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リアルアドベンチャーゲーム

「で、□□駅までの切符を買い……2番線電車に乗るってことね。2番線はここでいいみたいね」


アリサは携帯画面を覗き込みながら、小さく呟いた。これから彼女は、真田行照代の家へ向かうのだが、今読んでいるのは、照代からのダイレクトメッセージで届いた旅の指示書だ。照代の指示通りに彼女の家を目指すという、まるでアドベンチャーゲームのような旅。最初は乗り気ではなかったはずのアリサだが、この話を聞き、今では指示が届くのをワクワクしながら待っていた。

おまけに、ママからは12000円もの電車賃も渡されている。


「うまく節約すれば、残りはお小遣いにしてもいいよ」

というママの言葉が、行く気ゼロだったアリサのやる気を引き起こしたのだ。結局、人は金に弱いのである。だがそれ以上かかった場合はどうするつもりなのだろうか? 目的地は照代以外分からないはずだが? まあ、到着しなければこの話は終わりである。届くと信じたい。


「これは、命よりも大事な金。慎重に使わなければ」

今、アリサは越後屋と悪代官よりも悪だくみをしている瞬間だった。


「暑いからといってジュースなんかを買うのは素人考えの愚行中の愚行! 水でいい。ん? 待てよ。そういえば……美穂子先生が


『暑い時は、水分と塩分を取りましょう。熱中症の予防になりますよ』


って言ってたなあ」

夏休み前の終業式後のホームルームでの先生の言葉がよぎる。


「ウム、塩か。確かナメクジ退治用にバッグに入っておったな。本来は武器としての使用以外禁止なのだが、それで凌ぐとするか」

アリサはナメクジが嫌いなのだ。彼女の


『万物調査』


のデータによると、嫌いなものの第3位に輝いている。ちなみにアリサの鞄には塩の瓶、携帯電話、モバイルバッテリー、財布、防犯ブザー、鏡、マジック、スケッチブック、マジックも消すことのできる消しゴム、懐中電灯、絆創膏、タオルーズの2枚組タオル、そして弁当、水筒などが入っている。万全の準備である。


「おばさんに報告しよう。駅に着いたよ、指示ちょうだい」

と、返信。しばらくすると、新たな指示が。


「おっ、来た来たwなになに? 」


『ここから5駅先の駅で降りて乗り換えよ。そこの3番線の□□駅行きに乗って終点で降りてね。だから□□駅行の切符を買って』


「成程、乗り換えは一回だけか。ウムこれならいけるぞよ」

一人旅がアリサの口調を横柄なオヤジ風に変貌させた。一人で全てをこなしているという誇りから、アリサは自分が世界で一番偉い人間になったのだと錯覚した結果の変化である。しばらくはこの口調が続くので、気に入らなかったら「戻る」ボタンを押してほしい。いいえ、やっぱり押さないでほしい。そんなことで諦める方なんてなんかやだもん。


「切符代は子供料金でも1500円か……10500円余ったけど帰りもあるし、余計に使えるのは9000円であるな。それでもデカいぞよ。ここであるな? うむ、なんか楽しいぞよ♪」

電車が到着した。アリサは一番に乗り込み、席を探す。田舎の電車なのでガラガラだった。窓の外が見たいので、窓に背を向ける横長の席には座らず、2人ずつ向かい合わせで座るタイプの窓側の席を選択する。一番前の車両の進行方向と同じ向きの席に座った。通路に少し顔を出せば、運転席も前の景色も見られる特等席だ。


「後五駅、後五駅と」

アリサは繰り返し唱え、忘れないようにする。

ガタンゴトン、ガタン……ゴトン。シュー。


「お? 今止まったな。じゃあ後四駅、後四駅」


『ドアが閉まります。ご注意ください』

電車が止まり、駅名のアナウンスが流れる。


「後四駅、後四駅」

すると、一人の老人が乗り込んできた。そして、ガラガラなのにわざわざアリサの前に座ってきた。話し相手が欲しかったのだろうか。


「どっこいしょ。失礼するよ」

だが、アリサはそんなことには一切気にせず、「後四駅」を連呼する少女と化している。当然返事もせず集中している。もしや気付いていないのかもしれぬ。


「お嬢ちゃん、一人旅かえ? 偉いのう、わしが子供の頃には電車なんて無かったからのう。どこへ行くにも歩きか自転車じゃったのう」


「後四駅、後四駅」

プーン

返事は無い。と、そこへ一匹のハエが、老人の鼻の穴に飛び込んだ。


「ふぉ? ふぉーくしょん!」

ぺちょ。

ぬぬっ? 唾液がアリサの顔に付いてしまった!


「すまぬ、多分ハエか何かが鼻に入ってきてのう」

しかし、お構いなしで「後四駅」を連呼するマシーンと化しているアリサ。そう、もしも乗り過ごしてしまったら、戻るためにその分多く電車に乗らなくてはならなくなる。そうなると、弁当を早めに消費してしまう。微課金で過ごすためには、最短距離で照代の家に着き、さっさと用事を済ませ、帰路で弁当を食すことが理想なのだ。通り過ぎるわけにはいかない。


その時、電話が鳴った。


「お、電話じゃ」

本来、電車内での通話は禁じられている。各自マナーモードにし、周りに迷惑をかけてはいけない。そうは言われても、まだ『後四駅』と連呼しているアリサ一人だけ。周りもガラガラなので、老人は携帯電話で会話し始めた。


「お? パートさん駅伝出るのか。暑いのに頑張るのう! ファイトじゃぞ!」

どうやらこの老人、どこかの会社の社長のようで、そのパートさんと会話しているみたいだ。すると、その電話の直後、アリサに変化が起こる。


「後三駅、後三駅」

と連呼し始める。


「はて? 何か独り言が変わった気がするぞい。まあいいかのう」

そして次の駅に着き、電車が止まる。


「お、止まったな。後二駅、後二駅」

フム、完全にずれてしまったな。これはどういうことだ? このまま行けば、乗り換え駅の一つ手前で降りることになるぞ。時間通り目的地にも到着できないことになるな。

だが、この変化には明確な理由があったのだ。その理由は、実は先ほどの老人の会話の中に秘密が隠されていた。それを解説せねばなるまい。


「この子はいつまでつぶやいてるのかのう? しかし何で唐突に一個下がったのじゃ?」

老人は不思議に思っているが、彼こそがこの変化の当事者ということに気付いていないのだ。パートさんから電話がかかってきて、そのパートさんは、夏休みに駅伝に出るとの報告を社長であるこの老人に伝えたのだ。なぜそんな報告を早朝に行ったのかは分からない。だが、会話の流れからそう推理せざるを得まい。その返しで


『パートさん駅伝出るのか』


と話している。この中にアリサを惑わすワードが紛れ込んでいたのだ。

まず平仮名にして考えてみよう。


『ぱあとさんえきでんでるのか』


この中を、


『ぱ あとさんえき でんでるのか』

と分けてみたらどうだろう。


『あとさんえき』


が出てくる。これを漢字変換すると? 『後三駅』という言葉に変わってしまうのだ。そう、この何気ない言葉の中に


『あとさんえき』


が偶然含まれていたのだ。


『ぱあとさんえきでん』



「あとさんえき」


の部分を、


「後三駅」


とアリサは脳内変換してしまい、後四駅から上書きされてしまったのだ。この時のアリサは、駅のことしか考えていない。だから、駅に関連する言葉はスッと頭に入ってしまうのだ。

ぬう? 無理があるのではないか、だとお? 果たしてそうであろうか。いや、正直に白状した方がいいな……実は私はこれを語る前に、そんなことは一番分かっていたのだ。だが思いついてしまって、その時の勢いで没にせず語ってみようと冒険してしまったのだ。そう、どう考えても無理のあるこのネタ。だが、思いついた瞬間、自分は天才なんじゃないかと思ってしまったのだ。


「ぱあとさんえきでん。この中に入っているじゃないか! 私は、凄いことを考えついてしまった! 末恐ろしい天才語り部が爆誕してしまった……」


とな。


だが、時間と共にその熱は次第に冷め、


「無理があるなあ」


という思いもした。これは以前にも語ったと思うが、アイデアの出し方の時に、自分の思いついたネタを凄いと思っても、数日置いてから再び見ることで客観的に見ることができると説明していたが、まさにそれが起こったのだ。

そして冷静になった時に再びそのネタに向き合った結果、


『ぱ あとさんえき でん』


これを音読してもらえば分かるが、どう考えても


「ぱ」


が明らかに邪魔だ。ぱの後に来る


「あとさんえき」


は、実際に何回か言ってみたが、


『とさんえき』


くらいまでしか聞き取れない。これを


「あとさんえき」


とアリサの頭の中に入れるのは無理がある。当然知っていた。

だが、どう反応が来るかは、語らなければ分からないのだ。今現在、異世界転生悪役令嬢モノや追放ざまあ系、異世界恋愛などのジャンルが流行っているご時世に、ミステリーで勝負するとなれば、話の中にこれくらいのインパクトがないと埋もれてしまう可能性が高いのだ。


皆さんは、『時そば』という落語の演目を知っているだろうか。そば屋で、勘定の際に時間を聞いて、支払う金をちょろまかすという内容の話だ。あそこからヒントを得て思いついたのだ。そう、後四駅と喋っているアリサに、何とか後三駅という言葉を聞かせることができないだろうか、ということをな。で、人生で一番知恵を絞って考えた末、ああいうワードになってしまった。私よりももっとうまい人なら更なる上策があるだろうが、頭カチカチの私にそんなことは無理だ。


それに、老人の電話の件も、電車内での通話は禁止なのに出てしまうのは絶対にいけないことだ。このお話を読んでくれているちびっ子たちにも悪影響だろうし、たとえお話だとしても絶対にあってはならないことなのだ。そして、電話の受け方もおかしい。電話の相手は、社長である老人に、


『パートですけど、今日駅伝に出るんですよ』


と言ったことになる。でもそこは


『社長、パートの幕之内ですけど』


と言うはず。となると、


『幕之内さん駅伝出るのか?』


となるはずなのだ。


それにそんなプライベートな話、朝っぱらからするのも変だ。更に更に、駅伝の行われる日程を調べてみたら、10月から3月に行われるんだよ? ということも分かった。そう、現在夏休みに入ったばかり。とても暑い季節なのだ。こんな炎天下の中ではやっていないということすら知らなかったわけだ。そう、私の語ったネタは調べてみたらほぼ間違っていたのだ! だから、細かいことを考えていたら、このネタは成立しなかったのだ。

だが、私の直感を信じ、何が何でもこのネタだけは語り尽くしたいという執念で無理を通したのだ。そう、私は狭いながら、というよりかは、つるはしで強引に掘り進んで道筋を通し、このネタを世に出した。そう、このアイデアを取りあえずは生かすことはできたのだ。皆さんがもしこのネタを閃いた時、どうするだろう。やはり捨ててしまうのだろうか。自分にもその心があれば良かったのかもしれない。だが今回は己を通させていただきたい。

そしてこのネタを通した結果どうなったか。それを語る。このネタは無理があると怒り出し、ここまで大量の言い訳を書き連ねるという行動に辿り着けたのだ。これは文字稼ぎの学術、│稼文字かせもんじ的に言えば大成功なのだ。そう、この


『あとさんえき』


というたった一つのワードを使い、ここまで話を広げられるのだ。やってよかったあ♡故に、どんな小さな、間違った、この世に生み出すに値しないようなネタでも蔑ろにしないで、可能な限り考え抜くべきである! そうすれば新たな自分を発見できるんだもん! ぬ! ここでちょっと自分語りをしても良いだろうか。そうか、皆さんは優しいのだな。ではその優しさに甘えさせていただく。 私は、今でこそ一流の語り部として、今もこの物語を完璧に語れているが、下積み時代はごく一般人だったのだ。そう、誰だって初めてはある。それが皆さんより早いか遅いかの違いなのだ。そんな私が、なぜこの100点とは言えないしょぼめのネタに拘泥するかというと、下積み時代、語り部という職業があることは知っていたが、本格的に目指すことは考えておらず、バイトと語り部の間をフラフラしていた時の話である。

自分は物語を語る時、自宅などで考えても一切ネタが出てこないタイプなのだ。バイト先でレジ打ちしている間に、フッと降りてくることがほとんど。これを客がいない時にメモしておく。もちろん監視カメラの死角を意識してな。そして帰宅時にそのメモを見ながら、書き連ねていくのだ。日々これの繰り返しである。まあ、これで食っていくことでもないわけだし、自分の世界をみなさんにとどけられればそれでいいと思っていたのだ。

そしてある日、フッと降りてきたのがこのネタだ。それもバイト先ではなく、家の語り練習場の中で! 初めての経験だった、職場以外で閃くことは。もしかして、お前は今の職業より、語っていく方が向いている。そう思わせられた出来事だった。そして、自分の語り力を試してみたいと思うようにもなった。日本だけでなく、そう、世界にも通用する語り部になってみようと思ったのもこの時かもしれない。人間、初めて起こったことを大事にする傾向にあるのではないだろうか。自分は物語語りにおける初めての大事件がこれだったというだけの話なのだ。だから、どうしてもこのネタだけは残したかったのだな。

皆さんは、こんな経験はないだろうか。もしかしたら、まだ誰も閃いたことがないようなことを閃いて、


「これ書いたら叩かれるだろうな?」


と、保守的になりそのまま脳みそに置きっぱなしにして、いずれ忘れてしまうという悲しい出来事をな! 一回くらいはあるだろう。また、忘れなかったとしても、誰かに批判されることを恐れ、書いては消し、消しては書き、全く進めない自分に苛立って、自分自身が嫌いになって、スランプに陥る。だがこの時間、色々と勿体ないと思わないだろうか。

であったならば、書いてしまうのが一番いいと感じたのだ。そう思うということは、少なくとも、今、前例のないことを書こうとしている証なのだ! その小さな閃きを自分の手で握りつぶさず、色々足して何とか見れるネタにまで昇華させる。そうやって世に出していくしかないのだ。なにせ誰も閃いたことのないアイデア。それを初めて見る人は、当然その前例のないネタに困惑する可能性の方が高い。だがそれが何だというのだ。恐れる理由などないであろう!! その少数の批判を恐れずに、どんな些細なことでも言葉を足して足して足し続けて、膨らませることができるようになれば、それは今後も皆さんの武器になる。一生ものの宝ではないだろうか。握り潰すのは簡単。そんなことはせずに、とりあえず書いてみる! そうすれば何とかなるものだ。たとえ、勢いで書いただけの物でも、10年後、50年後、もしかしたら300年後には評価されることだってあるのだ! 突飛なアイデアを思いついたが、それを書かずにことなかれ主義を通すのと、書いて叩かれて成長する。人間など大別すればこの2つに1つである。だから、自分を信じるのだ。そうすれば、新しいアイデアがポコポコと生まれてくるはずである。

ここまでの話、肯定してくれる人もいれば色々な考えの人もいる。当然異論は認める。批判は受けて立つ。その際は、あなたの考えうる最高の罵詈雑言をお願いしたい。それこそ自分の喉を折って二度と語れなくなってしまうくらいに辛辣で構わない。私は、どんな反応であれ受け止めるつもりだ。ワクワクすらしている。んで、ボコボコに叩かれたら、本当に血管がぶち切れるくらい怒り狂えば良い。

なぜであるか? 怒りは人を成長させる。経験談だ。何? 怒ったことがないって? そうか……あなたは幸せ者なのだな。でも果たして本当にそうだろうか。あなたの外部へ対するアンテナが鈍っている、もしくは立っていないだけなのではないだろうか。怒りに対するアンテナをしっかり張っていれば、ニュースで政治家の不祥事、芸能人の浮気、警察官の犯罪、何でも怒りに変えられると思う。私は周りの環境が素晴らしかったから、そんな物に頼らなくても毎日勝手に怒らせてくれたがな。羨ましいであるか? ぬ? そうでもないか。

だが、周りに愛想を振りまき続けている人には恐らく一生分からない。怒ることがないから。だがこれはもう間違いない話なので胸を張って語るが、怒りは人の決められた限界を超えるきっかけになる。これは断言してもよい。褒められて伸びる。良い師匠に出会い伸びる。成長に繋がるトリガーは幾つか存在する。その中で最も手軽な起爆剤が怒りなのだ。うまく使えば自分の脳内だけでやる気を引き起こせるのだから、これを使わない手はない。

皆さんにも、こういうことあるのではないだろうか。大好きなあの子、あの人が、陰で自分の悪口を言っていたとか。でも、ここで仕返ししようとあれこれ思案を巡らせるのであれば、三流だ。それは間違った怒りの使い方だ。落ち込むのは二流。そして、怒り狂ってその怒りの勢いに任せ筋トレをする。もしくは勉強して怒りが覚めやらぬうちに資格を取る。これが怒りの使い方として


【一流】


だ。

人は生を受けたのと同時にタイムリミットが設けられている。どんなに裕福でも貧しくとも平等に限りある人生。ゆるりと生きていくのも、焦って生きていくとしても同じ時間。どうせ同じなら、怒りで瞬時に効率良く自分を高め、平坦な芝生が敷いてあるような回り道から少し外れ、デコボコではあるが近道を歩くのもいいのではないだろうか。騙されたと思ってやってみてほしい。とんでもない力が起こるはずだからな。例えば、普段より3キロ重いダンベルを、何も考えずに持つのと、怒りを帯びた状態で持つのではどう変わるか? 想像すればわかるのではないだろうか。実際にやっても必ず違いが分かるはずである。

そして筋トレの末、強くなった時、もしくは資格を取ってよりいい会社に就職できた時、その子、その人に感謝するのだ。それで、


「君、貴方のおかげでここまでなれたんだ。結婚しよう」


って言ったら食い気味で、


「はい喜んで」


と言われれば最高ではないか。これは二流、三流のケースでは絶対に起こりえぬ。一流の怒りに身を任せ成長した時にしか起こりえない出来事なのだ! まあ人間、喜怒哀楽が豊かなら、それだけ魅力的に見えるものである。自分は怒りにフォーカスし話したが、人生を豊かにするには怒ってばかりでは駄目だ。残りの喜哀楽も均等に出していく。話がちょっとばかりそれてしまったようだが気のせいだろうか? まあ、この長さこそ私のアイデンティティーなので許してほしい。では話を戻すぞ。

そして、こういう風には考えられないだろうか。アリサだって人間。時には聞き間違えることもある。「ぱ」だけ聞き取れず、


『後三駅』


だけ聞き取れたということも、確率は0ではない。それに老人がとても心配性で、おっちょこちょいな性格の人なら、こんな時間に何の用事だろうと気になって電話に出てしまったということも考えられるし、うっかり名前を言わずにパートさんと言ってしまうことだって考えられる。そう、個人名を電車内で大声で言ったらプライバシーの侵害にもなるからな。あえて代名詞で対応した方がよいと考えられる。

それにこちらの世界では、駅伝は年中通して行われていることだって考えられるし、それらの偶然が重なり続けて、恐らく一京分の1位の確率でアリサの聞き間違いは起こってしまったのではないだろうか。そんな偶然ありえないか? だが思い出してほしい。このお話はそういう奇跡が度々起こるお話なのだ! 4話で地獄にいたはずのアリサが、もうちゃっかり上界に戻っているという奇跡を乗り越えこの場にいる。そんな奇跡が起こった後にすぐに、それに準ずる奇跡が起こりえるのがこの小説。要するに、私の語ったことは何一つ間違っていなかった


『かも』


知れないのだ。

それに老人は、四駅先と言っているアリサの事情は知る由もない。そして、勘違いに気付かぬまま、一駅先でアリサは降りる。


「ふう、やっと着いた。あれー? 何かほっぺたが臭いなあ? 何だろう?」

目の前にいた老人の唾液が付いていることには全く気づいていない。


「まあいいや。さて、乗り換え乗り換えっと」

歩く。歩く。しかし何もない。


「あれれれ? 乗り換えと言っても、3番線ってどこ? ここ一つしかないわ。変ね。おばさんに聞いてみよっと」

携帯をいじる。すると、駅名はどこ? と聞かれる。


「今△△駅だよ?」


『あら? ○○駅の一つ前じゃない。△△駅ってもう一つ先よ』


「駅名を教えてくれればよかったのに」


「それはそうね、うっかりしてたわ。ごめん。でも、時刻表見る限り、次の電車5時間後じゃない。田舎過ぎるわねえ。これじゃ線路を見失わないように次の駅まで歩いた方が早いかもね』


「やだ」


『子供は電車なんかで横着しないで、少しは歩きなさいよ。線路沿いを歩けば迷うこともないし、後一駅分だから頑張って。おいしいご馳走用意して待っているからね』


「ごちそうか。わかったよー」

アリサは切符を機械に通し、600円分の払い戻しを受け取り駅を出る。そして炎天下の線路沿いの道路を歩く。次の駅までは徒歩での移動になってしまう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今回の話、2019年1話と同時進行で書いていたものです。5話で照代が登場することはすでに決めていたので設定を忘れる前に書いていたんですが改めて見直すと照れ臭いですね。語り部の言っていることが初々しいです。今はこんなことは書けません。でも、この内容をいまさら書き直すのはずるいと感じたのでこのまま出しました。素材のままお届けしています。もちろん4話で地獄に落ちた部分を後付していますが大幅な改変はしていません。こんな感じで今のところ11話分の話があるけれどその一部分を書き進めては5話に戻るみたいなことをやっていてなかなか進みません。まあこの繰り返しでまばらに書いていく内にいつのまにかすべてのピースが同時にはまって一気に11話完成するかもしれないですね。

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