#040 とりあえず帰る。
資料館を後にしたタケルとポポ。日も暮れたことなのでリンゴが予めとっていたホテルへと向かった。
そこには横に広めの建物でありながらおよそ20階ほどの高さを持っていた。
やはりでかい、迷うのではないかと少し気後れした二人だったが、リンゴの的確なガイドで迷うことなくたどり着くことができた。
部屋につくとそこにはすでにカナとミュー、リンゴもいた。カナの周りにはありふれんばかりの袋が置いてあり、ミューはお土産を堪能しているところだった。
「ていうかここ一部屋だけだったのか……」
『すまんな、ここしか空いてなかった。それでも当日だとラッキーなほうだけどな。3番目に有名なホテルだし』
「あぁタケル、帰ったの。ちょっと散らかっちゃってるけどごめんねー」
(や、ベッド丸々2つ占有しとるし……)
と思いながらも近くの椅子に座るタケル。その近くにある液晶画面に目をやるとそこには水樹が番組らしきものに出演していた。なにやらニュースバラエティーの番組っぽいと見つめていると、
最近の不可解な事件、エネルギーの不自然な増加……今までタケル達が経験してきた魔王の件と7つの惑星が一つの話題に内包されていた。
(え、なんか聞いたことあるものばっかなんだが、もしかしてこれ後々とんでもないことに巻き込まれたりするのか……?)
「あ、タケル。お風呂もう入ったから使っていいわよー」
カナの一言にはっとしたタケルはとりあえずお風呂に入ることにした。
「……ポポも一緒に入ってるのは聞いてないが」
「悪いですか」
「……別に」
淡々とした時間が過ぎていく。出会ってからある程度の時間が経ったがいまだに他人のような素振りを見せる二人。世間話をしようにも記憶を失っているせいかうまくいかない。ならば記憶を失った後の話題ならとタケルは口を開く。
「……そのなんだ。ここでの暮らしは。」
「ここってホテルのことですか」
「や、あっちのほう」
「あぁ、住み始めたところですか。いいところだと思いますよ。近所のパンの人……ノストさんと世間話できるくらいには」
「ほう。どんなことを話したんだ」
「そうですね。最近新しいパンを開発してるらしいですよ。うさ耳のパンで中にイチゴジャムを入れる案らしいです。ココエさんはインパクトがなさすぎるーって反対してましたけど」
ポポが笑顔を見せながら世間話をする様子につられ、笑みがこぼれるタケル。そういえばこうやって話す機会がなかったなとすこし反省するタケル。ポポがある程度話した後、今度はこう切り出す。
「タケルさんのほうはどうなんですか?」
「あ、いや……すまんこれといった話がなくて、そうだな……俺がいた地球のことについて話そうか?」
「おお!それ気になってます!聞かせてください!」
予想以上に食いつくポポに驚いたタケルだが、快く地球の話を始めた。
話が終わったころにはのぼせる一歩手前でカナがこっぴどく二人に怒っていた。
*
「なるほど、自分たちのブランドねぇ。まぁ最近観光地と間違える者も増えたし、一考の価値はあるねぇ」
セントラルから帰ってきたタケル一行。そのまま宴会が始まっていた頃。
タケルは大家と町長で話をしていた。因みにタケルと町長はまともに話すのは初めてである。
「確かどっかのお嬢ちゃんがホワイトと名付けてくれたんだったかな?なら発想の転換でプレーンなうちわとかプレーンなパンとかどうかの。何色にも染まる意味で」
「まぁ、いいアイデアじゃないですか」
と業務的な話しかできずうまく会話が弾まなかった。すると、向こうから呼び声が聞こえた。
『みなさーん。楽しんでますかー』
ミューはタケルの家に訪問してからの短期間でかなり表情豊かになっていた。愛情ふるまう笑顔はたとえロボットでも伝わっているようだ。
「あぁ、ミューかその様子だとかなり学びを得られたんじゃないか」
『はい!みなさんいい人です!宴会は楽しいです!』
そうかそうかとタケルが頷くとミューは改めて頭を下げた。
『今回、いえ私の暴走をとめてくださった件も含めありがとうございました。本来はこちらで対処するつもりだったんですが……まだまだ未熟ものですね』
「いや、大丈夫だ。また何かあったら呼んでくれたらいい。そうしなくても大家が察しそうな気がするがな」
「なんじゃ、こっち見て。まぁそうなるだろうがな。お前さんの独断で依頼は受けられないからな」
「おい、初めて聞いたぞそれ」
タケルのツコッミにつられ笑うミュー。そして周りもつられて笑った。もはやミューは人間と同じように宴会を楽しんでいた。
*
『ミュー。楽しんでいるな。俺の目指していたものをもう手にしていたかもな』
机の上で黄昏れていたリンゴ。その横にポポが座った。
「どうしたんですか。もしかしてミューさんに一目惚れしたんですか」
『……いや。嫉妬かな。羨ましい』
するとリンゴの赤い皮からプシューと煙を出した。ギョッと驚くポポが目にしたのは
「まぁこれはタケルさんには内緒だぜ?」『こちらお手伝いさんです』
小さな小人。彼がその操縦人だった秘密が宴の最後の記録だった。




