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成金悪役家の当て馬令嬢は、はやく断罪後を満喫したい  作者: 杓子ねこ
第二章

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第48話.VS邪竜②

「ヴオォォオオ……!! グオォオ!!!」

 

 邪竜は雄叫びをあげ、身を震わせる。

 太く大地を踏みしめる四つ足に、ゴツゴツとした鱗だらけの胴。背にはなけなしといった小さな翼が一対。

 ようやく見えた全身は、首の長いトカゲのような姿だ。

 

 のそりと足をあげ、巨大な体で城壁も庭園の木々も押し潰しながら、邪竜がこちらへ向かってくる。

 

「動きは鈍い――でも、すさまじい魔力を感じます」

 

 邪竜を見据えたままシュゼットはアルフォンスを指さした。

 

「〝身体強化ボディバフ最大マックス〟」

 

 光がアルフォンスを包み、吸い込まれるように消える。

 ついでルクレシアを、最後に自分も指さし、シュゼットは同じ魔法を唱えた。

 

「これでしばらくはレイさんみたいな動きができます。〝魔法強化マジックバフ〟もかけられますが魔力の消費が激しくなるので、アルフォンス様のタイミングを見計らってそのときにかけますね」

「わかった」

 

 もうツッコまない、と決めたルクレシアは、『レイさんみたいな動き』については無視することにした。

 身体強化をMAXかけてやっと追いつける動きってなによ、とは考えてはいけない。

 

「わたしが引きつけますから、アルフォンス様はまわり込んで。まずは小手調べと弱点さがしです。では――」

 

 シュゼットがぐっと腰を落とす。

 次の瞬間、ダンッと踏みしめの音も勇ましく、亜麻色の髪をなびかせて、シュゼットは邪竜の鼻先まで跳んだ。

 

「ヴォ……」

 

 魔力が急接近したのを感じたのだろう、邪竜が警戒の声を発する。だが三つもある目をもってしても、シュゼットの動きはとらえられない。

 それほどまでに、早すぎた。

 

 バキイイイン!!!

 

 金属を打ち破るような音が響き、邪竜の頭がぐらつく。

 目を凝らして見たシュゼットの姿は、大きく足を振りあげた格好だった。足が白く光っているのは、聖属性付与のまわし蹴りを食らわせたらしい。

 

「ガ……!」

 

 左右に頭をふらつかせつつ、邪竜はシュゼットを睨んだ。唸りをあげて牙をむく――が、牙が咬むのは虚空のみ。

 がら空きになった頭部に、体のばねを使い横から縦へと回転を変化させたシュゼットの踵が落ちた。

 

 ズガアアアン! と音を立てて邪竜の頭は庭園に墜落する。石畳の小径が衝撃で吹き飛ぶ。

 

 その頭部めがけて、走り込んできたアルフォンスが剣を振り抜いた。

 

「おおおおッッ!!」

 

 聖剣の刃が白く発光する。邪竜の鱗とぶつかり、光はさらに強くなった。

 

 黒い血飛沫が飛び、空気中に蒸発するように霧散していく。光のもとに晒された闇の魔力が浄化され、消滅したのだ。

 

「……」

 

 シュゼットを餌にとか、邪竜を引きつけるとか、そんな話をしていたのはなんだったのか。

 思いっきりダウンを狙いにいっている。結果的にシュゼットが作った隙をアルフォンスがついた形で、当初の予定どおりと言えばそうだけれども、聖女が前衛になるとこんなことになるのか。

 

「ギャアアアアア!!!!」

 

 怒りと苦しみの声をあげて邪竜がのたうった。

 

 手足をばたつかせ、アルフォンスを咬み砕こうと首をのばす。だが怒りのままの、隙だらけの攻撃に動じるアルフォンスではない。

 邪竜の牙を避けざま、ふたたび剣を一閃させる。

 

「……!?」

 

 しかし今度アルフォンスの表情に浮かんだのは、驚き。

 

 剣は先ほどのように鱗を切り裂かなかった。ギャリギャリと金属を削るような音がして火花が散る。

 

「……剣が通らなくなった……?」

 

 アルフォンスの呟きが聞こえた。

 距離が開いたためルクレシアの耳にかろうじて届く程度だが、なんと言っているのかはわかる。

 

「こっちよ!」

「ガアアアアア!!!!」

 

 目の前に現れたシュゼットに、邪竜が怒りの絶叫をあげて突進する。

 臆せず引きつけてかわし、今度は聖属性のこぶしを食らわせるシュゼット。すぐにアルフォンスが斬り込む。

 

 だが、やはり結果は同じ。

 シュゼットの物理攻撃で体勢は崩す。しかし邪竜の見た目は変わらないし、聖剣は通らない。

 

「弱点……ありそうですかね」

「君の言うとおり動きが鈍いところだろうが、防御が硬いのでは……」

「急所を狙いますか」

 

 語りあうふたりの声に、ルクレシアは眉根を寄せた。

 

(攻撃が効かなくなった? 見切り?)

 

 最初の攻撃はたしかに邪竜の魔力を奪った。わかりやすいエフェクトが展開されていた。なのに二撃目から剣が通らない。

 シュゼットの物理攻撃にもふらつきが少なくなり、体勢を立て直すまでの時間が短くなっている。

 

 アルフォンスもシュゼットも攻撃の手をゆるめることなく果敢に戦うが、このままでは邪竜が押し返してくるだろう。

 

「ん……?」

 

 なにかを見た気がしてルクレシアは目を凝らした。

 攻撃の際に、シュゼットの体やアルフォンスの聖剣が光る。同時に、邪竜の体表も(・・・・・・)光っている(・・・・・)ような気がする。

 白い光は、聖属性魔法発動の証。

 

(聖属性攻撃に聖属性防御をあてることで、属性特攻を相殺している?)

 

 そんなことが邪竜にできるのだろうか。

 しかしそう考えれば納得はできる。最初はどういった攻撃なのかわからなかったから、だから一撃目は通った――。

 

 そう考えかけ、ルクレシアは首を振った。

 

(いえ違うわ。アルフォンス様の聖剣は通った。でもシュゼットの攻撃は最初から防がれていたのではなくて?)

 

 邪竜の〝目〟ではついていけない速さでシュゼットは攻撃を叩き込んだ。

 物理とはいえ、シュゼットの攻撃だって特効のある聖属性攻撃なのだ。ダメージのぶん邪竜の魔力を奪うはずだ。しかしエフェクトは聖剣での攻撃にしか起きなかった。二撃目からは聖剣も防がれた。

 

 邪竜が一度食らった攻撃に対応できるとしても、最初からシュゼットの物理攻撃に対応していたのは――。

 

 ルクレシアはハッと息を呑んだ。

 

「ウィルフォード……!!」

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