鳥の蒼空
『とりのそら』
鳥が鳴いている
おしゃべりをしているの
-集まって!ここに水があるよ♪-
そう話してる
私は狐
前は鳥を捕る側だった
今は神使
人も鳥も見守る側ね
鳥が鳴いている
蒼空を自由に飛んでいる
人が笑顔でそれを見ながら通り過ぎる
人も鳥も生きている
わたしわそれがうれしいの
〈稲荷狐 絢葉の詩より〉
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「こんにちは、狐さん。
今日はちょっと暑い日だね」
そう声をかけてみた。
ちょっと嬉しそうに鳥を眺めている彼女を見つけて、
そこを通りながら声をかけてみたのだった。
「…こんにちわ、
主さん、お久しぶりです」
稲荷狐が固い返事を返してくる。
仕方ない。
同居人の友人だと、つい最近、紹介をされたばかりだ。
「鳥を見ていたの?」
「ええ…。
会話を聞いていたのよ」
「ああ、鳥って喋れるんだってね(笑)」
自分はまだ聞き取れない。
「聞こうとしないで…。
耳を澄まして…、感じてみて。出来るはずよ」
真剣な眼で見つめられる。
じっと耳を澄ます。
……不意に鳴き声が会話に変わる。
早口で、かん高く繰り返している。
ちょっとけたたましく感じられる(苦笑)
「ああ、聞こえる。
鳥って早口なんだね。同じことを繰り返し喋ってる」
「うん、そう!
おしゃべりなの♪」
わかってもらえたことが嬉しいのかな?
固さが取れてきてる。
「鳥、好きなの?」
そうつぶやいてみる。
「ええ、好きというか
昔、鳥になりたかったの。蒼空を自由に飛びたかったから…」
そんな答えが貰えるとは思ってもいなかった。
だから、会話を続けた。
「俺もそう思ったことあるよ。
鳥みたいに蒼空を飛べたらなってね」
地面に這いつくばって生きている感じが、あの頃とても嫌だった。
だから鳥に憧れたんだ。
「良いよな…。鳥と蒼空って…」
「……そうなんだ。
わたしも好きよ。鳥と蒼空って…」
稲荷狐のすこし嬉しそうな様子、その横顔を見て、
すこし鼓動が速くなる。
梅雨が明けたばかりの、
初夏に差し掛かろうとする、
すこしだけ汗ばむ陽気の日のことだった。
鳥の物語。
稲荷狐との初めの頃の出来事。
〈おわり〉
-蛇足ですが-
この番組を見て、突然思った物語と詩でした(^ω^)
それでは!o(^o^)o