21温かい
母達は、何を思って私を育てたのだろう。
全ては、お金。
私は育てるには、足りなかった。
お母さん達は捨てたくて捨てたんじゃない。でも、
今も昔も、一緒に暮らしたいとは思えない。
私は赤子の頃に捨てられたから、家がどんな感じだったかは覚えていない。そして私の家は、貧乏くさい家だった。
とても小さくて、汚れている。不格好な字で、ランサーと書かれた表札は傾いている。
ドアを叩くかどうか迷ったが、突然家から女の人が出てきたので慌てて隠れた。
痩せていて、ふらふらとおぼつかない足取りで歩いている。きっと私の母さんだろう。
買い物に行くのか、袋を持って歩いている。
「やっぱり。」
予感は当たっていた。お金がないから、私を育てることができなかった。
里帰り、何もすることはなかった。 ずっとベンチに座って、 黙っていた。
その時、母さんが歩いて帰ってきた。袋に色々なものが入っている。安物ばかり。
抱きしめられるって、どんな感じなんだろう。ぬくもりってなんだろう。
お母さんって、あったかいのかな。
私は駆け出す。冬なのに寒そうな服を着て、よたよた歩いている女の人に向かって。
「母さん!」
寒そうな服を着ているのに、痩せているのに、母さんはあったかい。
「私ね、私ね、ソフィリア!覚えてる?」
「…生きて…いたの?」
母さんも、抱きしめ返す。
私は事情を説明した。母さんも、じぶんのことをたくさん話してくれた。
父さんは夜遅くまで働いているそうだ。 あまり会っていないようで、母さんは時々寂しい顔をちらつかせる。
長いこと話していた。
「じゃあ私帰るね。」
「帰っちゃうの?」
「うん。」
私を引き止めようとする母さんを止める。
「だよね。今も昔も、家は貧乏だからね。苦しい思いをさせちゃうよね。ごめんね、ごめんね。」
「いいのよ母さん。」
「…愛してるわ。ソフィリア。」
「私も。」
一緒に暮らしたいとは思わなかった。思っても一緒に暮らすことはできない。悲しい運命。
一度会えたのが奇跡だった。
奇跡は2度起こるのだろうか?
奇跡はいいことだけじゃない。悪い事の奇跡もある。
奇跡が起こって欲しいのか欲しくないのか、自分でも分からなかった。




