話 広がる噂

最近、屋敷の中が以前よりも少し騒がしい。


 すれ違う使用人たちの視線が、私を追うことが増えた。

 ひそひそと交わされる声も、確実に私の名前を含んでいる。


「ノクティス家のご令嬢……」

「光属性だけでなく、お姿まで……」


(……全部、聞こえてます)


 どうやら、私――ルクシア・ノクティスの存在は、

貴族たちの間にも少しずつ知れ渡り始めているらしい。


 そんなある日のこと。


「ルクシア」


 部屋を訪ねてきた兄――ユリウス・ノクティスが、少し照れたように声をかけてきた。

 七歳になった兄は、以前よりも背が伸びて、表情にも落ち着きが出てきている。


「今日、俺の友達が屋敷に来るんだ」


「おにいさまの……おともだち?」


 私が首を傾げると、ユリウスはうなずいた。


「ああ。ちゃんとした貴族の子たちだ。ルクシアに会いたいって言ってな」


(どうして……?)


 理由はなんとなく分かってしまうのが、少し怖い。


「心配しなくていい。俺がちゃんとそばにいるから」


 そう言って微笑む兄の様子は、もう“ただの兄”ではなく、

守る立場であることを自覚した顔だった。


 ――と、その空気を遮るように。


「ふうん」


 少し低くなった声が聞こえる。


「また、ルクシアのことを知る人が増えるんだね」


 そこに立っていたのは、レオンハルト・アウレリウス王子。

 彼もまた七歳になり、王子としての自覚が少しずつ芽生え始めている。


「あーあ……」


 レオンハルトは、わざとらしく肩をすくめた。


「ルクシアは、ボクのおよめさんになる予定なのに」


(予定……!?)


「こうやって、可愛いのがどんどん広まると困るな」


 その言葉には、冗談めかしながらも確かな独占欲が混じっていた。


「何言ってる。ルクシアは俺の妹だ」


 ユリウスが、ぴしりと言い切る。


「それに、簡単に誰かに渡すつもりもない」


(渡すとかじゃないんですが……)


 私は二人を見上げながら、小さくため息をついた。


 まだ三歳の私には分からないことだらけだ。

 けれど。


 確実に言えることが一つある。


 ――私を取り巻く世界は、少しずつ広がり始めている。


 それが、守られるためのものなのか。

 それとも、縛られる始まりなのか。


 今はまだ、知らなくていい。


 ただ今日も、私は二人に挟まれて、

過剰なほど大切にされているのだった。

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