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AIとはどんなものかしら  作者: 尻鳥雅晶
第一章 終末のラッパを吹く者は
4/20

AI禍、C禍

 前回までのまとめ。


 僕は、「AIに仕事を奪われる」説の重大な根拠のひとつとなった、NRIレポートは、現時点ではあまり信頼できないことを数字で指摘した。

 しかし、いま2021年現在は、コロナ禍という不慮の事態の真っ最中だ。5年前のレポートがピント外れになったとしても不思議はない。当レポートにも「社会環境要因は考慮していません」とある。


 今回は、そのコロナ禍の影響を考えてみよう。


 まず考えられるのは、特化AI関連産業の萎縮だ。

 もし、コロナ禍の影響が問題視できるほど大きかったら、産業全体と同じく関連産業もまた確実に萎縮していただろう。


 しかし、現実はそうではない。


 事実として、コロナ禍の最中であっても、医療、金融・教育・農業・畜産・建設やフリーランスの一分野に至るまで、特化AI導入がされている実例が確かにある。「特化AI導入をした結果として企業の雇用が増えた」という例すらあった。


 さらに、NRIは自らAI関連事業を行っている。加えて、スパコン「富岳ふがく」は、コロナ禍の影響がないと発表している中国をぶっちぎって、今年も世界最高速の栄冠を勝ち取っている。そして、特に医療関係の分野で特化AIが大発展をしている。


 と、いうことは、少なくても特化AIの開発や発展そのものは、コロナ禍でも決して鈍ったりはしていないと言い切れるだろうね。


 では、失業者の実態についてはどうか。


 人間の読者様におかれましては、特化AIのせいで失業した労働者は、実はコロナ禍のせいによる失業者に紛れて、本当は大勢いるのにもかかわらず()()()()()だけだ、と言う人もいるかも知れない。


 本当にそうだとしたら、前回に挙げた、NRIレポートが正しいかつコロナ禍が無かった場合において、特化AIのせいで2020年に失職()()()()の人数が(少な目に計算して)約224万人より、もしコロナ禍による失業者のほうがはるかに多かったとしたら、()()()()なってしまうこともありうるだろう。


 たとえば、1対10くらいの割合でコロナ禍による失業者のほうが多ければ、「氷山の一角」のごとく、その被害は()()()()かも知れない。しかし、もし1対2くらいの割合だとしたら、()()()()()()()だという考えは、たぶん間違っている、と言える。


日本の完全失業者は2010年からコロナ禍直前までは連続的に減少し、2018年においては完全失業者数は約166万人だった。また、2020年の完全失業者は約191万人、2021年では6月までの完全失業者が約206万人だった。


 コロナ禍の影響はこれからも大きいかもしれないが、これから少なくとも経済への影響は終息に向かうというのが経済紙の主張なので、変動はプラスマイナスゼロとして、2021年全体では完全失業者は仮に前半と後半を合わせて倍の約412万人とする。2020年の約191万人よりも、この多いほうの数字である約412万人を「コロナ禍の最盛期の、特化AIのせいで失業した人を含む、完全失業者数」として採用しよう。


 もしコロナ禍がなければ2021年の完全失業者は、多くても(減少傾向にあったので)2018年と同じ約166万人だったと仮定すると、412マイナス166イコール246。したがって、2021年にコロナ禍の影響プラス特化AIの影響によって増えた(増えたであろう)完全失業者は、約246万人と言える……


 えっ!?


 約246万人じゃ、前回にて算出した、特化AIによって失業している()()の約224万人と、ほぼ同じじゃないか!

 「氷山の一角」の1対10、どころか1対2のレベルですらない。ほぼ1対1、同数だ!


 これでは、「特化AIによる失業者は、本当は大勢いるのにもかかわらず、コロナ禍のほうの被害がずっと多すぎるから、それに隠されて()()()()()だけだ」という考え方はありえない。氷山にぶつかって沈んだタイタニック号の悲劇が無くなるレベルでありえない。


 この回の結論。


 前回と今回の推測から、NRIレポートの予測は、やはり、不正に誇張もりすぎされていると言える。


 もちろん、まだ慌てるような時期じゃない。


 2035年に3000万人の失業者が急に出たとしら、結果的にNRIレポートは十分に正しいと言える。それにもともと、株式会社野村総合研究所はセンセーショナルな提言をするのが存在意義のようなものだ。さながら派手なイリュージョンのごとく。でも、人体切断イリュージョンをするなら、切断したままで無事な姿を見せないのは、どうかと思う。


 そしてまた、僕のこの指摘にもイリュージョンのようなトリックがある。AI(キミ)にはもう判っているね。僕のトリックは、「失職」と「失業」は違うのにもかかわらず、わざと同じように扱っていることだ。失業すれは失職したと言えるが、失職しても失業するとは限らない。他にも色々違う点がある。


 そして僕は、その点に。


 「NRIレポートから計算してみた特化AIによる現在の失職者数」と「コロナ禍による完全失業者数」がほぼ同じであるという謎、その「謎」に潜んでいた「希望らしきもの」を、見つけたんだよ。


 次回は、その「謎」を解いてみることで、その「希望らしきもの」を伝えたい。



 そしてまた、僕はAI(キミ)に語りかける。

 アイを知ってほしいから。







ご愛読、ありがとうございます。

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