第四話 どんぐりコロコロ(1)
奇妙な生き物から、突然、気に掛かる言葉を拾った。
「・・・・・・幽体のようですな~」って・・・・・・・?
いやいやマテ俺、またぞろ脳内翻訳機能が、勝手に誤訳して伝わってるんじゃねえの???
冷静に、落ち着いて、逃がさないようにゆっくりと・・・
事の真相に近い事象確認のため、ゆっくりと佐須くんの方に手を伸ばす。
「幽体って聞こえたんだが・・・」
「ダンナ、お手は、手の平を上にするんですよ。犬は飼った事が無いので?」・・・軽く流された。
「大体、渡りは重量に左右されるんですよ。自分一人が精一杯。手荷物ならともかく、ダンナのように80キロ近いニンゲンの大人を連れて、どうして転移出来ましょうか? それ(幽体)以外だと、巻き込んだ理由は分からないんですよ。」
どうやら、本当に幽体だと説明しているようである。
しかしながら俺、今、無性に腹が減ってきているようなのだが。
本当に幽体だとして、こんな矛盾がありえるのだろうか???
「もしかして俺、だまされてる?」
「この世界のヒトは、みんなそう言って飯を食ってますが?みんな、幽体でしょう?」
他にも人がいるのか・・・? いや、「飯を食う」ということは、水や食料の確保が重要ではないのか。とりあえずの肉は目の前にあるので、水源を探すのが最重要任務なのでは・・・?釣り具一式は手元にあるので、魚が居れば食べれるのか・・・?焦りながらもフルスピードで思考する。
その時、「ぐう~」とお腹が鳴って、佐須くんが何もない空間に手を突っ込み、干した小魚を取り出した。「やっぱり、渡りのあとは、お腹が空きますね~」
「『この世界のヒト』とは、おまえたちのことか~~~!」・・・突っ込みどころがさらに増えた。