疑われるのはしょうがない
そりゃ、疑うだろうな。見ず知らずの人間が喧嘩に割り込んでくるんだ。怖いだろ。
「あぁ…ええと…悪いやつじゃないんだ。ただ、何かあったのかと……」
……余計怪しくなってないよな?大丈夫だよな!?
「……」
なにも話さないのが一番怖いんだが。
「ホントに話だけで良いんだ!嫌なら嫌って言ってもらえれば、すぐに消えるから!な!?」
焦りすぎだろ、俺。キモイって…。
「分かり…ました。話…だけですよ。」
おぉ。これは嬉しい。
「……」
男の方はずっと喋らないな。と思ったとき、女の方から話が泣きながら始まった。
「私達…3人でダンジョンに行ったんです…。」
「そこはC級ダンジョンで、「C級だから」と私が誘いました。そしてこのダンジョン、C級の中でも下の方で、そこまで強くないはずだったんですが…」
何故だろうか、すごく嫌な予感がする。それも物凄くキツいやつが。
「そのダンジョンの最後の部屋に辿り着いて、宝箱を開けたとき、大きな音を立てて通ってきた道が塞がり、宝箱の奥に下へ続いている階段が出現しました。」
「当然戻れる道もないため、行くしかなかったのですが、その奥にあった部屋は、とても気味が悪かったんです。地下とは思えないほど広くて、それでもどこか狭く感じるような…。」
「そして薄暗く、謎の騎士の鎧のようなものをつけたオブジェクトが数えきれないほど。引き返しても意味がないのに、不気味だからと引き返そうとした時、時間経過で発動するトラップのようなものが発動して、騎士のオブジェクトが動き出しました。」
「そしてあの子は「私を置いて先に行け」と。あの子がどうなったのかは、誰にもまだ分かりません。私達はというと、どうやらそのトラップが発動することで先ほどの道が開かれたようで、無事逃げ切れました。」
それは恐ろしい悲劇で、少し想像しただけで胸がはち切れそうな世界が広がっていた。