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6.王女姉妹2

 ピドナ公爵家へ急ぐファインが馬車に乗り城門前までやってくると、門番の兵士が行く手を阻むように堅く城門を守っていた。

 緊急時でもなければこれほど城門を堅く守る事もない為、ファインは嫌な予感を感じる。


「お待ちくださいファイン殿下! コロネ殿下の命により、ここを通す訳にはいきません!」


 城門で門番に止められてしまう。

 ファインの行動を先読みしたコロネが門番にお願いしていたのだ。


「ファイン殿下には自室にて待機の命が出ています」


(わたくし)とコロネなら姉の私の方が立場は上のはず、どきなさい」


「なりません、絶対に通すなと命じられております」


「これがコロネのお願いの力……今回は本気のお願いみたいね」


 コロネのお願いには強弱があり、軽いお願いなら断る事も可能だが、本気のお願いを断れるのは魔力抵抗力の高い者だけな事をファインは今までの経験で感じていた。

 侍女と二人では城門を力ずくで突破することもできず、自室に連行されてしまうのだった。




 ファインが自室に連行されて三日、ファイン付きの侍女であるマリナと共に軟禁生活を強いられていた。

 軟禁生活と言っても特に不自由なく生活させてもらえているが、自室から出る事は許されていない為暇を持て余していた。


「ファイン殿下、お茶のおかわりはいかがですか?」


「ありがとうマリナ、いただきますわ」


 警備兵がいて自室を抜け出す事も出来ない為、マリナと二人でお茶を楽しんでいるとコロネがやってきた。

 自室に軟禁したファインの様子を度々見にきているのだ。


「ごきげんようお姉様、相変わらずお茶がお好きですのね。でも……さすがのお姉様も三日も体を洗わないと少し匂いますわね。ですが、お姉様の匂い(わたくし)は好きですよ」


「でしたら体を洗う物を持ってきてくれるかしら。それはそうとコロネ……今回はさすがに悪戯が過ぎるわよ」


 ファインが若干引きながらも言い返すと、コロネは不敵な笑みを浮かべる。

 実の妹ながら気味の悪さを感じるが、ファインはコロネの事を憎めない存在だと思っている。

 なぜなら、コロネが自分の事を好いていると感じるからだ。


「今日はお姉様に報告があってきましたの。タキオン様がピドナ公爵家を追放されたそうです。先に言っておきますけど、(わたくし)は何もしていませんわ」


「――そんな……でも、そうね。ピドナ公爵家ならやりかねないわ」


 今まで妹のおねだりに苦労してきたファインだが、くだらない嘘を付く子ではないと分かっているのでコロネの言葉は信用できる。


「タキオン様が追放されただけなら良いのですが、ピドナ公爵はタキオン様との婚約は破棄し、弟のオニオンとお姉様を婚約させるつもりらしいのです。そんな事は絶対に許しませんわ!」


「コロネ、貴方タキオンと婚約したかったのではなくて?」


 タキオンが欲しい、譲ってくれと言ってきたのはコロネなのだから当然の疑問だろう。

 ファインの質問にコロネは、そんな事も分からないのかと言わんばかりに嘆息して答えた。


「お姉様の婚約者だから欲しかったのです。ただのタキオン様になった以上興味は失せましたわ。とにかく、ピドナ公爵がお姉様を狙っている以上ここから出す訳にはいかなくなりました。何しろ弟のオニオンはクズですから、あのような男にお姉様は渡しません! ババアになる前には出れるようにいたしますので、もうしばらく自室で身を隠してくださいませ」


「ババアなんて汚い言葉は使わない方がよろしくてよ」


(コロネ……貴方はいったい何がしたいの……)


 この事態はコロネにも予想外だったらしく、珍しく興奮した様子で息巻く。

 ファインは目的の読めないコロネの行動について考えるが、答えが出る事はなかった。


 姉をオニオンに渡したくないコロネの手によって自室に軟禁されるファインがタキオンの死を知るのは、それから数日後のことだった。

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