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44話

「そう、アナタはたしかに言いました。古道具屋の人からは説明は受けていないと、でしたら、どなたから説明を受けましたの? それから――――」


 メリアがゆっくりとカインに詰め寄っていく。


「何故、アンデッドが召喚されたと断言できますの?」

「そ、それは――――」と口ごもりながら後ずさりするカイン。

「何故かは分からないが、その場に出現したというのであれば、まだ、納得できますわ。現に出現していますからね。それがどうして召喚されたものだと分かるのか、それはアナタが、あのアンデッドは召喚されたものだと知っているからに他ならないですわよね?」

「いや、ちがう――――」


 カインは首を横に振りながら必死に否定するが、メリアは全く聞く耳を持っていない。


「あと、わたしたちの前でブラック級に至る男だなどとほざいていた人間が、ランクとかいうのはあまり気にしていないだなんてちょっと、無理がありませんこと?」


 もはや、その声色に快活な印象のメリアの姿はなかった。

空気が凍り付くような冷たさがあるだけだった。


「ちがうんだ――――」


なおも否定するカインを相手に、静かに、そして厳かに、メリアは最後の言葉を紡いだ。


「さぁ、白状なさい、アナタがこのアンデッド連続出現事件の事件の犯人なのでしょう……?」

「ち、違うんだ! 僕じゃない! 僕はただ指示を聞いていただけで――――」


――――その時だった。


「グアアアア!!」と悍ましい雄叫びを上げながら何かが突如、背後から襲い掛かってきた。

これに一早く気付いたワイトは、振り向きざま、その何かを地面へと組み伏せた。


「こいつはゾンビだな……」

「ということは……」


 ワイトとリリーが口々に言った。

 憐れむような視線がカインに注がれる中、ワイトは続けざまに言った。


「まさか……追い詰められたからアンデッドを即席召喚して、背後から襲おうと……? いくらなんでも往生際悪すぎないか?」


 呆れている様子のワイトだが、カインからは意外な答えが返ってきた。


「違うんだ! 僕じゃない! そんな召喚術なんて僕は使えないし、そもそも今日はオフのはずなのに……!」

「オフ……? その話を詳しく聞かせてもらってもいいかしら?」

その場にへたり込んだカインは、昔の話を始めた。



 カインは、幼少期いじめられていた。

王都内にて繰り広げられる終わりの無いいじめに終止符を打ってくれたのは、一人の若い冒険者だった。

その冒険者は言った。


「強くなれよ、ボウズ。あんなもの大したタマではないからな」


 少年は幸運なことにこれ以降、いじめられることはなくなった。

 この時、ひとつの夢が出来た。

弱い者を助けられるようなヒーローになるという純粋な夢だ。

その夢を抱いたまま、少年はやがて、青年へと成長し、自身も冒険者となった。


 冒険者ギルドにて登録を済ませて「これで僕も!」と希望に気持ちを高ぶらせている。

だが、1週間も経たないうちに現実に打ちのめされることになる。


 戦闘センスが無いばかり、勇気もないため、モンスターと戦う覚悟が無いのだ。


 薬草採取などの比較的安全な依頼も、モンスターと出くわした時のことを考えると怖くて依頼を受けられない。

 自分には才能がないなどと腐っているところに、あるローブ姿の男に話しかけられた。

 そこで簡単な仕事を紹介された。


それは王都内に召喚されるアンデッドを倒してほしいというものだった。

戦闘経験がないため、断ろうとするが、剣を振るだけで良いからと男から言われ、物は試しにと言わんばかりに剣を渡され、続けてマップを渡された。


「これは……?」とカインが聞くと、このマップにアンデッドがいつ出現するのかが記されていると回答があった。

カインがマップを見ると、そこには王都の地図があり、所々に黒い点があり、そこには日付と時刻が書かれてあった。

再び、カインが顔を上げるとそこにはもう男の姿は無かった。


 翌日、明け方にマップに記された場所に行くと、アンデッドが既に湧いていた。

恐怖を感じるが、あの男の言う通り、剣を振るうとそこには何もいなくなっていた。

その光景に驚いていていると、「簡単なお仕事でしょう?」とどこからともなく声が聞こえた。

いつの間にかローブの男がいた。


「お金も多少ばかり用意しますし、王都内で起こった出来事ですから、ランクだって上がりますし一石二鳥ですよね。ただ今回はちょっと目撃者がいないから申請が通らないでしょう。やるなら、目撃者が増えるのを見越してからやったほうが効率が良いでしょう。ちなみにこのアンデッド、人に危害を加えようとはするものの、実際に危害は加えないようにプログラムされておりますので」


 その時に、お仕事デビューと称して新品同然の鎧もプレゼントされた。

何の鉱石で出来ているのか不明だが、見た目よりもずっと軽い。

白銀に輝きを放つ光沢から上等な代物だということは分かった。



それから、事前に共有されたマップで出現するアンデッドの元へと向かい、現れたら剣を振るだけの簡単な仕事が始まった――――

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