始まりの物語
今日も勇者パーティの『龍の輝き』は、予定していたダンジョンの攻略を終えて、宿屋の食堂で食事をしていました。
食事中に突然勇者アーサーは回復術師であったジュリエッタにこう告げた。
「申し訳ないのだが、ジュリエッタには今日で勇者パーティを抜けて貰う。」と勇者アーサーが自分の方を向いて言いました。
「えーーっと、私に言っているのですか」とジュリエッタが聞き返すと、
「そうだ、ジュリエッタに言っている。」と勇者アーサー
廻りを見渡すと、戦士タニヤ 魔法使いミーアが複雑そうな顔をしています。
それを見て、『あ、私は勇者パーティを抜けることになっているのだ』とすぐに悟りました。
でも思い当たる節は色々とありすぎです。
回復魔術や身体強化しかできない私が、いままで勇者パーティ「龍の輝き」に置いてもらっていた事自体が不思議なくらいでした。
こんな足手まといで回復しかできない人を、今まで手元に置いているだけでもアーサーには感謝しています。
「では、私と勇者様との旅はここまでという事ですね。分かりました。それでは失礼します。」
「まあ待てよ、食事くらいは最後まで付き合えよ。すこし話したいこともあるし。」
「はあ、なにでしょうか?」
「本当は自分はジュリエッタには抜けて欲しくはないんだ。しかし、次の攻略予定の炎龍山脈は非常に危険なドラゴンが生息しているところで、ジュリエッタを守り切れなくなる可能性が高いんだ。
とはいえ回復役がいないと攻略は早々に詰んでしまうのも事実だし、回復薬だって無制限に持てるわけではない。
しかしドラゴン相手では少しでも火力が欲しい。そこでだ、回復魔法と肉弾戦が同時にできるモンクを勇者パーティに入れることにしたんだ。
こっちの事情で今まで付き合ってもらって、こっちの事情で抜けてもらって大変申し訳ないのだが、分かってもらえないだろうか?」
勇者アーサーが皆に慕われるのは、わたしの様な人にも思いやりがあるところなんです。
正直、勇者パーティ『龍の輝き』に入りたい人は多くいます。
しかも、パーティーメンバーを入れ替えというのも良くある話です。
自分自身に、来るべき時が来たのかな?と思うのでした。