#017 あんなもん、ぶっ壊してやらぁ!!!
「ど、どうするんですかこれ!?」
圧倒的な魔王のオーラに困惑するポポ。タケルは震える足を落ち着かせるように対策を考える。
(落ち着け……周りの従者は魔王の怒りを収めようとしている……この様子だと何か原因があるはず……)
周りの状況を見てみると、天井に大きな穴が開いてその上に結晶が禍々しいオーラを発しながら浮いているのが見えた。結晶からは赤紫色の雲を発していた。
「あれじゃないか?明らかに怪しいが……」
「あんな小さいのが結晶だなんてよく見えるっすねー。でも遠すぎておれっちの銃じゃ届きそうにないっすよ~」
スライドが嘆く。それもそのはずその結晶は天に位置するようにあったのだ。するとカオスがある提案を思いついた。
「前のでけえクジラのように剣を思いっきり投げる作戦はどうだ?」
「この位置だとどうだろうか……とりあえずやってみてくれ」
タケルがカオスに剣を渡し、すぐさま勢いよく結晶に向けて投げつけた。だが、届く気配がなく、剣は下に向かって落ちていった。
「うーむ。力不足か……まだまだ修行が足りんのう……」
「まぁ、剣は俺のもとに戻るから大丈夫だとして……これは皆の力を合わせないと届かないな」
そして、タケル一行ははともに来てくれたメイドと作戦会議を行った。だが、従者が魔王を抑えている時間を考慮し、手短に済ませるようにしなければならない。
「ぱっと思いついたのはポポを弓の弦になってカオスがそれをバネに飛び、そこからカオスが剣を飛ばす作戦だ」
「タケルさんって相変わらず僕の扱いひどいですね……」
「とはいえポポを引っ張るのは誰になるの?カオスさん以外に力強く引っ張る方法がなさそうだけど」
カナの問にタケルは答える。
「魔王をおびき寄せてポポを引っ張ってもらう」
「というわけで俺とカナ、スライド、そしてメイドさん。お願い出来ないでしょうか」
「魔王を私たちが誘導する役をやるのですね。承知いたしました」
やるしかない。と意気込むタケル。少々現実味がわかないが、今までの冒険から有効な作戦だと考え付いた。
そして、作戦がいよいよ実行する。
*
メイドが魔王の家来にタケルたちの作戦を伝えた直後、すぐさま撤退を開始した。そして、カナの魔法とスライドの銃撃が魔王に屋根の上へとおびき寄せる。
「屋根に上ると一番高いところが二つある!カオス!そこにポポをひっかけて弦を作ってくれ!剣も頼む!」
「あそこと……あそこだな!承知した!」「が、頑張ります!」
カオスはポポと剣をもち、片方の城の高いところにポポをひっかける。そして、圧倒的脚力でもう片方までポポを引っ張った。ポポはスライムのようなゴムで必死に耐える。
その後、カオスはポポの中央に移動し、剣をポポの上に引っ掛けたままぶら下がった。
「よし、下準備はよし、後は……カナ!スライド!カオスのところに誘導してくれ!」
「わかったわ!」「了解っす!」
カナとスライドの誘導によって、魔王は難無くカオスのいるところに目を付けた。どうやら対象を手当たり次第に突進するぐらい理性が失われているようだった。
『グオオオオォォ!!!』
魔王の雄たけびとともにカオスに飛びつく。そして、その重力で下へ下へと引っ張られていく。地面に達した直後。
「今です!」「いけえっっっす!」
カナとスライドの攻撃が魔王に当たる。その直後、魔王が手を放す。と同時にポポの弦が勢いよく上に上がり、同時にカオスもタケルの剣とともに昇っていく。
最高点に達したとき、天にまであると思えた結晶がカオスの目の前の近くにあるように見えていた。
「おらぁぁぁ!!!ぶっ壊れろぉぉぉぉぉ!!!」
カオスは勢いよく剣を結晶に投げつけた。距離も短かったのか剣が結晶に当たりそして……
パリンの音とともに砕け散った。
すると赤紫色の雲が晴れ、輝かしい光が魔王を包み込む。象のような大きさだった魔王もみるみる小さくなり、最終的には人間サイズに収まっていった。
「これは……我は一体……」
「成功……したのか……」
「タケルさん!やったわね!どうやら戻ったみたいよ!」
城にさわやかな青空とカオスとポポが宙に舞う光景から、タケルたちの計画は成功に終わった。