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きになってしまい

「お母様? 一体どう言うことなのじゃ?」


 いなりは状況が掴み切れておらず、食い気味にてんこさんに詰め寄る。


 まあ、気持ちはわかる。俺は慣れているから平気だけどこの夢の世界初見だとそんな反応だろう。


 だが、あたふたするいなりを見てもお構いなしに、てんこさんは涼しい顔をしていた。


「そうね、まず、いなりは尋くんの事好き?」


 なんの脈絡もなく突然の質問にいなりは困惑する。


 これが、どうしてここにいるのかの説明になるのだろうか。


「ど、ど、どういうことじゃ!?」


「答えて?」


 慌てるいなりと冷静なてんこさんの両極端な空気が流れる空間。


 俺は黙って見てるべきかなにかツッコミでもいれるべきだろうか。


 なにか話しかけてもらえると嬉しいんだが今のとこはいなりと話すターンらしい。


「う、うう。その、好きじゃけどぉ……」


「いつから?」


 いなりが恥ずかしそうに質問に答えると、すぐさま次の質問がてんこさんから繰り出される。


 あれ? 恋愛トークの時間かこれ?


 だが、そんな甘い雰囲気ではなく、てんこさんの表情はまじめで堅苦しい雰囲気が漂っていた。


「いつからって、えっと……尋が妾にぷろぽーずした時じゃから……」


「ほんとに? もっともっと、考えて。目を閉じてみて」


 てんこさんはいなりに目を瞑らせると、自身も目を瞑っていなりの頭に手を当てる。


 すると、その手が柔らかな光を放った。眩しいって訳ではない。


 蛍の光のような、柔らかで優しい光。


 なにか、神様の力のようなものだろうか。


「いなりが尋くんと出会ったのはもっと、ずっと前。むかーしむかし。神様の見習いをしていた頃」


「妾が……見習いの頃……?」


 てんこさんがいなりに優しく語りかけ、いなりは恐る恐る聞き返す。


 やはりいなりに記憶がないだけで会っていたんだ。


「そう、縁結びの神様としてたまちゃんを助けたりしたね。良縁を結ぶ修行。その修行の一環の時に、いなりは一匹の犬を助ける為に川へ飛び込んで、結局溺れたんだよ。さて、溺れたいなりを助けてくれたのは、誰だ?」


「犬を助けた? 妾を助けてくれたの? あ……あ、頭が、痛い……」


 思い出させるように優しく言い聞かせるようにてんこさんはいなりに伝えると、いなりは激しく唸り声を上げて頭を抱えはじめた。


 思い出すのも辛いのか? やめさせた方がいいのでは?


 そう思って声をかけようとした瞬間、見透かされているようにてんこさんが僅かに目を開いておれを流し目で見ていた。


 まるで座ってろと言わんばかりのその視線の威圧感に蹴落とされ、俺は動く事はおろか、声を出すことすらできなくなった。


 俺が動かない事を見届け、てんこさんはいなりに向き直った。


「その時、助けてくれたのは尋くんだ。そして、いなりと尋くんはその後友達となった。でもね、いなりは無意識に尋くんとの縁を結ぼうとした。だから、一人前になるまで引き離したの」


「う、ああ……。ああああ……。そ、そうじゃ……。尋を……知ってる……」


 頭を抱えていなりは唸り出し、痛みを堪えるように声を絞り出した。


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