#020 宴って思ったよりいいですね
一通りの設置を終えタケル達は次の工程、料理を試みたが……
「今まで料理してこなかったことが枷になりました」
「どうするんですか。大家さんにデザートよろっていわれましたけど」
「魔法で何とかできればねぇ……」
とりあえずカナが買ってきたものはBBQ用の肉と野菜。そして小麦粉と牛乳だった。
「ホットケーキでも作るのか?にしては色々足りないが」
「ふふふ。私ね、なによりも紋章魔法専攻なの、つまり小麦粉と牛乳を媒体としてホットケーキを創成する計画よ!」
「魔法って調理器具だったんですか!?」
「うーんどちらかというと紋章が調理器具かな?とりあえず、私に任せて!」
するとカナは小麦粉と牛乳に向けて紋章をなぞるように描き出した。指に連れられるように空間に線が現れ、やがて紋章へと変わっていく。
「おぉ、これが紋章魔法」
そしてカナは深呼吸をし、呪文を唱えた。紋章が輝き小麦粉と牛乳が光とともに変形する。そのままホットケーキに変貌を遂げた。
「できたわ!味見してみて!」
「見た目はホットケーキだが……あ、味がしない。粉をそのまま食べてるかのようだ」
「うーん、やはり研究が不足していたかー」
いろいろ考えた結果、デザートは町で買ってくることになった。
*
諸々の支度を終え、ようやく宴の準備が整った。町の住民たちも集まったころ、いかにもな一行が姿を現した。
「どうも、お邪魔するよ」
「魔王様。お待ちしておりました」
「魔王は言いづらいだろう。ジグルドでよい」
「あ、はい。ジグルドさん」
「ここにくるのも久々だな。あの時をもう一度楽しめるとは。そなたらも楽しむとよい」
そういいつつ魔王はテーブルへと向かった。そして大家がマイクをもち宴の参加者の注目が集まる。
「えーみなさん集まったようですので始めるとしますかの。これをやるのは何日ぶりか忘れたのじゃがまあ数年ぐらいかの。じゃあ楽しんでくだされカンパーイ」
大家の適当な合図に遅れてカンパーイと声を上げる参加者たち。宴は順調に盛り上がっていた。
タケルにとってこの町の宴は思っていたのとちょっと違っていた。豪華な食事に芸をやるのではなく、ただ話をして交流を深めていくものだった。それが魔王が子供と親父と会話を交わすといった老若男女問わず、身分も問わず交流する様は異様でありながらもどこか求めていた世界なではないのかと感慨にふけっていた。
「どうした、そんなところで黄昏おって。遠くから景色を楽しみたい派か?」
タケルに話しかけたのはシグルドだった。一通り話を済ませながらも落ち着いた様子でタケルの隣に座った。
「この世界はわからないことだらけなんです。知らない土地なのに言語が伝わる。種族が違うのに一緒のように感じる。そしてなによりもここが懐かしく、心地よい世界だと直感するんです。でも理由を探そうとしてもよくわからなくて……。わからなくて……」
タケルは詰まった言葉を飲むようにうつむく。それほど説明ができない感覚に沈黙するしかなかった。
「慌てずとも良い。見知らぬ経験が多いほど時間を要する。ゆっくり確実に整理してはどうだろうか」
「そうです…ね。考えればそれしかないですよね。ありがとうございます。」
2人は宴会が終わるまで沈む夕日と月明かりを浴びながら談話を続けていった。




