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40話

 その後、「加勢に来たぜー!」とワイトが戻ってきたが、既に戦闘が終了しているのを見て一言。

「早っ!!!!」

「多少なりとも、警戒はしていたのですよ。合体するタイプのものもいるので、ですが結局――――」


 リリーはその時、違和感の正体に気付いた。

 このアンデッドからは黒い塵が出ていなかったからだ。

経験上、ラーヴァテインによって燃やされたアンデッドからは黒い塵が必ず出ていた。

それが今回は出ていないことに疑問を感じたリリーはワイトに尋ねた。


「ワイト、一つ聞いてもいいですか?」

「どした?」

「アンデッドを滅した際に生まれる黒い塵は必ず出るものなのですか?」

「うーん、必ずというか、そんなものは出ないはずだ。通常は滅されたアンデッドは何も残さないからな」

「出ないのですか!? いや……これは嘘ですね? わたしを騙そうとしていますね?」

「どっこい、嘘じゃないんだなぁ。まあ、嘘だと思うのなら、他の冒険者に聞いてみるといい」

「他の冒険者……」


 リリーの頭の中に真っ先に浮かんだのは、メリアだった。

メリアも同系統の能力であるため、アンデッドに関しては詳しいはず。

調べ物をすると言っていたため、今から王立図書館に行けば……と考えたが、止めにした。


 あの場所はさながら小さな迷宮であり、探すのに骨が折れる。

それよりも、そのためだけにメリアの邪魔をするのは気が引けた。

じゃあ、どうするか、さらに他の冒険者に聞くか、王立図書館で自力で探すか……。

リリーが迷っていると、一人の青年が近付いて来た。


「奇遇だね。リリー・スカーレット。浮かない顔をして……何かあったのかい?」


 声のする方を見るとカインがこちらに近付いて来ていた。

彼は王都に出現しているアンデッドを一瞬で滅すことの出来る力を有している。

不足は無いだろう。


「カインさん……。一つ質問いいですか?」


リリーの二つの双眸がカインを捉える。


「ななな、なんだい?」


カインは若干、挙動不審な態度を見せるが、気にせず続けざまに質問をした。


「アンデッドが滅された時に黒い塵というものは出ないのでしょうか?」

「なんだ、そんなことか……。出ないよ、そんなもの。僕は聞いたことがない」

「分かりました。ありがとうございます……」

「な? 言ったろ?」


鉄兜に隠れて分からないが、ワイトの得意げな表情が目に浮かぶ。


「勝ち誇った顔をしないでくださいよ」

「あ、表情筋ないので(笑)」

「そうでした……」


 顔の肉なんて無く、ただの頭蓋骨なのだから、表情なんて作れるわけがない。

謎の敗北感を味わっているリリーは俯きながら拳を強く握りしめている。

そこで、二人の会話が一段落ついたと思ったカインが周りを見回して話を切り出す。


「そういえば、なんだか人が全くいないね。何かあったのかい?」

「いえ、アンデッドが湧いたので、今しがた滅したのですが……あまりにも手応えがなくてですね」

「えぇ!? ここでアンデッドが!?」


 辺りにカインの大声が響き渡る。

普通の声量が小さめであるため、いきなり大声を出されてしまい、リリーは思わず耳を抑えた。

それを見て平謝りをするカインと気にすることもなく話を続けるリリー。


「はい……その通りですが……そこまで驚くことでしょうか?」

「いや、その、僕はね、アンデッドが事前にどこで湧くか分かるスキル……を有しているんだけどね、ここにはその予兆が出ていなかったからさ、ハハハ……」


 カインはあちらこちらへと視線を泳がせながら事情を説明し、終いには「まあ、何はともあれさすが、赤い聖域だ。お見事……」と言い残して、足早にその場を去ってしまった。


 その後ろ姿を訝し気に見送るワイト。


 話を聞いた時点でカインに対する妙な感じが拭えなかったが、それらは実際に会ってみないと分からない。

 ちょうど、タイミング良く鉢合わせたため、リリーとの会話の様子を見ていたが、思っていたよりも悪人というわけではなさそうだ。

だが、アンデッドを一撃で葬る実力を有している割に、その仕草にはどうも自身の無さが垣間見える。

 口こそ余裕のある強者のような雰囲気を醸し出しているが、所々でボロが出てしまっているあたり、どうしても怪しさが勝ってしまう。

実力とは不相応。

一流冒険者のガワだけを真似したただの人間のような印象を受けた。

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