伝えなければならないこと
「いなり、動揺しすぎだ」
「な、わ、妾動揺してないしー! あー、普通だしー!」
動揺している俺の指摘に対して、していないといういなりは、明らかに動揺して女子高生みたいな言葉遣いをしている。
なんだ、普通だしって。普通の奴は普通だしなんて言わん。
それに、いなりなら普通なのじゃくらいだろ。
俺は説明当初は冷静ではなかったが、俺よりも冷静さを欠いたいなりを見て、すっと焦りのようなものがなくなった。
今なら言いにくかった事も伝えられるかもしれない。
とりあえずは、今説明している事をちゃんと説明しておくか。
「まあ、落ち着け。 告白は断ったよ。 その、いなり、お前がいるからな」
「そ、そうか。 良かったのじゃ」
いなりの質問にきちんと答えると、いなりは慌てたような表情からふっと一息吐いた。
本当に安心したのだろう。口調も戻っている。
俺としてもいなりの動揺を見たあと、妙に落ち着いている。
今日実家に帰って知った事、今ならいなりに言えると思う。
俺は意を決していなりの目を見つめた。
「これが、言いたかったことの一つだ。そして、もう一つ言っておきたい事があるんだが」
「ふえっ!? まだあるのかのう? 妾、結構今のぼりゅーむ多めなんじゃけど」
「うん、まだある。出来たら今聞いて欲しい」
「え? し、しょうがないのう」
俺が話を聞いて欲しいとお願いすると、いなりは渋々といったように了承した。
まあ、いなりにとっては豪速球ストレートのような内容だっただろうからな。
だけど、次にいなりに投げかけるのも豪速球のストレート。なんならど真ん中。
それくらい衝撃的なのかもしれない。
これを言ってもいいのか、言ってはいけないのか。
口を開こうと思っては口を閉じて、また開いては閉じてしまう。
行けそうだと思ったけど、なぜだか言えない。
いなり、お前とは昔会ったことあるのか?
こんな簡単な言葉が言えない。
そんな俺の様子を見て、いなりは心配そうに俺を見つめた。
「どうしたのじゃ? 言いにくいのかのう? 落ち着いて。 妾なんでも聞くぞ?」
いなりにも俺の変な緊張感が伝わったのだろう。
またしても立場が逆転して、いなりが俺を落ち着かせ、俺は少し息を吐いた。
聞いてもいいのか?
なぜいなりは今まで言わなかった?
グルグルと頭をめぐる思考は言葉を封じ込めようとする。
だがしかし、思考がめぐる中、ずきりと頭が痛み一人の女性の声が脳裏に響いた。
(どうか、あの子の事を思い出してあげて)
どこの誰かもわからない声。でも、どこか懐かしいような、そんな声。
その声を聞いた瞬間、いなりに聞かないといけない。そう腹を括る事が出来た。
「いなり、お前とは昔会ったことがあるのか?」
俺はようやく言いたかった言葉を口にした。
しかし、いなりの反応は俺の予想していなかった反応だった。
「え? どういうことじゃ?」
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