6話
「よし!確かに受け取った!」
俺は金貨の入った麻袋をエドに手渡した。
「けど、これは嬢ちゃんが使ってくれ!」
と麻袋の中から金貨5枚を取り出して俺に返した。
「えっ、でも…」
「元々は嬢ちゃんの金だろ?それに店に並べるモン買ったり、装飾にも金がかかるだろ?」
「エドォ…あんたって人は…」
「カカカッ!まぁなんだ…出店祝いみたいなもんだ!」
そう言ってエドは俺の頭をガシガシと撫でる。
「俺ァ…しばらく旅に出ようと思ってる。」
「旅か…いいね、うん、良いと思うよ!」
「カカカッ!俺が帰って来たらよ…どんな店にしたいかまた聞いても良いか?嬢ちゃん。」
「うん、きっと答えを出すよ!」
「カカカッ!良い返事だ!」
エドはそう言うとその巨体の2倍はある荷物を背負って立ち上がった。
「よし!それじゃあ俺ァそろそろ行くぜ…」
「うん、ありがとうエド!必ず道具屋成功させるからな!また会おうな!」
ゆっくりと傾いていく夕日と共に去るエドの後ろ姿を見送り俺は道具屋の中へと帰った。
「よし…それじゃあどうぐやタマキをどんな店にするか考えるか…」
俺は自分の3倍はあるベッドに寝転びながら経営スタイルを考える。
「とりあえず明日は他の店の調査をするとして…どんなアイテムが売れるのかも調べないとな…」
「に、してもこのベッド…臭いな…」
(まぁ、使ってたのがおっさんだしな…)
そんな事を考えながらも、昼間の疲労には抗えずじわじわと睡魔の手に落ちていく。
「う…ん…芳香剤は絶対買わないと…なぁ…」
小鳥の囀りと突き抜ける日差しを感じて、俺は目覚めた。
「朝かぁ…ウゥーン…結局何もできずに寝てしまった…」
「よし!とりあえず風呂だ風呂!」
この道具屋を買った現状の最大のメリット、それは風呂がある事だ。
「今までずっと野宿だったからな…朝から熱いお湯に浸かれるなんて久々だ…!」
俺は浴槽に水を溜め、お湯を沸かす準備を始めた。
スキル「パイロ」発動、スキル「ブリーズ」発動。
「風呂、楽しみだなぁ…」
と俺は胸を躍らせた。
そしてしばし時間がながれて浴槽から湯気が立ち込めた。
「ぐぁぁぁあっ…、これこれぇ…」
俺は恍惚のあまり半開きになった口から涎が垂れる。
「あぅ…いかんいかん…トぶとこだった…」
気合いを入れる為、自分の顔をピシャリと叩いた。
「風呂から上がったら準備して…他の店に偵察に…」
「でも今はもうちょっとだけゆっくりしよう…」
そうこうして、俺が出発する時は昼前になっていた。