#036 翌日の訪問者
静かな朝。小鳥のさえずりとともにタケルは涼しい風を浴びながら散歩していた。
(のどかな朝だな……まるで地球にいたことを思い出すな)
思えば、魔王やロボットなど出会ったことがない者と相対して相当疲労がたまっていた。ようやく休息が取れえることに安心していた。
程よく散歩して戻ってきたころ。ちょうど朝食ができていた。そこには料理されていた鮭と味噌汁がご飯とともに置かれていた。
「これは……もしかして、カナが急に料理魂が目覚めたのか」
「違うわ、リンゴのおかげよ」
カナとポポはすでに食事をとる最中だった。おいしそうに食べている。
『お、お帰り相棒。早くしないと冷めるぜ』
タケルは唆されるように朝食をとる。味は実家を思い出す味。鮭のジューシーな油が自然とご飯が進ませる。
「おいしい……これが機械の力……」
『お前さんのとこはそこまで技術が進んでなさそうだな』
タケルは否定はできなかった。正直表情にも出ていると自分も感じていた。
*
朝食を終えたところインターホンが鳴った。タケルは腰を上げ、玄関のドアを開けるとそこには以前の女性ロボットのミューがいた。
『ご無沙汰しておりますタケルさん』
「いや一週間も経たずに再開するのはご無沙汰とは言えないと思うが」
『いえ、私にとって一時間ほど会わないのはご無沙汰ぐらいの感覚だと思います』
あ、はい。とタケルは反射的にうなずく。それよりも何の用でと尋ねたところ、ミューはここはおいしいもので有名と聞いたから食事会を開いてほしいとのことだった。すでに大家と出会い、承諾を得ていた。
(もしかして、宴会って恒例の行事なのか……!?)
ーーというわけでタケルが住む町の試食会が始まった。タケルが題名を考えたところ、あることに気がつき、咄嗟にアッと大声を出してしまった。
「どうしたんですかタケルさん急に!?」
「……ここの町の名前ナンダッケ」
そういえばとポポとカナが納得した。聞いた覚えがなかった。
ならば聞いてみるのみと意気込んで町の人々に聞き込みをしたがーー
「町の名前?そういえばなんだっけなぁ」
「あそこの湖の名はわかるが、町の名前なんてあったか?」
「はて……なんてよんだのかのぉ」
……悲惨な結果だった。誰一人この町の名前を知らなかったようだ。家に戻ってすぐポポが溜息と共にツッコミが出てしまうほどに衝撃的な事実だった。
「はぁーーー?ここの人達は今までどうやって暮らしたんですかぁーー↘︎」
「どうした?暗いまま座りこんで、金欠でもあるまいし明かりぐらいつけたらどうじゃ」
顔を出したのは大家。すかさずポポが聞き込む。
「大家さん!ここの町の名前は!?」「知らん」
即答。うつ伏せになるポポ。どうやらこの町の住民は皆名前なんて付けずとも不自由なく暮らしてきたようだった。ある程度の状況を理解したミューはならばと提案する
『では私がこの町の名前をつけてもよろしいでしょうか』
ミューにとって自分で考え、名づけることで何かを残したい様子だった。しかし、タケルは大家がよそ者から名づけるなど図々しいわと言われるのではと不安に思ったが、返答は即答であった。
「いいよ」
「即答!?一生残る町の名を!?」
「皆も町の名前なんてあまり興味なかったし、それらしい名前も思い浮かばなかったからな。でお嬢さんならこの町になんて名をつける?」
大家の問いにミューは少し考え、あっという一声から町の名を告げた。
『”ホワイト”なんてどうでしょうか。私の星には色が名づけられましたが、この色だけなかったのです。それで一通りこの町の様子をみたところ皆さん白色のように純粋でそれでも笑顔がキラキラしていました。なのでホワイト。これからこの町はどの色にでもなれるように魅力が無限大にあふれると思うのです』
ミューの提案に大家は少し考え、返答する。
「名は単純――だが納得できる理由だ。それでいいじゃろ。町長に行ってこようかの」
『ホントですか!ありがとうございます!』
「よかったなミュー。第一歩が踏み出せたな」
はい!と笑顔で返事するミュー。初めは黒のような暗闇から白い光が差す道への一歩が踏み出せたようだった。
…………
「あれ、試食会はどこいったんですか?」
続く。




