序
エンドロールが流れるスクリーンの幽かな光が涙の痕を浮かび上がらせ、終にはふつりと消えた。盛大な拍手が鳴り響き、真っ暗だった室内が徐々に明るくなってゆく。同時に、先ほど泣いたり笑ったりとドラマを展開していた面々が、外の世界へ飛び出しスクリーンの前へ並び立った。彼らは、ベテランから新人まで皆一様に、自信に満ち満ちた顔で観客に笑顔を向ける。
そして、いよいよ真打ち登場、袖口から中央へ進みくる人物が見えると、観客の拍手はより一層大きくなった。今観終えたばかりの映画の監督、堤真が堂々と進み出てきたのだ。
堤監督は、この作品でデビューしたばかりの新人監督だが、脚本家としてこれまでも映画に携わり、高評価を得ていた。その俳優もかくやという見た目も相まって、知名度は高く既にコアなファンもついていた。周りからは、ずっと監督をとの声が上がっていたが、渋っていたのだ。だから、新人監督とは言っても、既にベテランの雰囲気を纏っている。そして今回、30代も終わりに差し掛かり、やっと周りの期待に応えた。
その監督の横に並ぶのは、主演女優の中谷涼香。彼女は40歳だがとても若々しく、30代前半にしか見えない。一昔前の清純派とでもいうのだろうか、清楚な未だ少女のような女優だ。デビューしたのは、彼女が19歳の頃だったか。週刊誌にゴシップが載る事も無く、高感度ランキングでは、常に上位に位置する。
そんな彼女が主演したこの映画は、穏やかで心温まるノスタルジックなヒューマンドラマ。これまでの堤監督が書いた脚本は、スピード感あふれるアクションと裏切りあり、爆発あり、銃撃戦ありのハードボイルドアクションで、真逆と言っていい内容だった。
初めての試みだったが、観客の反応を見れば判る通り。ほっこりと感動の余韻を残しつつ、試写会は大盛況のうちに幕を閉じた。