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稲荷神社

あいも変わらず苔むした稲荷神社の鳥居をくぐり抜ける。


砂利ははだけ地面が見える状態となっており、俺がお百度詣りした証が地面にありありと刻まれていた。


客観的に見るとなんと恥ずかしい事だろう。


俺は地面が見えたところに足で砂利を転がして埋めながら、拝殿へと向かった。


「巣山 尋、二十五歳、結婚したいです。か。我ながらとんでもない願いをしたもんだなあ。叶いそうだけど。ほんとにありがとうございます」


俺は自分の馬鹿みたいな願い事に苦笑いを浮かべつつ、その馬鹿みたいな願いが叶いそうな事に感謝を込めて手を合わせた。


稲荷神社の神様はいなりだろうから、直接いなりにありがとうと言うべきかもしれないが、形式上は神社に出向かないとなんだか気持ちが悪い。


それに、記憶が戻った今は、稲荷神社のあちこちにいなりと確かに居た事を鮮明に思い出せる。


「ははっ。すごいよなあ、俺は神様と幼馴染だったとは」


俺は懐かしむように拝殿から振り向いてあちこちに目線をやった。


罰当たりにも狐の石像にも登った。


鳥居の柱でだるまさんが転んだとかもした。


なんならこの拝殿にいなりがよじ登って妾は偉いのじゃとか言ってたっけ。


実際偉いし。


ああ、こんなにも鮮やかに思い出せるのに、今まで忘れていた事に心の中の罪悪感が膨れ上がる。


小さい頃のいなりが泣いていた。


小さい頃の俺も泣いていた。


俺の目の前には泣きじゃくる俺といなりの幻が見えていた。


もう泣く事はないぞ。俺はちゃんと約束を守った。


夢のようにひぐらしは鳴いていない。ただ静かに風が吹き木々が擦れる音のみが鳴っている。


夕焼けは沈み、薄暗い空がより深く暗く染まろうとする。


そろそろ帰るか、いなりも待ってる。


俺はゆっくりと砂利を鳴らしながら歩き、鳥居を潜ろうとしたその時。


「また、今日の夢で」


微かにてんこさんの声がしたような気がして拝殿の方を振り向く。


しかし、あたりには何も見えない。


気のせいか。でも、今日見た夢の中でもまた夢の中で会うような含みのある言い方をしていた。


どうして夢の中だけなのだろうか。どうして姿を見せないのか。


いろいろと気になるところだけど、今日の夢で聞いてみようか。





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