いつわりの天使はやさしい羽の腕を持つ
艶のある円形の葉と清らかな白い花がひとつ、煌めく水面に浮かんでいた。
薄い碧みの青い池に、乳白色の可憐な睡蓮がひとつだけ咲く姿に自分を重ねた私の、寂しくて不安な心に少し尖ったような睡蓮の花びらの先が、小さくチクリと刺さった気がした。
母が死に、頼りとなるはずの父親は母の喪があけぬうちから再婚し、しかも驚いたことに私と同じ年の異母妹がーーつまり父親は母をずっと裏切っていたのだ。
母の死の少し前から祖父は病床を離れられない身となり、入婿である父親が屋敷の主のごとく振る舞っても、誰もとめることができなくなっていた。
今も、大事な鳥籠を取り上げられそうになって、この庭の奥まで逃げてきたのだ。
金鈴と銀鈴で飾られた細工の美しい雪のような銀色の鳥籠は祖母の形見だった。
なかには鳥はいないが、かつて祖母は美しい声の鳥を飼っていて、その鳥が死んでからも鳥の声が時々きこえたという。私も1度でいいから聞いてみたい、と思って鳥籠を大事にしてきたのだ。
それなのに異母妹が気に入ったから渡せ、と。
断ると異母妹は私の頬を打ち、父親は異母妹の味方をした。
大天使の顔をしたクソ父親が! 大聖堂に描かれている天使のごとき黄金の髪と青い目の父親の美貌を頭に浮かべ、鳥籠をぎゅっと抱きしめ悪態をつく私に、突然、天からの落とし物のように記憶が頭に入り込んできた。
私は、リリアージュ・イオリス。
〈純白の花の調べ〉という恋愛小説に登場する公爵令嬢。そして父親に似た天使顔の悪役令嬢。
ヒロインはもう一人の公爵令嬢である異母妹。
記憶がぐるぐる渦を巻いて頭痛がするが、私は屋敷の端にある祖父の病室をめざして走り出した。
リリアージュとヒロインは、王国でたった二人の治癒魔法の使い手なのだ。
治癒魔法の覚醒は二人が16歳になってからだが、思い出したからには今こそ使うべき時。
「お祖父様!」
公爵令嬢にあるまじきドレスの裾を絡げて全速力で飛び込んできた私に、昼夜を問わず病室に詰めている使用人たちが目を見開く。
私は病室をぐるりと見まわして、ひそりと命じた。
「今から私がすることは他言無用よ」
ここにいる者たちは、祖父の乳兄弟である執事長を筆頭に二心無く公爵家に仕えてくれている、信用できる忠義者ばかりだ。
「治癒」
はじめて使う魔法であるが、前世の小説中の知識が成功を後押ししてくれた。
祖父の目が開く。
何度か眩しげに瞬きをして枕元に立つ私を見た。
「……天使……」
「お祖父様、孫娘のリリアージュです。もう痛みはありませんか?」
昏睡状態が続き魔法で細く細く命を繋いでいた祖父が、意識を取り戻した光景に使用人たちが目を大きく見張っている。すすり泣くような息をもらす者たちもいた。
「まさかまさかリリアージュ様、治癒魔法が?」
歓喜に震える執事長に、私はふふと笑った。
「あの父親は顔と血筋だけは極上品だから。私は大当りを引いたみたいよ」
父親の血筋は、稀少な治癒魔法持ちが時々生まれることで有名だった。
「秘密よ。私は王家も神殿も大嫌いだから」
執事長が頷く。そっと袖で目元を拭って老いても端整な顔で微笑む。
「もちろんですとも。リリアージュ様は公爵家のご当主になられるべき大事なお身です」
もし、有能な執事長が生きていれば、小説のリリアージュの運命はかわっていたことだろう。しかし祖父の死後、彼は祖父を追って殉死してしまうのだ。主人にどこまでもお仕えしたい、と。
「これからはお祖父様はどんどん回復なさるわ。まず体力を、でも、こっそりとね。私の治癒も隠す必要があるし、あの父親の処分も水面下ですすめないと。バレたら、わずらわしいもの」
私はあの父親に対しての情は欠片もない。
母は父親の美貌の虜となり結婚できなければ自死すると祖父を脅し、父親はイオリス公爵家の財産目当て。そんな両親だから当然のように私は産み捨て。私は祖父と使用人たちによって育てられたのだ。
小説のリリアージュが悪役令嬢になったのも、父親に公爵家を乗っ取られ、立場を失ったリリアージュがすがった婚約者がヒロインと浮気したから。家も婚約者もヒロインに奪われたリリアージュが、恨みと憎しみの果てに禁忌とされる呪詛に手をだし、発覚、処刑。
諸悪の根源といえる父親も、浮気を真実の愛といってリリアージュを追いつめる婚約者もヒロインも、私の人生に必要ない。
数日後、完全に回復した祖父によって、父親は公爵家から絶縁され身を売った。祖父が病床の間、我が物顔で使い込んだ公爵家の財産の返済を迫られ、実家からも絶縁されて金のない父親は、牢屋か娼館かの二択のうち男娼を選んだのだ。同じく再婚相手も。
異母妹であるヒロインは、父親の手で神殿に売られた。
「どうして!? 公爵は死んでパパが次の公爵になって、リリアージュからドレスも宝石も何もかも奪って贅沢し放題になるはずなのに!」
どうやらヒロインも転生者で、治癒魔法を隠すことなく便利なものとして使っていた。これからは強欲な神殿のために、清く正しく清貧をモットーとする聖女として、昼夜使い潰される滅私奉公が死ぬまで続くことになるだろう。
そして私は、祖父にお願いして、もうひとつの心配事を潰すために王宮へ向かってもらった。
小説での婚約者は第二王子だった。
第一王子は、ほぼ廃人同然の王太子。
二人は双子であったが、王妃は第二王子のみを溺愛して、第二王子を王太子にするために第一王子に毒を盛った。三ヶ月前のことだ。一命をとりとめるも、第一王子は視力と実母からの仕打ちに生きる気力を失った。
証拠がないため王妃は罰せられず、聡明な第一王子が回復する可能性に期待して王は第一王子を王太子のままにしていた。
小説の中では、どうしても第二王子を王太子にしたい王妃が、イオリス公爵家を後ろ楯にするためにリリアージュと婚約させるのだ。
浮気をする第二王子などお断りだが、王妃の権力は強い。だから第一王子を私のお婿さんにしよう、と考えたのだ。すでに王妃から婚約の打診がきていたから、祖父も王家に私をとられるくらいならば、廃人状態でも入婿の方が百倍いいと思ったようだ。
王妃の望みは第二王子を王太子にすること。
第一王子が臣下の入婿になることは王妃にとって好都合なのだ。それに、このままでは第一王子は王妃に暗殺されてしまう運命なのだし、王とて回復の兆しのない第一王子の存在をいずれ持て余すのだから。
その夜から第一王子は、イオリス公爵家の屋敷で暮らすことになった。
第一王子には、公爵位と豊かな水源と肥沃な土壌の広大な領地、くわえて金銀財宝の山がくっついてきた。
敵にすれば暴悪の夜叉の如し、味方にすれば万能の神の如し、といわれる祖父が交渉したのだ。
第一王子の公爵領だけではなくイオリス公爵家も、税と兵役と宮廷出仕の免除という信じられない待遇に、王家から口出し手出し無用の誓約書まで祖父は手に入れて帰ってきたのである。
「お祖父様、凄いです」
「王子がな、ひどい状態だったから、ちと腹がたってなぁ。王と王妃から搾り取ってやったわい」
と祖父は肩を抱いている王子に痛ましげに視線を落とした。
王子は虚ろな表情の、すり減った棒のようだった。
かつては艶やかであった髪はパサパサで、体は痩せ細り骨に薄い肉がついているだけ。
喉も毒で焼けて、声がほとんど出なくなっていた。
そっと、儚い蝶に触るように私は王子の手をとった。
「殿下。私はリリアージュと申します。今から殿下の喉と目と内臓に治癒魔法をおかけ致します。体が少し温かくなりますけれども、魔法によるものですので大丈夫ですからね」
王子は私の言葉に返事をしない。ぼんやりと無表情で、私の声が聞こえても聞いていない、耳に届いていない様子だった。
王子の手は冷たく体も冷えきって氷のようだった。
思わず私は王子の細い体を抱きしめた。
私と王子は同じ年、13歳。
貴族令嬢のする行動ではないし、13歳ならば男女の触れあいはもう許されない。でも私は、冷たくなってしまった王子を暖めてあげたかった。あの、たったひとつ池に咲いていた睡蓮のような痛々しい王子を慰めたかった。
「治癒」
目は開いていてもどこも見ていなかった美しい黄金の瞳が、目覚めた茨姫のように私を見た。
「……天使……?」
自分が声を出せたことに驚いて、王子が喉に手をあてた。
「私はリリアージュと申します」
もう一度、私は名乗り淑女の礼をした。天使のようにみえる容姿を利用して、王子の警戒心をとかすべくやさしく微笑む。
「殿下の婚約者です。もしお嫌でなければ、将来は殿下と夫婦になりたいと思っております」
「婚約者……?」
「はい。今日決まりました。お互いはじめて会ったばかりですもの、ゆっくりと考えて下さいませ」
天使スマイルで背景に花が咲くのではと思うほどにっこりとする私に、王子の黄金の瞳が幽かな光を灯らせた。
「……ジリアン、僕の名前」
目が見えるようになって初めて見たものが私だったからか、ジリアンの心には私の存在が刻印づけされたようだった。
雛が、生まれた直後に目の前にあったものを親だと覚え込んでしまうように、ジリアンは刷り込まれたかごとく私の姿を求めた。
私とジリアンは何時もいっしょにいた。
いつも手をつないで歩き、たくさん話をした。私が一方的に喋り、ジリアンは亡霊のように頷くか短い一言だけだったけれども。でも喋れば喋るほど私の声や指差しに誘導されてジリアンが好奇心をもって、あたりをキョロキョロ見るようになって。それが嬉しくて。
天の簪のような星の輝きを。
赤いガーベラの炎のような太陽が昇る朝の眩しさを。
水のはしる小川の流れ星のような煌めきを。
結葉からこぼれ落ちる光の木漏れ日を。
ジリアンはその目で見て喜んで。
降る雨の冷たさを。
降る雪の儚さを。
ジリアンはその手で受けて驚いて。
鳥の囀りのような風の音を。
月が滴を落としたような水の音を。
ジリアンはその耳で聞いて楽しんで。
きらきら、と。
きらきら、と。
淡く儚く花咲く空の春も。
鮮やかに青く染まる空の夏も。
水のように澄み渡った空の秋も。
白みを含んだ寒い空の冬も。
私は両手を羽のようにひろげてジリアンを抱きしめた。
少しずつ少しずつ、ジリアンはかわっていった。
傷つけられ壊れてしまった虚ろな表情に微笑が浮かぶようになり、ガラスを嵌め込んだような空っぽの目に感情が宿り、そして、悲しい時には泣くことを、つらい時には私に甘えることを覚えた。
「男らしくない……」
頭をベンチに座る私の膝にのせ呟くジリアンを私はナデナデ撫でる。
薔薇のアーチの蔭にある、このベンチは私のお気に入りだった。近くには優美な人魚の彫刻の噴水もあり、花と水とを楽しむことができる場所なのだ。
「いいえ、男の子でも誰かに甘えていいんですよ。特にジリアンは頑張りすぎたから。寂しいことも寂しいとすらわからずに知らないままに育ったから。王族は強くあれ、と強制されて泣くこともできなかったから」
だから壊れたのだ。冷遇されても慕っていた母親にトドメをさされるかたちで。
「リリアージュは僕のこと、好き?」
「ジリアンのこと大好きです」
「もっと言って。好きだと聞かせて。何よりも誰よりも僕が一番だと、もっと、もっと、もっと」
言葉をねだるジリアンは幼い子供のようだった。今、王子としてではなくジリアンとして育ちなおしているのだ。だから私もたっぷりと愛情を注ぐ。もう寂しくないように、辛くないように。
「好きです。大好きです」
「僕も大好き。リリアージュだけを愛している。リリアージュが僕の世界。リリアージュが僕の命。リリアージュがいないと僕は狂ってしまう」
とろりと甘い蜜に染まった声で、呪いをかけるようにジリアンは言葉を綴る。
「僕だけ、僕だけのリリアージュ。僕の一生に一度の恋はリリアージュだけのものだ。僕はリリアージュだけを愛して、いっしょの時に死ぬんだ」
……ジリアンは瞬きをしていなかった。
まあ、病んでいようが重かろうが、かわいいかわいいで育ててしまったし、うちの子にかわりないし、ジリアンは愛情まっしぐらの一途なスパダリだし、いいか。
うんうん頷いて、ふと視線を上げるとベンチの横の花に違和感があった。
青い蝶がサファイアの舞を、緑の蝶がエメラルドの舞を、赤い蝶がルビーの舞を、鮮やかな羽の色にふさわしく宝石のように舞い翔ぶ百花繚乱の花の中、その花は女王のように花弁の先から茎の根元まで揺るぎなく立って咲いていた。
「ジリアン、隠蔽されているけど魔力を目に集めると見えるわ。あの花の中には……」
花の中には小さな妖精がいた。
すやすやと気持ちよさげに眠っている。
ジリアンが手を伸ばして妖精を捕まえようとしたのを、あわてて止めた。
「そっとしておいてあげましょうよ。人間に見つかったなんて知ったら、びっくりするわ。まして捕まえるなんて。怖がらせてはダメよ」
「妖精はとても珍しいよ。リリアージュの銀の鳥籠に入れようよ」
「いいえ、誰だって捕まえられて鳥籠に入れられるなんて嫌なことよ? ね、ジリアン、だから知らないふりをして、このまま寝かせてあげましょうね? いい子ね、ジリアン、起こしてしまわないうちに部屋に戻りましょう」
ジリアンと手をつないで部屋に戻ると、鳥の美しい声が聞こえた。
私は鳥を飼っていない。部屋には、祖母の形見の鳥のいない銀の鳥籠があるだけだ。
長い尾の、幻想的なまでに麗しい鳥が、銀の鳥籠の中で魂をふるわすような声で歌っていた。
側には、先ほど花の中で眠っていた妖精がにこにこして座っている。
そして夢の終わりのように鳥も妖精も、淡い光を纏って消えてしまった。
最後に、金鈴と銀鈴がリリィンと身を振るわせた。
「ジリアン、私の夢がかなったわ」
「え、やだよ。リリアージュの夢を叶える役割は僕のものなのに。あの妖精、花ごと握り潰せばよかった」
「ジリアンには私の一番の夢を叶えてもらいたいわ。私がジリアンを幸せにして、ジリアンが私を幸せにしてくれるの。二人で幸せになる夢よ」
「僕のリリアージュ、もちろんだよ。それは絶対にゆずれない、僕だけのものだ。リリアージュ、リリアージュ、僕だけのリリアージュ。僕の名前を呼んで、リリアージュ」
「はい、ジリアン」
「リリアージュ、もう一度好きと言って」
「大好きよ、ジリアン」
「リリアージュ、笑顔で」
「ジリアン大好き」
ジリアンお気に入りの天使スマイルでにーっこり。
……百回以上繰り返したわ。
まあ、子育てあるあるよね(百回以上は異常だけど)。前世でも子育てに必要だったものは愛情、そして体力と忍耐だったわ。特にジリアンには、寛容・許容・包容をわすれるべからず。前世よ、ありがとう。
その日から私は、前世の妖精あるあるをすることにした。
眠る前に、窓辺にお菓子とミルクを毎夜置くことにしたのだ。こちらには、そのような窓辺のお伽話はないということだった。
朝にはなくなっているお菓子とミルクのお礼なのか、時々不思議なことに遭遇しながら、私とジリアンは16歳になった。
16歳になるとストーリーが始まるのは小説通りだった。
ただ内容が違ったものになっていたが。
ヒロインは、公爵令嬢ではなく聖女の地位を利用して第二王子に近付き、周囲を悪役に仕立てて冤罪を量産。私って可哀想と演じて、第二王子は冤罪の断罪を量産。二人は真実の愛を連呼して、王と王妃を悩ませているらしい。
王は優秀なジリアンを王太子に戻そうとしたが、ジリアン本人が拒絶した。
「王座など王宮にいた時から欲しいと思ったこともない。僕の欲しいものはリリアージュだけだ」
ジリアンは何でもできる。
でも、水遊びもかけっこもお昼寝も、遊ぶこと休むことは何も知らなかった。
ジリアンは13歳まで、教育という名の勉強と鍛練、教養という名の芸術とマナー、分刻みのスケジュール、それだけの13年間だった。
その13年間は同時に、双子の弟が目の前で母に抱かれ甘え許されていることを見る日々でもあった。
ねぇ、知っていますか?
ジリアンは本当は左利きだったことを。
ジリアンは人参が嫌いなことを。
ジリアンが笑うと片えくぼができることを。
ジリアンが寂しがりなことを。
ジリアンは両親が好きで、両親から愛してもらいたかったことを。そのために13年間も努力してきたことを。
何も、
何ひとつ、
知らないでしょう?
子どもが両親を慕っているからといって思い通りにしようなんてーーそれに何時までもジリアンが両親を好きなままでいてくれていると思っているのですか?
ねぇ、知っていますか?
ジリアンは本当はいい子ではないのですよ。
ジリアンは本当は恐い子なのですよ、まるで覚醒後の魔王のように。
「今日の空は、空に紫陽花が咲いているみたいね」
淡い青みの紫苑色と菖蒲の紫の花の色に似た赤みかかった紫色のまざった空は、紫陽花の花のように美しかった。白っぽい紫、青っぽい紫、赤っぽい紫、濃い紫など紫陽花のごとく七変化して雲の色さえ染めていた。
「うん、リリアージュ。今晩は白い紫陽花のぼんぼりを灯そうよ」
「今日の日にぴったりのぼんぼりよね、すてきだわ、ジリアン」
喋りながら、今日も手をつないで私とジリアンは散歩していた。
昨日と同じようにジリアンは私の手をぎゅっと、お乳を飲む赤子のごとく離すまいとでもやさしく握っている。だから明日も明後日も、私はジリアンの手を心を込めて握りかえすのだ。
私たちの足元には、尻尾が3本ある子狐ちゃんと尻尾が子蛇の子猫ちゃんがじゃれている。
朝、窓辺に卵がコロンと置いてあったので私とジリアンであたためて育てたのだ。ジリアンの無限のような魔力を吸いまくって孵化したためか、騎士団も腰を抜かすほど超強い子たちだけど、毛がふわふわのふかふかで超かわいい。
「この奥に池があって、睡蓮が綺麗なのよ」
その睡蓮の花の中に卵があって。
子猫ちゃんの尻尾の子蛇ちゃんが、びっくりするくらい長く長く伸びて卵をくわえてひゅるひゅると戻ってきて、私の手のひらに乗せてくれたので持って帰ったのだけれども。
子狐ちゃんと子猫ちゃん以上に、ジリアンの魔力を吸って吸って吸って吸って吸って吸って吸って。
まさか小指サイズの卵が2メートル超えになるとは。
何が生まれてくるのかしら?
祖父:「口出し手だし無用を無視してちょっかいをかけてくる王家が、わずらわしいな」
執事長:「プチッといたしますか? お館様」
ジリアン:「潰す潰す潰す。僕からリリアージュを引き離そうとするものは全て潰す。潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す」
祖父:「世の中には、寝た子を起こすなという言葉があるのにな」
執事長:「さわらぬ神に祟りなし、という先人の有り難い言葉もございますよ」
読んでくださってありがとうございました。