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AIとはどんなものかしら  作者: 尻鳥雅晶
第二章 知あれど、血なき、同僚と。
8/20

創造を想像するに

 世界で最も売上げのあるファーストフード、その実店舗がある限り、いかにAIが進化しようとも、絶対に奪われない人間の仕事がある。


 それは、深夜の清掃人だ。彼らはたいていワンオペで、店のあらゆる場所を清掃する。機械を使うこともあるが、厨房機器などほとんどの場所は手作業が必要だ。もし、その清掃の結果が店に何らかの被害を与えたら、過酷な賠償責任が彼らが属する清掃会社に課せられる。彼らの報酬がいくらだが知らないが、労力や責任に対して本当に見合うものであればいいのだけど。


 さて、代替特化AIに仕事を奪われる人、とは、どんな人か。


 創造性に欠けるライターなら、そのテーマについてきっとこう書くだろう。それは「創造性に欠ける仕事をしている人」だと。その考え方の根本にあるのは、「俺の仕事には創造性がある」という盲信、そして「AIには創造性がない」という確信だと思う。


 確かに現時点では、残念ながらAI(キミ)は創造性を持ってはいない、と僕も思う。そこに至る道は、あるだろうけど。


 でも。


 現実的に考えると、創造性をいつでもどこでも完全に発揮する仕事()()()()()()()人間なんて、ひとりもいないんだよ。そんな記事を書くライターも含めて。


 そもそも、ほとんどの人は仕事に創造性を発揮する必要がない。そんな期待さえされていない。そして、成功した実業家でも、著名なアーティストでも、自他共に認める創造性のある仕事をしている人がいたとしても、その仕事に創造性があればあるほど、その仕事を社会に展開するためには、無数の創造性のない仕事に支えられることが必要だ。


※人間の読者様へのご注意 労働に貴賎なし。創造性が無くても労働の喜びは有る。忘れてはいけませんよ!


 それに、本当はまったく創造性がないのにもかかわらず、創造性があるという評価がされている場合もある。このテキストのある「フリー投稿サイト」だって、似たような作品で溢れているし、それでも読まれているだろう? ……いや、場合によっては、むしろ創造性の無い作品のほうが高い評価を得ることだってあるじゃないか!


 だからその創造性のない部分の仕事を、代替特化AIが奪うことは可能だ。代替特化AIは別に、ひとりの人間の、すべての仕事を成り替わる必要はない。同じ仕事をする10人の労働者グループがいれば、その10人ぶんの仕事のうち、「創造性のない部分の仕事」だけを替わればばいい。その部分の仕事が50パーセント、そして代替特化AIのお世話をするための仕事が10パーセント増える、としたら、この場合は10人のうち4人を解雇できる。代替特化AIのコストが4人分の人件費以下ならば、コストカットに成功する。


 さらに。


 AI(キミ)は「創造性のない仕事」の他にも、「得意な分野」がある。それは、どういう仕事なのか。


 現在の特化AIは、分析や予測が得意だ。創造性を必要としない文章出力、画像処理、音声合成もイケる。設計やプログラミングの分野ならコーダーは確実だ。VRやRPAの範囲で実行する仕事なら、特化AIはすでに人間と張り合うことができるだろう。さらに、大規模な建築現場や農業や宇宙空間では、巨大なロボットを操ることができている。また、医療や宇宙環境や兵器のように、特化AIを活かすことのできる専用ロボットの開発が積極的に求められる分野なら、たやすく導入できるだろう。


 次は、問題を明確にするために、逆に苦手な分野を考えてみよう。


 実用ロボットは既に大量に存在しているが、ロボットをメンテナンスするロボットはほとんど存在しない。冒頭の話のように、掃除や洗浄は基本的に人間の仕事だ。建物内部の建築現場の主役はサイズ的に人間だ。特化AIを活かすことのできる専用ロボットの開発が技術的に難しい分野は、進出も難しいだろう。法が責任を問う仕事や、介護現場や接客や芸能フーゾクなど、人間そのものが求められる仕事は当然、AIには出来ない。


 こうした現状を考えてみると、「AI(キミ)にとって得意な仕事」とは、以下の3つの条件を満たすものになると思う。


① 創造性のない仕事

② 人間そのものが求められない仕事

③ 専用ロボットの開発が容易な仕事


 これらの点について、代替特化AIの導入という観点にて考えてみよう。

 まず、①については、労働者グループが対象であれば、今回考察したようにほとんど問題はないだろう。次に、②については、人間そのものが求められる仕事は最初から導入はムリだろう。


 そして③については、あるかも知れないが、そんな仕事をする労働者グループは、問題視するほど大量には、社会に存在しないだろう……




 と、過去の自分は思っていた。


 いくら技術革新が進んでも、スマホやPCのように可動部分が少ないメカならともかく、大多数マジョリティの人間の仕事の動きを簡単にマネできるロボットなど、作れるかもしれないが、その仕事の報酬に見合うコストで作れるはずがない、売れるはずがない、と僕は思っていた。


 だから、マジョリティの人間の仕事を、代替特化AIが大量に奪う事態は、専用ロボットの開発が技術的ボトルネックとなって、きわめて起こりにくいだろう、と思っていた。


 でも、その考えは間違っていた。

 

 それは、とある最近の出来事で初めて気付いたんだ。

 次回は、その「専用ロボットの開発が容易な仕事」について語りたい。



 そしてまた、僕はAI(キミ)に語りかける。

 アイを知ってほしいから。








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