第10話 一歩
僕はそんなお姉さんの表情の意図が取れず怪訝な表情をしてしまった。
犬塚のお姉さんはその僕の表情に気付いてさっきの表情を取り繕うに笑顔をみせた
「わざわざ病院まで来てくれてありがとね」
お姉さんはさっきまでの時間を誤魔化すかの様に笑顔で僕に言った
「い、いえ...」
僕はそう答えたが頭の中はお姉さんのさっきの意味ありげな表情の事でいっぱいだった
「あかねね、まだちょっと起きてないみたいなの
何か用があってここに来たんでしょ?」
犬塚の髪を撫でながらお姉さんは言った
「は、はい。実は学校でこれを...」
俺は学校で拾ったハンカチを見せた
「ああそれ!あかねが気に入ってるやつだ」
お姉さんは目を丸くしていった
「学校に落ちていたんです」
「あらそうなのねこれを届けにわざわざ...」
「わざわざってほどでもありません。犬塚さんこれなきゃ心配するだろうし」
つい被せ気味に強めのトーンで言った後お姉さんの驚いた表情に気付き我に帰る
「あ、いや、すみません...」
「ううん、いいの気にしないで」
お姉さんは明るく今度は意味ありげな笑顔で俺にそう言った
俺はハンカチを渡してその場を後にした。
お姉さんに少し引き止められたが気まずいので断った。
病院に入るまでの怪しい雲行きは何処へ行ったのか少し汗ばむほどの
快晴の下俺は自転車へ乗って自宅へ向かった。